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深夜特急を読んで 【旅ってやっぱり必要だ - 農家の読書日記】

こんにちは! 北海道北斗市でブルーベリーとカシスを栽培している道産子カナダ人農家のJustinです。当ブログへアクセスしてくださりありがとうございます。

ここ最近、読書への情熱が再燃しています。今回は、沢木耕太郎著「深夜特急」を改めて読んで感じたことついて。

読書は「心の旅行」

農業という仕事柄、僕は常に自分の農地を基軸として生活しているので、僕にとっての世界の中心は紛れもなく自分の畑です。

シミュレーションゲームで例えるならばまさにスタート時に決める拠点そのもので、ここを軸に、周囲の世界と繋がったり、新しいテリトリーを開拓していってる感覚。

大多数の人間が自分の家を拠点にして活動しているわけですから、そんなの当たり前っちゃ当たり前の話ですが、農地の場合は、居住地と違って絶対に引っ越しできないわけで(例えば、今の畑に植え付けてある果樹を全部引っこ抜いて別の畑に植え替えることはできっこない)、そういった意味で、なかなか身軽に遠くの地へ行けないんですよね。

だけど、人間って大体は、同じ場所・環境・ルーティン・思考パターンに留まり続けると、気の流れが淀んできて、心の軽やかさみたいなものが失われていってしまうものじゃないかなと。


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僕ももちろんご多分に漏れず同じことを繰り返していれば気が淀むし、些細なことで落ち込んでしまうメンタル弱者なので(笑 移動に自由が効きにくい分、定期的に自分とは異なるタイプの人間の挙動や思考に触れるのは非常に重要な作業。それをするのに一番低コストで高効率なのは、昔も今も読書ってわけなんです。


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僕は北海道(北国)で一つところに留まりモノづくりをしている農家なので、真逆のタイプはさしずめ暖かい場所(南国)を自由きままに放浪しているバックパッカーといったところでしょうか。

そんなわけで、20歳くらいのときに初めて読んだバックパッカーのバイブル「深夜特急1(香港・マカオ編」を、30代半ばを迎えた今、改めて読んでみました。

深夜特急のあらすじ

読んだことがない方のためにざっくばらんにあらすじを紹介すると、

日本社会になかなか馴染めない若い男が、旅に出たいという猛烈な衝動に駆られ、アジア大陸から陸路づたいにロンドンを目指すという無謀な計画を立てる

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インドまで来たは良いもののそこで全てがどうでもよくなり、モラトリアムにまみれた廃人になりかけるも、ある日突然我に帰り、一路香港へ向かう

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香港の雑多な繁華街やネオンに代表されるお祭り騒ぎみたいな日常を目の当たりにして圧倒され感動するも、しばらくブラブラしてたら飽きてきたので何となくマカオに向かう

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何気なく入った賭博場で旅費の一部を賭けてみるも惨敗し、悔しくて負けを取り返そうとしているうちにさらに負けが重なり、一時は旅費の全てを失う

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一旦冷静になって、ディーラーの動きを観察しながら賭博の攻略法を模索。自らが立てた仮説を実戦のなかで検証していくうちにだんだんと勝てるようになり、最終的には土壇場をものにして失った旅費を補填することに成功

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これ以上深みにハマるとギャンブル中毒になって身を持ち崩すハメになると自身を冷静に見つめ直し、ひっそりとマカオを後にする

てな感じです。

キーポイントは「形骸化したルーティンからの脱出」

個人的にこの本のキーポイントはふたつあると思っていて、ひとつめが、序盤のインドでのモラトリアムな日常から脱出する場面。ふたつめが、終盤のギャンブル中毒に陥りそうな自分を冷静に見つめ直し、マカオを去る場面。


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モラトリアムやギャンブルの深みにはまってしまった著者が、行くところまで行ききった後、ハッと我に返ってその世界からポンと脱出し次の世界へとまた新しい一歩を踏み出す。その軽やかな足取りがひょうきんでもあり、だけどどこか頼もしくもあり、だからこそ羨ましくもあり、20歳の頃に読んだときとはかなり違う印象を抱きました。

