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「パラサイト 半地下の家族」8000字でレビュー【あらすじ・ネタバレあり】

「あんなことしないでさ〜、普通に働きゃいいのにね〜」

そう若い女性の声が聞こえて「日本って素晴らしい国!」と思った。

歌舞伎町の東宝シネマ。上映後にエスカレーターを降りていたときの話である。ちなみに他には「あの地下のおっさん、変な人だったわ。あそこまで変な人いないわ〜。あ、そういえば職場に変な人いてさ〜」という声も。そっちで話題広げるのね。ユニークなトークスキルだわ。

ということで、アカデミーとカンヌのダブル受賞で話題を呼ぶ「パラサイト 半地下の家族」を観てきた。(いまさら)

パラサイトの梗概(がっつりネタバレ。マジで全部書きます)

ちょっとレビュー記事とは思えないほど、ふざけてあらすじ書いてみます。ほんとに全部書くので、未観覧の方は絶対見ないで。

父母兄妹で構成される主人公の一家は「半地下」と呼ばれる世帯で生活している。半地下とは文字通り1/2が地中に埋まっている住まいのこと。窓からは地表と人の歩く姿が見える。

調べると半地下は家賃激安物件らしく、主に韓国の低所得層が暮らしている。主人公一家もその通り。家族で宅配ピザの箱を折る内職で生計を立てていた。

そんなとき、兄(浪人生)の友人(大学生)が「水石」というもはや岩を土産に持ってくる。一家は「あざっす。マジこの石しぶいね」とありがたく受け取る。しかも友人、兄に「クソ金持ちのカテキョやんね? 俺、留学すっから韓国空けるんだわ」と声をかける。兄「なんで俺www 学生に頼めやww」と返す。友人は「いや高二の教え子がかわいくてさ、大学入ったら付き合いたいんよ。学科の友だちチャラいから不安でw」と。「あ〜、そういうことねw おけ」と兄。妹にネカフェで大学の入学証を偽造してもらい、派遣先へ。

いざ訪問。デヴィレベルの豪邸で半ばひく。インターホン押すと家政婦登場。「奥さま庭で寝てっから呼んでくるわ」つって中に通される。もともと有名建築家が作った家らしい。室内も5LLLLLLLDDDDDDKKKみたいなサイズ感で、完全に借りてきた猫状態の兄。そこに奥様登場。「前任が超優秀だったのね。娘の成績伸びてねーけどww だから初回同席して貴様のレベル見るわ」。で、授業。

娘、おつむ弱いらしくペンが止まる。それ見て、兄が急に手を取って脈測りだす。「脈拍やばww 受験はメンタルだからww 一問くらい気にすんなしww」つって、トリッキーな授業かます。するとなんと教え子が兄に惚れだす。度を越えたウブ。留学先で友だち涙目展開。ちなみにこの友人はもう出てこない。

授業後、奥さまは兄に大金渡しながら「てめえ期待以上だったわ。次回も頼む」つってたら、小さい子どもがインディアンの恰好して「ッスェーイww」つって兄に弓矢放ってくる。奥さま「すまんww 最近ボーイスカウトでインディアンにはまってて。あ、この子マジで絵の才能あるんだわ。ガチ天才ジーニアス」とバカ親っぷり。「才能伸ばしたいんだけど、家庭教師みんな辞めちゃうんよ。天才過ぎてごめんwww」と会田誠ばりの語彙で攻める。兄「我が妹紹介チャンスじゃね?」とピーンとくる。「あ、そういえば知り合いに絵の先生がいるんだけど紹介しよか?」。奥さま「まじで?会わせて」つって、妹が翌日豪邸へ

人気美術教師のフリをした妹が「はい。問題児どちら? うわ、やば。何このカオス画。奥さま、コレおたくのお子さん病んでるわ。美術心理学的に間違いないわ」と言ってのける。奥さま「まっまままっままままままっまじすか。やばばばばやばばやばば。かねかねかねかかか金なら払うから週4で来て」と焦っているとIT社長の旦那がドライバーと帰宅。会釈。ドライバーに「遅いし、車で先生送ってあげて~」と言いつける。

