【企業分析】 株式会社ティア
名古屋で創業し関西・関東に展開する葬儀社の株式会社ティアを企業分析し、自身なりのアイデアを発散する。(2023/10/23時点)
※ 本投稿は、BBT大学大学院で学んだRTOCSを修了後も継続するために、同メソッドを自身なりにアレンジして作成しています。あくまでも個人的な分析と見解です。
https://www.ohmae.ac.jp/mbaswitch/_digest_rtocs1/
ファクト
ファクト情報を3C(自社・競合・市場)の観点で情報分析してみる。
自社
代表取締役社長
冨安 徳久(63歳)
学生時代に葬儀のアルバイトを経験し、葬儀会社に就職した後、自社を設立。社内外で年間150本を超える講演活動を積極的に行う。
自身の公式サイトを運営している。
https://tomiyasu.website/所在地
愛知県名古屋市北区黒川本通三丁目35番地1創立
1997年7月従業員数
608人(2023年3月末現在)資本金
18億92百万円(2023年3月末現在)売上高
2022年9月期連結
売上高:132億8,393万円
経常利益:10億4,825万円事業
・葬儀施行全般や各種法要の請負
・葬儀施行後の遺族の相談内容に応じたアフターフォロー
・中部、関東、関西に直営、FCで葬儀会館を運営
・フランチャイズによる葬儀ビジネス参入提案とノウハウ提供
沿革
1997年 株式会社ティア設立
1998年 第1号店 ティア中川オープン
2004年 葬祭フランチャイズ事業開始
2006年 関西第1号店 ティア門真オープン
2006年 名古屋証券取引所セントレックス上場
2012年 関東第1号店 ティア越谷オープン
2018年 直営・フランチャイズ合計 第100号店 葬儀相談サロン駒込オープン
2019年 人財育成専用施設『ティア・ヒューマンリソース・センター』開設
強み
選ばれる7つの理由
・世界でたった一つの葬儀
・安心の東証上場企業
・年間20,000件の葬儀実績
・24時間365日 ティアスタッフが対応
・ご希望の全ての儀式に対応
・メディア実績・活動
・明朗価格と生前見積もり
フランチャイズ制度
加盟金:200万円
出店申込金:300万円
他、教育費等
ロイヤリティ:売上高の3%
葬儀実績
20,262件(FC店舗含む、2021年10月〜2022年9月)
過去5年で約1.4倍
人財育成
社長セミナーを毎月開催
社長セミナーを核とした独自の教育プログラム「ティアアカデミー」
7段階ある独自の検定制度「ティア検定」
専用の研修センター「ティア・ヒューマンリソース・センターTHRC」
葬儀の専門人材「マスターセレモニーディレクター」の育成
会館運営・経営を担うキャリア人財の育成
業績
過去10年、右肩上がり
売上5y CAGR・予想:2.4 %
2020年9月期はコロナ影響と葬儀単価低下により収益が下落
その後、回復
コスト傾向は、減価率を下げ販管費を少しずつ増やしながらも、営業利益を確保している
店舗数
順調に増加
フランチャイズ比率が40%だが、ロイヤリティ収入のみなので売上高は大きくない
ドミナント出店で人員、近隣客の融通を効かして稼働率向上を図る
愛知県が中心
競合
市場の構成
規模の大きな企業は、葬儀市場全体の10%程度
地場の小規模な業界各社が9割を占める市場構成
葬儀業界の売上高ランキング
1位:ベルコ(475億円)
2位:日本セレモニー(342億円)
3位:セレマ(280億円)
4位:燦HD(200億円)
5位:ティア(122億円)
株式会社ベルコ
本社:兵庫県西宮市津門川町1‐1
設立:昭和44年4月3日
事業所:全国286ヶ所
事業免許
冠婚葬祭互助会(経済産業大臣許可第5006号)
事業
互助会、成人式、結婚式、老人ホーム紹介、葬儀、ホテル
互助会
結婚式・お葬式・成人式・法事にベルコ互助会会員のサービスの提供を受けられる
加入口数:約256万口
業績
婚礼組数:4,347組
葬儀件数:35,998件
売上高自社比率:3.89倍株式会社日本セレモニー
本社:下関市王喜本町六丁目4番50号
創立:1972年6月14日
資本金:10,000万円
事業所:西日本を中心に86ヶ所
事業免許
互助会(経済産業大臣許可(互)第6012号)
事業