「同じ環境に留まり続けることが苦しいなら、とりあえず後先考えずにそこから出ちゃいなよ。思っているよりも全然簡単にできるし、その先には、自分が予想だにしない新しい世界が広がってるよ」

著者の沢木先生は、きっとこんなことを読者に伝えたかったんじゃないかなと勝手に思いました。

農業を始めるまでの、僕の人生のあらすじ


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そして読み進めながら強く感じたのは、これはカナダに留学していた頃の自分そのものだな〜ということ。

深夜特急になぞらえると、僕自身の就農までの人生のあらすじはだいたいこんな感じでしょうか。

勉強も部活も人間関係もダメダメなショボい自分に嫌気がさして、地元(日本)を離れて新天地であるカナダに行き大学に入る(一応国籍はカナダなので、学費が安かったという理由もある)

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全然授業についていけず、次第に生活が苦しくなってきてバイトに明け暮れるようになり、そのうち疲れ果てて突然無気力になり、学校もバイトもやめてただただ家に引きこもる

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しばらくしたらいよいよ資金が尽きてカナダを離れざるを得なくなり、地元にトンボ帰りして今度は実家の部屋に引きこもる

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カナダ時代に培った英語力を活かして在宅でできる翻訳の仕事を始めるもなかなか思うように稼げず、かといってどこかに就職できるようなスペックもコミュ力も持ち合わせていなかったので、苦肉の策として、半ば放棄されていた両親の農地を開墾し直し農業を始める

旅の面白さを忘れないでいたい
 

書いていてあまりのダサさに情けなくなってきますが(T_T) 結果として今は楽しくやれてます。


そりゃ大変なことは度々起こりますが、少なくとも以前のようにひとりぼっちではなく、志を共にしてくれるパートナーと彼女の息子という強い味方ができたし、農園の活動に共感してくれる人たちも少なからず周りにいるので、以前に比べて落ち込む頻度も随分減りました。

人生はなかなか思い通りにいかないものだけど、うまくいかないときこそ成り行き任せで進んでいくと案外全く予想外の場所にたどり着き、なんだかんだでなんとかなって、それなりに楽しく過ごせたりするものなのかもしれません。

特にネガティブ感情が強く変なところでクソ真面目な僕みたいな人種は、若かりし頃の沢木さんくらいのノリで、思い切り肩の力を抜いてユルめに生活していくくらいで、ちょうど良いバランスが取れるんでしょう。

もちろん、旅といえば、思い切り羽を伸ばして異国の地へ行くのが一番の理想ですが、そう頻繁に行けるものでもないため、例えば仕事帰りの家路に着くルートをいつもと違うものにしてみるとか、外食する際にいつもだと絶対に行かなそうな店にあえて行ってみるとか、そんなもんでも充分だと思うんですよね。そんな程度の小さい冒険も、充分旅に含まれると僕は思います。

悩んだり困ったりしている時こそ、一旦目の前の現実から離れて、いつもと違うことをしたり、いつもと違う景色を見たり、いつもと違う味わいや香りを感じ取たりすることで、凝り固まった思考パターンがほぐされ、ポッと良いアイディアや解決策が思い浮かぶもの(当然ですが^^;)


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そんなわけで最近は、畑と自宅を往復するだけではほとんど目にする機会のない海をみんなで見に行ったり、深夜特急のような南国が舞台の本を読んだりするのがマイブーム。海と南国は、北国の田舎で農家をしている人間にはあまり馴染みのないものですから。

それと今の夢は、春・夏・秋は農作業をガッツリやって、冬の間、できれば1ヶ月間くらいは、東南アジアのどこかの国でみんなでのんびり過ごすこと。それが実現できるように、改めて年間のワークフローを見直しているところです。

本書は、ちょっと息抜きをしたい方、身ひとつで見知らぬ土地を旅するスリルを疑似体験したい方、東南アジアのエキゾチックな空気感に触れたい方なんかには特にオススメ。未読の方は是非手に取ってみてください。きっと良いアイディアを思いつく視座を得られるはずです!

最後まで読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m



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