ドライバーと妹は旦那のベンツで駅まで帰宅。妹「あれ、これ親父紹介チャンスじゃね?」とピーンとくる。その場でパンツを脱いで後部座席のシートの下に隠す。

翌日、旦那さまベンツでパンツ発見。「ドライバー、こいつマジか。俺のベンツでカーセックスしてやがんな。おい家内どうなってんねん家内」と奥さまにキレる。どうも奥さまが外注選んでるらしい。「しかもコレ、相手の女パンツ忘れるってコレ……完全にコカインやってんじゃん!ジャニス・ジョプリンじゃん!ベンツだけに!」とドライバーをクビに。奥さま妹に「ドライバーになんかされんかった?あいつジャニスジョプリンとカーセックスかます、奇人やったんよ」と。妹「ドライバークビになったん? じゃあいい人材知ってるけど紹介しよか?」と父を紹介する。

父、初出勤。運転めちゃ優しくて、スコア100点。旦那さま的に大満足。これで家族のうち3人がパラサイトする。ほんで最後の1人、母を家政婦にできないか、作戦会議。妹いわく「あの家政婦、前の建築家時代から家におるし厄介だわ~」と愚痴る。すると兄、家庭教師中に娘とキスしつつ「家政婦は桃アレルギー。桃の毛を吸ったら発作起きる」という情報を聞き出す。

翌日から作戦実行。妹、市場から桃万引きして毛を剃って小瓶に詰めて兄に渡す。兄、家政婦とすれ違うときに巻き散らかす。家政婦、発作。翌日に病院に。父、病院で待ち構えて自撮りを装って家政婦との2ショットをこっそり激写する。そんで翌日、買い物帰りに奥さまに「あ~、こないだ病院で家政婦見つけたわ(写真チラっ)」。奥さま「あ~、そうなんや~」。父「結核とかぬかしてたで。やばない? 家政婦、飯とか作ってんのに。パンデミック間近ww」。奥さま「ままままままままままじまじまじままままじで?やばばばばばばあああああああ」とパニック。

父、運転しつつカカオトークで豪邸にいる妹に「あと3分で着くわ」と連絡。妹、桃の毛を家政婦にばらまく。家政婦のどちんこ吹き飛ぶほどのゴホンゴホン。奥さま到着「うわ……こいつのどちんこ飛ばしとる。まじで結核やないか……」と茫然自失。父、家政婦が捨てたティッシュにチリソース付けて「ほら、血出てるやろ?」と、結核アピール。

結局、家政婦がクビになり、代わりに母が家政婦に就任した。これで貧乏一家全員が金持ち一家にパラサイトしたわけである。もちろん金持ち一家は自分たちが雇っている「娘のカテキョ」「息子のカテキョ」「父のドライバー」「家政婦」が一家だということは知らない。

さて、場面は変わる。ある日金持ち一家は息子の誕生日前日ということでキャンプへ。「ヒ〜ヤッホーイ!イ~ヤッフォーイ!」とはしゃぐ息子。「ねえ~ねえ~、マジで行きたくない。カテキョの先生と勉強しちゃダメ?」と下心満載のお願いをする娘。なんやかんやありながら一家は、家政婦(母)に犬の世話をお願いし、キャンプに出掛ける。

1日、家が空くということで、半地下の一家はここぞとばかりに豪邸に集合し、存分にくつろぐ。兄は娘のベッドにダイブ決めて日記のぞくし、父母は広いソファで横になって昼寝キメるし、夜は高い酒を持ってきて、リビングで勝手に宴会を開催する始末。

妹が「マジ、この家ちょろいわww」とかふざける。父と母は酔っぱらってマジ切れドッキリを我が子に仕掛ける。酒もコップもテーブルから落ちて割れて、もうどんちゃん騒ぎをしていると「……ピンポーン」とインターホンが鳴る。

外は雷雨。「だれや?こんな時間に?」と母がカメラを見ると桃アレルギーの元家政婦がびしょ濡れで立っていた。「わ、なんやこいつ怖いわ。なんなんマジでしらけるわ〜」と思いつつ「はい。なんすか?」と出ると「ちょっと地下の物置に忘れ物しちゃって〜。監視カメラの配線切ったから家主にバレんし、開けてや」とペンチを見せつつ、にやにやしながら答える元家政婦。怖い。とりあえず中に通して母が応対。そのほか3人は隠れながら状況を見守ることに。地下の物置に消えていく家政婦。母が待つも、全然帰ってこないので、様子を見に行く。

