「霧雨の朝」
顔も名前も知らないひとに
片想いして失恋する夢をみて
目を覚ました朝
煙った景色に
窓を開けて手を差し出すと
霧のような雨が降っておりました
雨はしっとりとわたしの手を濡らし
それは音もなく軽やかなのに
不思議に寂しさが沁みるのでした
顔も名前も知らないひとに
片想いして失恋する夢をみて
目を覚ました朝
感情だけがこの雨のように
見えないのにいつまでも残って
わたしは開けた窓を閉められなくて
ああ、風のせいか降り込んだ霧雨が
髪を濡らし肌を濡らし
静かに沁み入るばかりで
なかなかわたしを寂しさから解放してくれません
【詩集】「黄昏月幻想」つきの より
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