婚礼、葬儀、成人祝、月掛金一部利用、レストラン、ホテル、保険
ミライエール(互助会)
加入口数:89万口
業績
売上高自社比率:2.80倍株式会社セレマ
本社:京都市中京区西ノ京中御門東町134
資本金 :1億円
従業員 :900余人(関連企業を含む)
事業所 :マリアージュ、シティホール、営業所など100余ヵ所
事業免許
前払式特定取引業/経済産業大臣許可・互第5001号
一般区域貨物自動車運送事業/国土交通大臣認可・大陸6656号
旅行業/一般旅行業・登録601号 国内旅行業・145号
事業
成人式、結婚式、七五三、お葬式
日本で初めての前払式特定取引業
業績
売上高自社比率:2.30倍燦ホールディングス株式会社
東京本社:東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館14F
大阪本社:大阪市北区天神橋4-6-39
設立:1944年(昭和19年)10月2日(創業1932年8月)
資本金:25億6,815万円
従業員数:44名(単体)、670名(連結)(2023年3月末現在)
葬儀専門
自社運営会館:84会館
パーパス:シニア世代とそのご家族の人生によりそい、ささえるライフエンディングパートナー
事業
葬祭サービス、葬祭関連サービス、ライフエンディングサービス
業績
売上高自社比率:1.64倍株式会社広済堂ホールディングス
創業:1949年1月
資本金:1億円
グループ従業員数:1,101人(2023年3月末現在)
サービス
エンディング関連事業(火葬場運営・式場提供、葬儀のプランニング・運営、エンディング関連サービス、税務・不動産・金融サービス)
他に情報ソリューション事業、人材サービス事業を展開
業績
売上高自社比率:2.76倍
時価総額自社比率:8.11倍
市場
葬儀業界全体の傾向
取扱件数は増加しているが、売上高は横ばい
葬儀単価が下落している
死亡人口は2040年まで増加傾向
インターネット経由での集客・紹介を行い、自社で葬儀施行を行わないマッチングサービス企業の参入が全国的に増えているコロナ影響
参列者の絞り込みや火葬のみの葬儀に変更するケースが増えている
返礼品や仏具、料理等の需要も落込んでいる高齢者のおひとりさま世帯の増加
65歳以上のスマホ・タブレット保有割合も増加傾向
「終活」という言葉について知っている人の割合は9割本業界のサービスに対する家計支出は減少
葬儀関連事業の種類
互助会
加盟者が毎月掛け金を支払い、冠婚葬祭の儀式サービスを受けることができる
経済産業省の認可が必要専門葬儀社
葬儀場の管理・運営や、葬儀の運営を行う
公的な認可は不要ネット紹介
葬儀会社や霊園などの紹介・仲介
自らは葬儀の運営や葬儀場の運営は行わない
消費者の葬儀社選択の傾向
葬儀の依頼先
専門葬儀社:79.2%
互助会:10.5%
農協・生協・漁協:6.1%
ネット紹介:0.7%依頼先選択時の参考事項
葬儀社や互助会の会員:38.0%
以前に利用した:24.6%
知人・親戚等の紹介:21.9%
病院の紹介:5.6%
ネット広告:3.2%
TVCM:2.1%
折り込み広告:1.7%
ファクトの整理
3Cの観点で確認したファクト情報を元に、SWOTの観点で整理する。
S(自社の強み)
ドミナント戦略
人財育成に注力
世界でたった一つの葬儀
W(自社の弱み)
会館を保有すると低価格化に対抗できない
互助会の許認可は取っていない
O(市場の機会)
事前に認知される葬儀社が選ばれやすい
葬儀数の増加
市場の機会に関しては、同時に顧客の目的関数も確認しておく。
軸1:馴染みのある葬儀社に頼みたい(会員/リピート/紹介)
軸2:大袈裟ではなく質素な葬儀にしたい(低価格/小規模/コロナ対策)
軸3:しっかりしたところに頼みたい(専門葬儀社/互助会/地元)
T(市場の脅威)
広告を見て葬儀社を決める訳ではない
地場の小規模な葬儀社が市場の約9割を占めている
問題と課題の抽出
これまでの分析から、本質的な問題と、取り組むべき課題を設定する。
本質的問題と課題:低価格化
コロナ影響もあり葬儀が小規模化してきているが、会館を保有し機動力が弱い
→ これまでの大規模葬儀以外にも対応していく必要がある