すると全身を使って食器棚を横にずらそうとしている元家政婦がいた。「ちょっ!あんたもほら!手伝ってほら!」と言われたので、母が一緒に食器棚をどかすと謎の隠し扉登場。引き戸を開けると、さらに地下につながる階段があった。「は?なにこれ?隠し扉?こいつ伊賀の者?は?」と困惑する母。階段をダッシュで降りる元家政婦。ついていくと地下に部屋があり、初見のハゲ親父が暮らしていた。どうも元家政婦の旦那で、4年以上この地下で暮らしているらしい。

「マジすまん。来るの遅くなったわ。腹減ったやろ。とりまミルク飲んでけろ」と哺乳瓶を渡す元家政婦。ダイソン顔負けの吸引力でミルクを飲むハゲ。母は困惑の極み。「は?マジありえん。地下にずっと住んどるん?キモすぎる。110番な」とスマホ出す。元家政婦、華麗に土下座。「いや追い出されたら行くとこない。すまんが家主にはシークレットで」と懇願。すると背後でドタバタ。こっそり覗いていた父兄妹が階段から落ちてしまった。

「ちょ、お父さん。足痛い足痛いからどけ」「いや、アホ。お前がまずどけ。あたしの足踏んでんだよ」とうっかり喋る。元家政婦、悪魔的機転で家族発言を動画撮影。形勢逆転する。「おかしいと思ったわ。てめえらファミリーね。ファミってんのね。はい。家主に動画送りまーす」とカカオトーク画面見せる。マジもんの死刑宣告に半地下ファミリーは完全降伏。とりあえず全員で地上に上がることに。

ふっかふかのソファでハゲのマッサージをする元家政婦。貧乏一家は、隅のほうで正座&両手挙げてポツダムの姿勢。「おい〜、腕が下がってきてんよ〜。なめてたらカカオトーク送るぞ〜?」と腹立たしさMAXの元家政婦。しかし油断。一瞬の隙をついて、兄が元家政婦にリーチマイケルばりのタックル決める。宙を舞うスマホ。元家政婦がキャッチするも兄が奪い返す。しかしハゲが奪還し、それを父が強奪し、元家政婦がぶん取り、兄が冷蔵庫から桃をパクってきて元家政婦の顔になすりつけ……と全盛期のドリフ並みのコントかましてたら「プルルルルルルル……」と家電が鳴る。

静まり返る現場。おそるおそる母が出ると、奥さまの声が。「あ〜、ジャージャーラーメン作っといて〜。たぶん今から湯がいたらちょうどだわ〜」と。母「は? あの〜、あの~、キャンプは?」と尋ねる。奥さま「いや、もう豪雨だから帰ってきてんのよ。まじ息子がグズって最悪の極み。萎え」。母「嘘やん。あと何分くらいで帰宅?」奥さま「あ〜、カーナビだと8分だわ。早よ湯がけ」。電話を切って母ひと言「ジャージャーラーメン……」

半地下一家は、オイルショック時の主婦並みのスピードで部屋を片付け始める。父はハゲを無理やり地下の隠し部屋に引きずりこみ、両手両足を縛りつけ、兄は桃で失神した元家政婦を同じく地下に引っ張る。妹、酒とつまみ、割れたコップをダッシュでテーブルやチェストの下に放り込む。母は陳建民さながらのスピードでジャージャーラーメンを作る

兄、地下にて「家政婦、クソ重ぇ! こやつ!立派な豚!」と悲鳴。父ダッシュで手助けし兄は妹の手伝いに。妹から日記を受け取ると2階にダッシュ。そのとき、裕福一家が帰宅する音が。妹はリビングのテーブルの下に。兄は娘の部屋のベッドの下に潜り込み。間一髪で隠れる。

するとハゲが地下で急に起き上がり、ボタンをおでこで押す。「偉大なる家主さま!おつかれっす!」と叫ぶ。それは階段の照明ボタンで、旦那さまが通る順番に点灯する。自動センサーだと思っていた階段の照明は、毎回地下のハゲが点けていたのだ。

