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新卒採用/年功序列/終身雇用とはいったい何なのか。

2020年スタートの年、だったはずがだいぶ予定がくるってすでに3/4が終わり残すところ後3か月になりました。すべてコロナのせい。
皆様いかがお過ごしですか。
この数か月、事業と人事制度の関係をどのように捉え、制度化するべきかを体系的にまとめようとしてまいりましたが、だいぶ迷宮入りしておりましたしています。
とりあえず明文化することで、思考の棚卸とあらさがしをしてみようかなと思いますよ。

長くなりそうなよかんですが、お付き合いください。

はじめに

私が人事という領域に足を踏み入れた時に、疑問としてあった以下2点について今回はまとめていきます。

「新卒採用とは何か」
「年功序列/終身雇用を導入した背景にある企業メリットとは何か」

上記疑問のキーワード「新卒採用」「年功序列/終身雇用」に関しては、近年では「問題であるから是正しよう」という文脈で語られます。
特に新興企業、IT業界では猶更風当たりが強いように感じます。
とはいえ、日本の戦後七十余年の中で営利団体である会社がこのような制度を何かしらの理由で導入してきたのもまた真実なのです。
これにはどのような理由があり、またどんな課題を解決するためだったのかを考察することで、事業成長に寄与する人事制度の構築を実現していくことができるのではないでしょうか。

とはいえ、私はその時代を生きてきたわけではなく書籍や文献、過去の数値を頼りに考察するしかないのだが、私自身の頭の整理を踏まえてつらつらと記載していくので、「そんな考え方もあるんだな」くらいの感覚で読んでいただければ幸いです。

新卒採用とは何か

結論、新卒採用とは企業が希少な幹部候補学生を青田買いする仕組みとして出来たが、大学を出ることが一般化しどの会社でも大卒を採用できるようになってしまった為に、学生も企業も目的を忘れその使い方がわからなくなってしまった仕組み。

とまあ、結局そういうことなんですけど、回りくどく整理していきますね。
日本において、大学進学率は1954年で7.8%と2016年の52%と比較しても約7分の1という低さでした。(出展)
戦後間もないこの時代に大学に進学できる人材というと、いわゆるエリートであり、知的レベルはもちろんのこと、金銭的にも、家系的にも申し分無い人材が潤度高く在籍しており、企業としては喉から手が出るほど欲しい人材だったと言えます。
国内外の幅広い人脈や知識を保有した有望株を幹部候補生として迎え入れ、長期的に育成していくことは、企業にとってとても重要な人材獲得であったといえます。

この様な優秀な人材を獲得する為に企業は様々な手をうちます。
特にバブル全盛期には新卒採用において湯水のごとく大金が使われます。研修旅行で海外に行ったり、重要顧客並の接待など、学生に入社してもらう為にはなんでもありだったと。(ある意味うらやましい)
そうしているうちに、小さなパイの取り合いである新卒採用において、大手企業の間(経団連)で無駄な争いを無くしていく為に一定の規律が作られていきます。
それが解禁日として設定されているあれです。
一斉にスタートし、学生、企業ともに短期戦にすることで、双方ともに無駄なコストをかけずに優秀な人材を獲得するということを可能にしていこうという仕組みでした。

経団連に加盟している企業が日本の大手の多数派だった頃は、それでうまくいっていました。
学生もその大手企業に入ることが正であり、大卒エリートの証であるという暗黙の了解が日本中にありました。
しかしながら、ITベンチャーや外資系への就職が当たり前で、むしろ重厚長大の大手企業よりも学生からの人気が高まって来ると同時に、大学進学率も50%を超え2人に1人が大卒という時代に2000年代になると突入します。
こうなると、学生側としては、そこら中にライバルがいるにもかかわらずおとなしく新卒採用の解禁日を守る理由はなく、方々に情報アンテナを張っている優秀な学生こそ早くから多方面に就職に向けた行動をとるようになります。

企業側としては誰でも大学に入れる現状を鑑みて、「大卒である」という1点だけで採用特別枠をつくる理由がどんどん薄れていきました。
結果として人件費が安く体力があり、読み書きそろばんが最低限できる人材を獲得したいという一部の企業が、この新卒採用を悪用し、ブラック企業と呼ばれる事象が発生してきます。

では、大手企業は新卒採用の目的を果たし、新卒採用を今もまだ良い仕組みとして成立させているのか。当然、この仕組みにも限界がきています。
そもそも、幹部候補生としての新卒採用ということで始まったこの仕組み。高度経済成長期では事業も組織も年々大きくなっていきます。必然的に幹部ポストも増えていきます。
例えば、今まで営業は2チーム体制で良かったものが、販路拡大により3チーム体制になる、そうすると課長はもう一人必要、だから潤沢な幹部候補生たちの中から順番に課長を選んでいく。これでよかったのです。
しかし、事業拡大はストップ、ないし縮小していくとなると、潤沢に採用していた幹部候補生はどうなるか。簡単な話ですが、幹部になれないのでどこかしらに配属するしかありません。

ここで問題になるのが、部下無し管理職。
事業と組織の拡大を前提に、幹部候補生を数多く採用していくこの仕組みは、バブル崩壊や日本の経済成長率の停滞の為に、あっけなく崩壊し問題を生み出す仕組みとなってしまったというのが現状といえるでしょう。

さて、新卒採用のできた背景とその結果見てきましたが、ここで新たな疑問が生じます。
「とはいえ管理職、幹部社員って必要だよね?これからどうするの?」
人事界隈で仕事をしている人がそこら中で耳にするサクセッションプラン、タレントマネジメント、この辺のキーワードの抜本的解決の為には、このような現状を前提とした賃金、評価、配置の仕組みの構築と、その入り口となる新卒採用の見直しが必要となることがなんとなくみえてきました。
この辺はまた、まとめるのでお楽しみに。