関連するKBF(Key Buying Factor)とKFS(Key Factor for Success)
KBF:小さな葬儀で十分
KFS:低価格な葬儀プランを提供する
KFSとのギャップ:会館があり低価格な葬儀プランを提供すると収支が合わない
本質的問題と課題:限定されたエリア
愛知県ではドミナント戦略が成功しているが、それ以外の地域で事業が拡大できていない
→ 愛知県以外での成長戦略を立てる必要がある
関連するKBF(Key Buying Factor)とKFS(Key Factor for Success)
KBF:馴染みのある葬儀社に頼みたい
KFS:国内の広い地域で地元に密着した存在である
KFSとのギャップ:愛知県以外で浸透していない
方向性案の検討
整理した本質的問題と課題へ対応するための方向性案を、SWOT分析によるアウトプットから検討する。
「低価格化」への方向性案
案1:人財育成カリキュラムの販売(TxS)
案2:互助会の許認可申請(TxW)
「限定されたエリア」への方向性案
案3:小規模な葬儀社との提携パートナー制度(T xS)
案4:ドミナント戦略を愛知県近隣から広げていく(OxS)
※ 括弧内のSWOT分析の検討軸
OxS(積極化戦略の可能性視点での考案のポイント)
OxW(弱点強化戦略の可能性視点での考案のポイント)
TxS(差別化戦略の可能性視点での考案のポイント)
TxW(防衛策、撤退戦略の可能性視点での考案のポイント)
方向性案の評価
検討した方向性案に対して、次の軸で評価を行い、どの方向性案を採用すべきかを選択する。
評価軸①・・・経済性
評価軸②・・・実現可能性
評価軸③・・・速効性
評価軸④・・・長期的展望
評価軸⑤・・・ユニークネス(独自路線)
案1:人財育成カリキュラムの販売
評価軸①・・・◎ 評価軸②・・・◎ 評価軸③・・・◎ 評価軸④・・・○ 評価軸⑤・・・○
<理由>
汎用化が必要ではあるが、同業他社や異業種への横展開も検討できる
案2:互助会の許認可申請
評価軸①・・・△ 評価軸②・・・△ 評価軸③・・・× 評価軸④・・・◎ 評価軸⑤・・・○
<理由>
審査が非常に厳しい
案3:小規模な葬儀社との提携パートナー制度
評価軸①・・・○ 評価軸②・・・○ 評価軸③・・・○ 評価軸④・・・○ 評価軸⑤・・・◎
<理由>
フランチャイズ制度とは違った形での制度設計を検討する
案4:ドミナント戦略を愛知県近隣から広げていく
評価軸①・・・△ 評価軸②・・・○ 評価軸③・・・× 評価軸④・・・◎ 評価軸⑤・・・◎
<理由>
強力ではあるが時間を要する
自身が経営トップとして実行する最優先の方向性案とその具体策
ここまでの分析結果を踏まえて、仮に自身が経営トップだった場合に取るべき方向性案とその具体策は次の通り。
案3:小規模な葬儀社との提携パートナー制度
市場の9割を占める小規模な葬儀社との提携パートナー制度を設計する。
自社からは人財育成カリキュラムを提供し、小規模な葬儀社でもしっかりとした葬儀デザインができるように協力する。設備に関しても葬儀会館を保有している実績を元に、小規模葬儀社にアドバイスし、改修が必要な場合には改修に掛かる投資を肩代わりしてあげる。
その見返りとして葬儀1件辺りのマージンを回収することで、新たな収益パターンを確立すると共に、自社投資だけではなく規模を拡大していく。
参照情報と出典
(閲覧日:2023/10/23)
自社企業サイト
https://www.tear.co.jp/
パフェットコード(自社)
https://www.buffett-code.com/company/2485/financial
葬儀業界の動向や現状、ランキングなどを解説(業界動向サーチ)
https://gyokai-search.com/3-sougi.html
株式会社ベルコ
https://www.bellco.co.jp/
株式会社日本セレモニー
https://www.nihon-ceremony.jp/
株式会社セレマ
https://cerema.co.jp/
株式会社広済堂ホールディングス
https://www.kosaido.co.jp/
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