たこい⭐︎きよし

本を読む。ビールを造る。

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マガジン

  • 科学者になろう

    なりゆきで博士(農学)まで取得した経験から、科学/研究についてブックガイドを切り口にいろいろ紹介。あなたも科学者になれる、かもしれない?

  • ブックスタンドは引かれ合う

    「スタンド使いが引かれ合う」かの如く、耳にした時事ネタから引かれ合うように連想した本のことをランダムに綴るエッセイ。次は何の話題か、自分でもわかりません(笑)。

最近の記事

新世紀のビールの教科書

 日本ではアルコールが1%を超える酒類を製造するには免許が必要だが、欧米では自家消費程度なら認められている。ということで、いわゆるホームブルーイングはけっこう盛んのようだ。  英国でホームブルーイングをしていてコンテストで入賞歴もあるという著者の書かれたこちらの本などは、使う設備から工程ごとの注意点などをきめ細かく図解してくれていて、ちょっとやってみたくなる(やっちゃいけません)。  ただし、それなりのスペースや設備は必要なので、酒税法で禁止されていなくても日本の一般的な家

    • 【8】研究をしよう

       さて、ここまで学会発表、や論文投稿にまつわる話をいくつかしてきたけど、当然ながら、肝心の「研究」がなくてはどちらもすることができない。  それでは、そもそも、科学者はなぜ「研究」なんてことをしているのか。 (もちろん、科学だけが「研究」ではないが、ここは話の流れということで、ひとつ)  人によって答えはたくさんあるとは思うが、いきなり、「人類の英知の殻を広げたい」などと高尚かつ崇高な使命感に燃えて「研究」を始める人はいないだろう。(そういう方もいるかもしれないが…)

      • 【7】(高校生でも)学会へ行こう

         ……と、これは岩波ジュニア新書の一冊。  編者を含む11人の女流研究者が、自分が研究者になったきっかけや研究内容、その面白さについて語る。  読んでみると、執筆者としては最大限くだけた文章をこころがけているんだろうなあ、とは思いつつも、脚注などなしにさらっと出てくる専門用語もあったりして、もしかすると本来のターゲットの中高生が読むとそういうところで「??」と引っかかってしまうかもしれない。  とはいえ、いろいろな進路があり得ることを中高生に語りかける点では、こういう本は

        • 【6】日本語と英語のあいだ

           さて、「研究」をしていくと、いつかは必要になるのが「英語」だ。  まず、自分の分野の「人類の英知の殻」までたどり着くには、「論文」を読まなくてはならない。  そして、その殻をちょっとだけ押し出すためには、自分の「研究」を、世界中の人が読めるように「論文」にする。  そのためには多くの人に通用する公用語で読んだり書いたりすることになる。  非ネイティブの使う英語を「イングリッシュ」ならぬ「グロービッシュ」なんて呼ぶこともあったようだが、世界の公用語といえば、要は「英語」

        新世紀のビールの教科書

        マガジン

        • 科学者になろう
          8本
        • ブックスタンドは引かれ合う
          5本

        記事

          【5】論文を書こう

           さて、「学会発表」で自分の研究をアピールしたら、次のステップは「論文投稿」だ。  前回、「学会発表」は会員になれば誰でもできる、と書いたが、多くの場合、ここまでは発表内容の是非を問うような審査のプロセスがない(なので、中には怪しげな発表もある(笑))。  そして、発表は基本、その場限りのものなので、後にも残らない。  後に残らないと、せっかくの発見も、「人類の英知の殻」を広げることができない。  そこで必要になるのが「論文」、いわゆる「査読つきの論文」「原著論文」という

          【5】論文を書こう

          幻の(だった)マンガ家・岩泉舞

           1989年、就職してからしばらく、週刊少年ジャンプを買っていた。  お目当てだった『ジョジョの奇妙な冒険』は第三部が始まったくらい。『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』などの人気も高く、発行部数が600万部とかいっていたあたりの時期だ。  年が明けて1990年、そのジャンプ本誌に絵柄がちょっと高橋留美子っぽい、印象的な短編が掲載された。岩泉舞「たとえ火の中…」だ。  鎌倉時代を背景に、高貴な生まれだったが政争を避けて尼僧になっていたヒロインと、超常の力を持つ鬼の生まれであること

          幻の(だった)マンガ家・岩泉舞

          幻のマンガ家・橋本みつる

           このところ場外乱闘(?)の続くマンガ原作のドラマ化に絡んで、とんでもない爆弾(?)が炸裂した。  コバルト文庫時代から書き継がれてきた若木未生『グラスハート』、まさかの実写ドラマ化!?  ドラマでは大学生になるらしい、ヒロインの西条朱音(高校生)が、突然天才ミュージシャンに見込まれてドラマーになるところから始まる物語。  音の聴こえない小説で、「音楽」をどう感じさせるのか?  そういう普遍的な疑問へのひとつの答えなんじゃないか、と思うくらい、登場するバンドの「音楽」が脳