母(家政婦)は何食わぬ顔で「あーおかえり。ちょうどジャージャーラーメンできたわ」とダイニングに器を置く。するとキッチンの向こうから元家政婦が鬼の形相で上がってくるのが見えたので、みぞおちに蹴りを入れる。元家政婦、激しく階段から落下。コンクリの壁に後頭部を打ち付けて失神。

「いや、マジで災難だったわ〜。息子やべえんよ。あいつまじインディアン以上にインディアン」とジャージャーラーメンすすりながら奥さまが愚痴る。「そりゃ大変だわ〜」と母が返す。金持ち一家が「寝るか〜」つってパジャマに着替えてる間に兄が娘の部屋を飛び出して1階に。父と妹が隠れるテーブルに滑り込む

すると頭に原住民の羽つけた息子が「ッヒャース!」とテント持って庭に飛び出していく。旦那さま「いや雨なり。息子よ外は雷雨ぞ」と止めるも「今日は外で寝るわ。キャンプの不完全燃焼感えぐいんよ」とトランシーバーで応答する息子。旦那さまテーブルに腰掛け「承知」と応える。そのテーブルの下には父兄妹が息を潜めて隠れている。ドキドキ。奥さまはテーブルの隣のソファに腰掛ける。

「息子心配やし今日ソファで寝よや」と旦那さま。「あ〜確かにな〜」と奥さま。貧乏一家が隠れるテーブルの横で抱き合って寝る。すると旦那さま「あの、ドライバーの臭いするわ。まじ腐った切り干し大根スメルなんだが。あいつ良いやつなんやけど、臭いの度が過ぎるんよなぁ」と。嫌な顔をする。テーブルの下で父が自分のシャツの匂いを嗅ぐ。貧乏一家には半地下特有の臭いが染み付いていた。そのまましっかりSEXをはじめる夫婦。気まずい。気まずすぎる。事を終えて熟睡。いびきをかきはじめる。

「よっしゃ落ちたで。脱出しよや」と父。まず妹が物音を立てないようにスルスルっとテーブルの下から出てくる。次に兄が脱出に成功。最後に父が出る。慎重に慎重に這いずりながら出ていると、トランシーバー起動。「ちょ、眠れん。就寝環境の変化こわい」と息子からSOSが入る。旦那さま起床。兄と妹「終わった」みたいな顔になる。

「眠れんのやったら、部屋入れや」「それは理論の暴力。外で寝てえ」「あ〜むずい年頃だわ」と会話をしたのちトランシーバーオフに。2人は幸いにも(?)父には気づかずに再度眠りに入る。

「早よ早よ。チャンス今しかないで〜!」と家族みんなで脱出。豪雨のなか家まで走る。あと300メートルというところでいったん休憩。息を切らしながら「あの地下の夫婦どうするよ?アレ放置はやばいやろ」と兄。妹、半ギレで「マジだるい。あいつら助けないかんやん」と文句をぬかす。落ち着き払った父は「いやまぁとりあえず無事やから。考えあるから大丈夫」と諭し、半地下の家に戻る。

いっぽう地下では元家政婦が起き上がるも嘔吐。夫に「あたし脳しんとうだわ。コレ死ぬわ」と告げる。夫泣きながら、地下のボタンを連打。ついたり消えたりするそれは部屋の照明。ツートンツートントン……。それはモールス信号になっている。庭ではボーイスカウトで、モールス諡号を学んだ息子がノートに「たすけて」とメモをしている。

一方の半地下。父・兄・妹が帰り着くと、家の前の通りが大洪水でえらいことになっていた。豪雨のせいで下水が溢れて、膝上まで汚水がきている。「おい〜。やばいって〜。これ家どうなっとん〜」と急いで帰宅。案の定、肩下まで水に浸かっている我が家。急いで持てる物を運び出す父と兄。妹はトイレにいくも、便座の下から濁流が溢れ出しているのを見て、便座を閉めて上に座り、天井裏からタバコを取り出して絶望顔で一服する。兄、汚水のなかに友人からもらった水石を発見。何かを悟るように抱き抱える

カットが変わって体育館に。避難所と化した体育館にはたくさんの人が布団にくるまっている。父・兄・妹もそう。兄はあの水石を抱いて寝ている。父「いやなんで石? 通帳とか印鑑よりも石? 嘘やん」と。兄「この石がくっついて離れないんすわ。どこにいっても水石がついてくる」とうわの空で語る。父「お前、もう寝ろや~」と諭す。

