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「化粧」

そういえば
もう随分と歳を重ねてきたけど
人生の中で
ちゃんとお化粧していた期間は
どれくらいあったんだろうと
ふと考える

元々、お化粧が苦手で下手だというのは
やっぱりイイワケなんだろうなぁ
ズボラ……と言われたらそれまでで
せっかく女と生まれたのに、と
亡き母を嘆かせていたことを
ほろ苦く思い出す

今では、よほどの時でない限り
化粧水に乳液だけで完全スッピン
せめて口紅だけでもつけなさい!と
母の声が聴こえてくるようだけど
おかあさん、ごめん
リップクリームは、たまに塗ってるから

スッピンの鏡の中のわたしは
疎らな短い睫毛で
シミそばかすもバッチリ出てる
自分は見慣れてるから平気だけど
(ああ、美の向上心は何処へ)
そりゃ気にならないといえば嘘になる

けど、反対に考えれば
化粧は最後の変身の隠し球ではあるまいか
そうだよ、これは見果てぬ夢
化粧をすればきっと
美女とまではいかなくても
もう少しパッとするに違いない(と思う)

化粧は憧れ
化粧は夢

わたしの中のオンナノコだから
最後まで、大事に仕舞っておこう


そうだ

その時には薔薇色の口紅をつけよう
あの時の母のように

そんなことを思うのよ


【詩集】「黄昏月幻想」つきの より

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