          幻のマンガ家・橋本みつる

          【4】学会へ行こう

           「学会」といえば、「追放」とインプットされている人は多いと思うが、現実の学会はあまり会員を追放するところではない。  一般的には、入会申し込みをして、年会費を支払えば会員になることができ、会費を滞納しても、督促状は来るが、すぐに除籍になることはない。  とは言ったものの、国内学会でも年間一万円ほどの年会費を支払ってまで学会に入る目的は、いったいなんだろう?  その一番の目的は「学会発表」をすることだ。  それなりの規模の学会なら、以下の活動をしている。 ◆ 年次大会の

          【4】学会へ行こう

          人生のメビウスはめぐる(ビクトル・エリセとともに)

           2024年2月9日から、ビクトル・エリセ監督の31年ぶりの新作長編作品『瞳を閉じて』の順次公開がスタートした。  ミニシアター全盛期に『ミツバチのささやき』『エル・スール』を大学時代に仙台のミニシアターで観て以来、運悪く観る機会を逃した『3.11 A Sense of Home Films 』の中の短編以外は、全部観ている。  『マルメロの陽光』は社会人になってから名古屋のミニシアターまで静岡からはるばる観に行った。劇場で観れなかったのは上記の他、やはり短編で参加している

          人生のメビウスはめぐる(ビクトル・エリセとともに)

          末の松山 波越さじとは

           大河ドラマ『光る君へ』第6話「二人の才女」で、ついに(?)清少納言とその父親、清原元輔が登場した。  本編後のガイドでは、その親子のゆかりの地として山口県防府市が紹介されていた。  さて、こうの史代『この世界の片隅に』をアニメ映画化した片渕須直監督が現在『枕草子』を題材にした新作『つるばみ色のなぎ子たち』の製作を進めている。  この「なぎ子」は清少納言。  片渕監督はかつてその諾子を自作『マイマイ新子と千年の魔法』に登場させていた。  その原作は高樹のぶ子『マイマイ新子

          末の松山 波越さじとは

          【3】博士の価値は

           博士号に興味がない人でも「博士号は日本では足の裏の米粒。とらないと気持ち悪いけど、とっても食えない」という決まり文句(?)は聞いたことがあるかもしれない。  それじゃあ、その「博士号」ってなんだろう?  ……という問いに対しては、たぶん答えは一つではない。  即物的には、「大学院の博士課程に進学して、然るべく論文を書いて、然るべき審査を受けて、学位(博士号)を授与された人」が、「博士」を称することができる。  それじゃあ、博士号を取得することには、どんな意味があるんだ

          【3】博士の価値は

          【2】まさか、ぼくが研究者に!?

           著者が眼科の臨床医から研究を始めた経験を元に書かれた、研究者に必要な実務スキルを体系的にわかりやすく解説したハウツー本。 「データをまとめて学会発表すれば……に行けるよ」という逍遥派(©️泰平ヨン)っぽい上司に乗せられ、フィールドワークのデータをまとめてみたら、意外な事実が発見できたことに面白みを感じて研究に目覚める。 → さらに「せっかくデータそろったんだから、論文(英語)書こうよ」とそそのかす上司に、どうせ上司が書いてくれるんだろうと箇条書きレベルで提出したら却

          【2】まさか、ぼくが研究者に!?

          【1】最短ルートでノーベル賞を取る方法!?

           みなさんはDNAというと何を連想するだろうか?  最近は遺伝子診断や犯罪捜査などでも普通に「遺伝子解析」が使われているし、食品・飲料メーカーなどの品質管理部門では、業務で遺伝子解析や遺伝子を活用した分析などをされている方もおられるだろう。  さて、その遺伝子について、高校あたりの生物の授業を思い出せば、「ワトソン、クリックの二重らせん」として覚えた方も多いのではなかろうか。その二重らせんの発見の過程を、ワトソンさんご本人が書かれた本がある。タイトルはそのものずばり『二

          【1】最短ルートでノーベル賞を取る方法!?

          クローズアップ国谷/国谷裕子『キャスターという仕事』

           もともと、民放を観る習慣のない人間だったので、独身時代は部屋に帰ってテレビをつけても、チャンネルは寝るまでほぼNHK総合、という生活だった。  結婚してからも、19時からのニュースはNHK総合、流れで19:30からの『クローズアップ現代』を観る、という生活が続いていた。  そのキャスターが国谷裕子さんだった。流して観ている回もあったが、そのうち、ニュースより『クローズアップ現代』を観るのが楽しみになっている自分に気づいた。  ある時、そんな『クローズアップ現代』が番組

          クローズアップ国谷/国谷裕子『キャスターという仕事』

          結果的父娘合作エッセイ/吉本隆明『開店。休業』

           吉本隆明生前最後のdancyu連載ミニコラム…というだけなら、内容的に単なるお年寄りの想い出話(しかも間違い、勘違い多し)で、おそらくなんてことないエッセイ集になっていた……かもしれない。  そうしたところに、長女にしてマンガ家のハルノ宵子が全エッセイ(1回4ページ)に見開き2ページの注釈コラムを入れることで、本編エッセイにおいて吉本隆明ご本人は意識していないところで「老い」が浮き彫りになるとともに、「間違い」「勘違い」が正される。このあたりは一種の掛け合い漫才的ですらあ

          結果的父娘合作エッセイ/吉本隆明『開店。休業』