しかし寝ない兄。「それより父、あの地下の夫婦どうする気なん?」と問う。父は天井を見上げて言う。「計画したら大概失敗するんよ。最強の計画わかる? 無計画、ノープランよ。ほれ、パラサイト計画は失敗だし、ノープランでも体育館は避難所になるやろ?」と言う。そうして激動の夜が明ける。

翌日は快晴だった。金持ち一家は息子の誕生日パーティーを開催する。家政婦(母)に「庭にテーブル置いといて。マジ今日人集まるから楽しみだわ!ガハハ」みたいな事を告げる奥さま。妹に電話し「あ、先生! 今日息子のバースデーやるからおいで」と言う。父はドライバーとして参加することになった。巨大なクローゼットからウキウキで服を選ぶ奥さま。一方、体育館では流されたボロ服を仕分けしている。

奥さま、パーティーの買い出しのため、高級スーパーやワインショップを巡る。携帯で「土産はいらんからな〜。まぁゆったりおいでや〜」と友人連中に声をかける。父は荷物持ちとして奮闘。奥さまと父が豪邸に戻ると、高級車やタクシーが停まっている。友人たちも、それはそれは身なりが綺麗なラグジュアリー属である。

庭に料理やカトラリーを運び、誕生日パーティーがスタート。チェリストの伴奏をバックに、高らかなオペラを歌い出す友人。コネクションが高尚すぎて笑ける。

庭が盛り上がってるなか、2階の部屋では娘と兄が盛り上がっていた。カーテンを半分閉めて熱烈なキスをするふたり。しかし兄は、どこか遠い目をしている。娘「上の空でんがな。目の前のキスに集中せぇよ」と怒る。しかし兄は依然うつろな目で庭の金持ちパーティを眺めている。娘「いやどうしたん?」と尋ねる。兄は「場違いやろ、わし。どう?わしがこの集いにおっても違和感ない?」と。妹は「え?普通やろ」みたいな顔で兄を見る。すると兄は水石を持って場を離れる。妹「え?庭行くん?もうちょい接吻お頼み申す〜」と残念そう。兄「いや、もっと地下に行かなきゃ」と宣言し石とともに元家政婦とハゲが待つ地下室へ向かう。

物置を過ぎて食器棚をずらし、階段を降りる。そろりそろり進んでいると、途中で石を落としてしまった。激しく落ちていく水石。兄、焦る。「……あの〜、ハゲいる〜?」と聞くも返答なし。完全に降りて水石を拾おうとした瞬間、首元に縄がかかり、後ろに引きずられた。家内を殺されて怒り狂ったハゲが殺しにきたのだ。鬼の形相で縄をパイプに結びつけようとする。しかし兄も必死。結ばれる前になんとか逃げる。ハゲ水石を拾って兄を追走。ふたりして階段を駆け上がる。兄、転倒。後ろから水石で頭を殴られてしまう。その場に倒れ込む兄。頭から赤黒い血が広がっていく。ハゲは倒れ込んだ兄の頭にもう一発水石を振り落として、鬼面のまま庭に突き進んでいく。

いっぽうそのころ、庭の茂みの裏では旦那さまと父が余興の準備をしていた。旦那さま「とりま流れまとめるわ。まずこの後ケーキ出るやん? 持っていくのは美術の先生ね? そのときに俺と貴様がインディアンの格好してケーキ強奪する〜、そしたら息子が俺らを倒しにくるから、めでたしめでたし〜って感じ」な。父はどこか気乗りしない顔で「旦那もたいへんですなぁ」と。旦那さまは「これもドライバーの仕事の一環と思ってくれや」と無茶理論でなだめる。

