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35/タイムマシンはキッチュの結晶

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【記事のポイント】時間を移動するタイムマシンは、『お手軽な時間旅行』という意味で、極めてキッチュなアイデアと言えます。そして、1975年に登場した家庭用ビデオは、タイムマシン的でもありました。


第4章/4. 空間の確定と時間の移動


イギリスの作家H・G・ウェルズが小説『タイムマシン』を発表したのは1895年でした。
世紀の変わり目を前にして書かれた、まさしく時間を突き抜ける物語りです。

これがアメリカで映画化されたのは、1959年のこと。
この年にはハワイが最後の州として登録され、アメリカ合衆国はひとまずその領土である50州を完成させます。
現実空間の確定と時間を移動するという夢が、こもごも語られた興味深い年でした。


ハワイとタイムマシンには直接的な関係は何もありません。
しかし、偶然の神は両者の間に奇妙な因果をつむぎます。

アメリカがハワイに臨時政府を樹立したのが1893年。
その2年後の1895年に、ハワイ王朝最後の女王となるリリウォカラーニが幽閉され、廃位するのです。
ハワイ王朝の悲劇的な滅亡であり、アメリカへの実質的な主権移動がそこで起こりました。

ウェルズの『タイムマシン』が発表されたのは、奇しくもこの年。
つまり、タイムマシンの小説発表と同時にハワイはアメリカに組み込まれ、映画化のタイミングで州に昇格したわけです。

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