年功序列/終身雇用を導入した背景にある事業メリットとは何か

結論、心理的安全性の重要性をいち早く理解し、雇用の維持による生活の保障、生活水準向上の保障、社会的地位の保障を制度として実装することで、社員が不安なく仕事に向き合い、個人、組織としての成果を最大化することを目的として導入された制度。

心理的安全性と、保証しているいくつかの項目がなぜ有効だったのかということを分けて説明する必要があります。
まず、心理的安全性について、皆さんはGoogleがは提言した文面をすべて読んでいらっしゃいますでしょうか。
心理的安全性の定義とはどのようなものか以下を見てみましょう。

心理的安全性: 心理的安全性とは、対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり、「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味します。心理的安全性の高いチームのメンバーは、他のメンバーに対してリスクを取ることに不安を感じていません。自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。(出展)

これを読むと、チーム内の関係性を良好にすれば良いのか!となりそうです。
しかし、仲が良くなるということや、自己開示を受け入れてくれる仲間がいることだけでは心理的安全性の高い組織を作ることができません。
「新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります。」とあるように、馬鹿にしないという関係性の部分と同時に、罰せられないという仕組み的な要素も入っています。
日本より解雇や降給が容易なアメリカにおいて、この罰するということは解雇を含む大きな意味を持ちます。
リスクをとっても馬鹿にされないとてもいいチームを作ったとしても、失敗したら職を失うかもしれない、場合によっては明日仕事があるかわからないという状況は、心理的安全性を確保した良い組織とは言えないということです。

さて、終身雇用制度を見てみましょう。労基法で定められた不当解雇の禁止も相まって、罰せられないこの仕組みはとても大きな意味を持ちました。
戦争によって明日どうなるかわからないという状況から、一つの企業という組織が生涯面倒を見るという約束を国を上げてしてくれた。これほど大きな心理的安全性の確保はありません。
1961年に歌われた「サラリーマンとは気楽な稼業ときたもんだ」で始まるドント節に代表されるように、日本において戦争から解放され仕事にも生活にも苦労しない幸せな時代が来たことはとても大きな安心感とともに日本のサラリーマンという職業を強く大きな物へと押し上げました。
これ最大限に活用し、企業は社員をモチベートし、事業拡大を推し進めます。
そのうえで、製造業を中心として拡大した日本は、職人作業は年を重ねるごとに向上するという、今までの暗黙的常識から、年齢と給与を比例させ、少なくとも課長までは自動昇進という年功序列の人事制度を確率していったのです。

とはいえ、ただ生活の保証をするだけでは感覚が麻痺して「もっともっと」と欲深くなっていくのが人の性。冒頭に記載したその他の保障項目が必要となります。
心理学の世界では多くの異論もあるマズローの5段階欲求ですが、今回は簡単に説明するためにこれを用います。
マズローの5段階欲求は生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現欲求という5段階で形成されています。
まず、雇用の維持による生活の保障によって生理的、安全欲求の2つを担保します。

そのうえで年功での賃金アップによる生活水準向上の保障によって社会的欲求を、事業の拡大とともに皆に(仮に部下がいなくても)課長という肩書をつけることで社会的地位(役職)の保障によって承認欲求と自己実現欲求を満たしていくのです。
課長が自己実現?と思うかもしれませんが、大きな企業で肩書をもらうということは、新卒採用で記載した通り、大卒の一部社員にしか与えられ無かったことで、しっかりと夢として語られるポストであったと言えます。

このように、社員の心理的安全性の確保と、その結果としての会社への従順と仕事に邁進してもらう環境を作ることが、戦後復興と敗戦国から経済大国への転換を急いだ高度経済成長期の日本にとってよくできた仕組みでした。

ご存じの通り、トヨタも経団連も「終身雇用無理」宣言をし、メガベンチャーはそもそもそんなこと想定にいれていない現在の日本においては、行く先の不透明感、また複数回の転職を繰り返し、キャリアの軸を確率できず伸び悩む人が多く見受けられます。
安心して仕事に邁進できる環境、長い目で会社と共に成長しようと思える組織と仕組みを、終身雇用/年功序列という選択肢だけではない仕組みでどのように作っていくのかはまた別の機会に。


先人達の知恵を知らずして今は語れない

30年-50年後を想定して制度を作れば年功序列はできなかっただろうし、とは言え30年後を想定できるかといえば、来年のことすら正確に当てられないからなんとも言えないというのが正直なところ。
拡大を前提とした制度は確実に破綻する時が来るというのは過去から学べるし、新たな企業の形かくあるべしを見出す時には、今ある制度を全否定ではなく、なぜそうなったのかを理解したうえで、それを改善していくというのが最も良いのだろうと思います。

そして、私たちはその過去の遺産をここ20年少しばかり無碍にしてしまったかもしれない。
良きものも捨てて、否定だけで突っ走った結果、荒れ果てた荒野しかない場所にたどり着いた人を何人か見てきました。

改めて、先人達は賢かった。
そして、賢い人たちが必死で築き上げたものが、今の時代に合わなくなったのならば、なぜ合わないのかを紐解いた上で、新たな施策につなげていく事が望ましいと言えそうです。

次は職能等級制度と、目標管理制度あたりを整理してみたいと思いますよ。

お付き合いいただきありがとうございました。

↓参考文献抜粋↓

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