すると庭の向こうで妹(美術教師)がケーキを持ってくるのが見えた。旦那が「行くぞ!」つって茂みから出ようとする。しかしその後ろからハゲが包丁を持ってやってくる。額から流れる血が固まって顔中が赤黒い。もはや赤鬼。騒然とする場。ハゲは母を刺し、妹の左胸を刺した。その場に倒れる妹。溢れる血。ショックで失神する息子。逃げ惑う友人たち。ハゲは母に狙いをつけて刺そうとする。母はなんとかハゲと格闘。父は妹に駆け寄るも虫の息。そのとき旦那さまが「おいドライバーこら!車のキーをよこせこら!息子を病院に運ぶんじゃい」と叫ぶ。格闘していた母がハゲにシュラスコの棒刺す。倒れるハゲ。父は旦那さまに車のキーを投げるもハゲのシュラスコ棒に引っかかる。旦那さま急いで駆け寄ってキーを取り返す。その瞬間ハゲの異臭が。思わず顔をしかめて鼻をつまむ旦那さま。そのとき父の煮えたぎった憎悪が爆発した。瞬間、父は包丁を拾って旦那さまを刺してしまう。パーティー会場はもう阿鼻叫喚となるのだった。

場面は変わって病室へ。医師と刑事が頭を包帯でグルグルに巻かれた兄に話しかける。「あんた、弁護士つけるん?どうする?要るなら呼ぶけど」。兄は「うひゃひゃひゃひゃ、なんやじじいが医者っぽい格好しとるわwww」と爆笑。困惑する刑事。医師が「脳の手術すると、たまにこうなるんよ。ツボがめちゃ浅なって会話できん……」と困る。

そこから移り変わる映像とともに、兄の1人語りに。
「まず、裁判所でしこたま怒られた。文書偽造に家宅侵入に殺人やし。でも殺人に関しては正当防衛なんで、なんとか執行猶予がついた。わしの笑いのツボは依然浅かった。妹の納骨でも笑けてきてマジ不謹慎ww でも俺らのニュースを見たときは、そんな笑えんかったわ」とその後を語る。ニュースでは「旦那さまを刺し殺したドライバーの行方は分からん」と言っており、どうも父は姿を晦ましたらしい。

事件後もあの大豪邸に足を運んでしまう兄。季節はすっかり冬で雪が積もっている。そこには金持ち一家の姿はなく、ドイツ人一家が暮らしていた。するとライトがチカチカと光っている。ピンとくる兄。点滅をモールス信号だと解釈し、スマホの録音機能で「ツー」と「トン」の自身の発音を録音してから解読する。すると発信者は父だった。父はあの地下室に逃げており、夜な夜なドイツ人一家の冷蔵庫から物を盗んで食いつないでいることが分かった。

そこからは兄の妄想シーンに移る。「よっしゃこれやるべきコト決まった。金稼ぐ。これに限るわマジ。ほんであの豪邸を買い戻すやん? そしたら父を救い出せるわ。もうちょい待っといて。稼ぎ散らかすから」

ラストは兄が半地下の家で虚空を見つめるシーン。

星野伸之の投球術みたいな緩急

長々とあらすじを書いてみました。緩急えげつない。元オリックスの星野伸之みたいな。80kmのスローカーブに目が慣れて128kmのストレートに振り遅れるみたいな、後半の展開がマジでワイナイナでした。

というのも序盤は結構ユーモラスで、笑える映画なんですこれ。ちゃんとボケとツッコミがあって、半地下一家の人間性もおもしろくて、コメディチックなんです。劇場でも笑いが起きてましたし。ただハゲが兄の頭を石でかち割るあたりから急にグロい死人率がうなぎのぼり。一気に冷え切る劇場。

ほんで悲壮感半端ないラストでした。で、エンドロールはそのまま暗めのクラシック流れるんかな、と思いきや意外とポップで明るいナンバーがかかる。TWICEまではいかないっすよさすがに。でもなんか、酔った長渕みたいな曲がかかります。

いや、バリバリの社会派やんこれ

実は観る前に監督のインタビューを『スッキリ』で見たんですね。そしたら「社会性はあんま意識しとらん。エンタメに振り切ったわ。てへぺろ」みたいなことをぬかしとったわけです。ところが(個人的に)観る側として率直に思ったのは「いやバリバリの社会派やんこれ」でした。

カメラワークがまず他意ある。とにかく徹底して地上と地下を対比させようと励んでいる。「半地下×地上」の構図を思っくそ作っているのである。ただ決して半地下を卑下しているわけではない。これもインタビューにあったが、プアとゴージャスは相互的なパラサイトなのだ。大枠として半地下が金持ち宅にパラサイトする、と思われがちだが、実際のところ金持ちだって半地下・地下がお金を落としてくれるから稼げているのである。光あってこそ影がある。影あってこそ光がある。みたいなもので、貧乏があるから裕福があるわけだ。ほら、バリバリの社会派でしょう?

