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バターロール

霜の声が滲みはじめた


行きつけのベンチ
入口入って左奥
ブロンズ像の前

バターロールふたつに
コーヒー牛乳
至福のとき

天敵の鳩は
相変わらず二羽
プラスチックの音を合図に
同時に攻め入ってくる

片足で地団駄を踏んで
応じるものの
しぶとい

しぶといこの子たちに
バターロールを渡したら

代わりに想いを
届けてくれるだろうか

隔週の土曜日
朝8前

食べかけの
バターロールを一欠片ずつ

宛先は
二つ隣のベンチに座る
読書の君(きみ)まで

意識を向けてくる
鳩へバターロールを
ちぎってみれば

こころなしか嬉しそうに
見えた

大き過ぎますと一言

知らない声

知りたかった声に
焦がれた声

できるだけ細かく
ぱらぱらと
喉に詰まることが
ないように

そう覗き込まれるまで
顔を向けられるまで

思考と感覚が絡まるように
思えて

反芻(はんすう)思考が
しだいに沈黙に変わった時を
みはからい
そそくさと身支度を済ませ

乱雑な鞄を胸に
挨拶をひとつ投げかける

未開封のコーヒー牛乳と
読みかけの本が
遠い目をしていることも
気が付かないまま

意味もなく
公園の出口まで

鼓動を揺らした

冬が
あつい。




end


✍️あとがき

今日も出逢ってくださり、ありがとうございます。

だんだんと冷え込みが増してきていると思いますので
休めます際は、暖かくリラックスができますように。

お付き合いくださいまして、感謝です。
それでは…。
                     kabocya


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