見出し画像

「霧雨の朝」

顔も名前も知らないひとに
片想いして失恋する夢をみて
目を覚ました朝

煙った景色に
窓を開けて手を差し出すと
霧のような雨が降っておりました

雨はしっとりとわたしの手を濡らし
それは音もなく軽やかなのに
不思議に寂しさが沁みるのでした


顔も名前も知らないひとに
片想いして失恋する夢をみて
目を覚ました朝

感情だけがこの雨のように
見えないのにいつまでも残って
わたしは開けた窓を閉められなくて

ああ、風のせいか降り込んだ霧雨が
髪を濡らし肌を濡らし
静かに沁み入るばかりで

なかなかわたしを寂しさから解放してくれません


【詩集】「黄昏月幻想」つきの より

言の葉を受け取ってくださってありがとうございます。 いただいたサポートは創作の糧とする為の書籍購入に使わせていただきたいと思います。 心からの感謝と共に……。☪︎Tukino