「計画」「計画」うるせぇ! カードローンかてめえら!

そして耳に残るのが「計画」という台詞。プランプランプランプラン、とにかく半地下一家は終始「計画」のことばかり気にしていた。

Wi-Fiが通らなくなれば「あんた計画はあるんだろう?」と母。元家政婦とハゲを縛りつけた後は「大丈夫。計画はある」と父。そのほか、10分に1回くらいペースで「計画」というワードが出てくる。伏線というには、あまりに伏せていない。「はじめまして! わたしの名前は計画! 伏線よ!」と高らかに宣言しているようなものだ。

そして中盤で父は「計画なんぞ立てるものではない。ノープランこそ至高」とのたまう。ここで回収するわけだが、これも脳内では「韓国政府の半地下計画みたいなのがあって、それの風刺なのか?」と想像してしまった。しかし「半地下計画」とググったとてヒットしない

そもそも半地下住居は朝鮮戦争の際に生まれた。要は防空壕だ。もともとは住居用ではなかったという。しかしそうも言っていられなくなった。韓国は超絶ハイスピードで経済成長を遂げる。Samsungをはじめここ数年で世界的なIT企業が誕生したのはご存知の通り。するとソウルに人口が集まり、住居が足りなくなったのだ。「やべ〜住むとこねぇ〜」と困っている若者や貧困層向けに貸し出したのが、当時の防空壕である。これが半地下住宅となった。金持ち一家の旦那さまはIT企業の社長だったしね。ITと半地下は、どこか対立構造にあるのだろう。

ととと……話を戻す。要するに半地下住居はどちらかというと当初の予定外で生まれたもの。別に計画とは関係ない。では「計画」とは何を示唆するものだったのか。CINRA.NETさんに、こんな考察が上がっていた。

(出典: https://www.cinra.net/column/202001-parasite_gtmnmcl)

末文のスポ根&ニヒル感があんまり好きじゃないが「なるほど」と思った。韓国ではいまだに、生まれが人生を左右する側面がある。貧困層の計画は努力の証。そして破滅する計画はむなしさの象徴というわけか……。しかし他の記事を見てみると、半地下に暮らす若者は、意外と希望を持って夢を追いかけているようだ。

2015年現在で、激安家賃の半地下に暮らす方は韓国総人口の約2%。彼ら・彼女らの計画がうまくいくといい。仏教好きとしては、諦め(明らめ)も大事だと思ってしまうのだけれどね。

警備員1人の募集に、大卒500人が応募する時代

作中、完全パラサイトに成功する場面で父が「喜ばしいな。我が家は全員就職してるわけだ! 警備員1人の募集に大卒500人が殺到する時代に!」と言うシーンがある。

「盛ってるやろ」と思って調べるとマジだった。2019年、博物館の警備員募集に500人以上の人間が応募していた。韓国といえば、数年前までは世界でも稀なスピードで経済成長を遂げているとされていたが、ここ数年は低成長時代に突入しているらしい。その煽りを受けて、特に4〜50代は仕事がなくなっているそうだ。

そこで冒頭の感想が効いてくる。
「あんなことしないでさ〜、普通に働きゃいいのにね〜」。韓国では"普通に働く"が難しい時代になっているのだ。その点、日本の求人倍率は2020年現在で1.6。1人あたり1.6件の求人がある。東京ではなおのこと、個人経営の飲食店には基本的にバイト募集の貼り紙がなされている。企業はむしろ採用に苦労しているのだ。なんとまぁ、人材に優しい国だろうか。

映画のレビューとはいいつつ、結局、最後は社会的側面を語らざるを得ない。もちろんエンタメ性はふんだんにある。笑えるし、ゾッとするし、泣けるシーンもある。ただそのエンタメは「学歴絶対主義」や「貧富格差」などの韓国社会を舞台として繰り広げられるのは確かだ。どうしてもドキュメンタリー性を払拭できないのは真面目過ぎるかしら。いやアホな私でもそう感じるのだ!うんこーうんこうんこー!へへいへーい!うんこー!

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