見出し画像

「100日後に死ぬワニ」のきくちさんにインタビューして気づいたこと

いや〜、100日後に死ぬワニ。大盛り上がりでしたな。作者のきくちゆうきさんもテレビ番組に引っ張りだこで、友人たちも「全然死ぬ気配ないね!これ!」と注目しているようで。ビッグウェーブがバーン!ときた感じでございました。

たぶんnote民の方々にもファンの方がいるのでは。クリエイターがアングラから地上に出ていく姿に、「すげぇ……かっこいい……」と感動を覚えた方や「けっ!くそつまらねえ!」とジェラシーが湧いた方がいるはず。何にせよ100日間毎日漫画を投稿したのは素晴らしいし、今後、クリエイターがクリエイティブで食っていくようになるためのテストケースを見せられた感じ。

私、実は1年前にきくちさんにインタビューしたんです

見出しの通りです。実は去年、まだ売れる前のきくちさんにインタビューして記事を書きました。

私、以前「LEDGE MAGAZINE」というWebメディアでライターをしていたんですね。今止まっちゃってるんですけど。

そのメディアがまぁ一言で言ってしまうと「なんか面白いことしている人にインタビューする」という戦略もくそもないとんでも企画から生まれたもの。単価は安かったものの「なんかおもしろそうなのでやりたーい」と応募して始めました。

それで偶然デザインフェスタに行ったときに、まだ売れる前のきくちさんがライブペインティングしているのを観て「なにこれ……造形は動物だけど表情は人間……。え、こういう半人半獣もありなの? おもろ!」と感じて、その場でお声がけして名刺をお渡ししたわけです。

名刺をお渡しした翌日に下北のビレバンで漫画を買って読むと、これがめちゃくちゃおもろかった。これだけ突飛な絵なのに、話はその辺の大学生くらい「本当になんでもない日常」を淡々と描いている。なんかそのギャップにやられて家でゲラゲラ笑って。読み終わってすぐにメールで取材をお願いしました。

ほんで1週間後くらいの夜19:30〜新宿のベローチェでお話を伺ったわけです。LEDGE MAGAZINEの取材をする際はいつも思うのですが、私はただ一介のファンですから、そりゃ楽しい時間でした。

特に「フリーランスのイラストレーターになったきっかけ」の話が好き。

ダウンタウンDXがきっかけで、フリーランス転向を目指すって。きくちさんの自然体な感じが出ている。

本当にナチュラルな方で、話していてもニコニコ笑顔で力が抜けている感じ。でも創作には真剣で取材当時も「作品をつくっている以上、バズりたい」って言ってました。

「100日後に死ぬワニ」で終わってほしくない

インタビュー後もきくちさんはどうぶつーズの画風で色んなキャラを描いていたり、ミスドとかファミチキの袋に絵を描いたりしてました。イラストでも漫画でも精力的に作品を投下していて、発想がおもしろかった。だんだんとTwitterで反響が増えているのは感じてて「お~やってるやってる~」と。

そこにワニくんブーム到来ですよ! 回を追うごとにファンが増え始めて、あっという間に大流行。「100日後」っていうカウントダウン形式が良いですよね。緊迫したタイトルの割にはきくちさんらしく、そんなに事件も起こらない。読者が伏線合戦をしていましたが、そんなに緻密な伏線なんて張っていないし、ゆる~っとした日常を淡々と描いていました。

ゴールまでラスト1週間に差し掛かってから「記事も読んでもらいたい」ときくちさんのリプライ欄に毎日URLを投稿していたのですが、さすがの反響がありました。

まずは単純にPV数の伸び。それまでは月間10くらいしか観られていなかったんですけど、一気に1日300くらいまで伸びました。前月比で900倍成長。これがバイラルの面白いところ。

また個人的な恩恵でいうと、「きくちさんの記事を見て」という文面で某K社のエンタメ系月間誌からインタビュー記事の執筆依頼が2件来ました。ありがとうございます~。

ただこうした恩恵はあくまで副次的なもので、私としての本当のゴールは「ワニくんのファンをきくちさんのファンにする」ということ

このSNS全盛時代。「一発屋」はめちゃくちゃ増えるはずなんです。全世代において情報過多の時代ですから、SNSをチェックするだけで「お気に入りの作品」なんてめちゃくちゃ見つかります。ワニくんだって、こんなにブームになったのに、たぶん1カ月後には「あ~、懐かしい~。そんなのあったなぁ~」みたいになっちゃう。きくちさんの次の作品、次の次の作品までを読んで、ファンになってもらうには「作品のファンを、作者のファンにするしかない」と思うんです。だからこそ、きくちさんの人生を書いた記事を読んでほしかった。おもしろいから。

そういう意味ではPV数こそ増えたけれど、うまくはいかなかったといえます。Twitterで「きくち インタビュー」とエゴサしても出てくるのは「ワニくんの記事」ばかり。読者の皆さんはやはり「ワニくんの作者であるきくちゆうき」を欲しているのだなぁ、と思ってしまうのでした。無念。LEDGE MAGAZINEにはヒートマップツールを入れていませんので判断できませんが、たぶん読了率は低いんじゃないかな。「なーんだ。ワニくんの話してないじゃーん」と離脱するんじゃないか、と思うのです。

クリエイターの内面を掘りに掘り下げるWeb MAGをつくりたい

私は「もっと世の中に知られてほしい」という想いで”これから”のクリエイターさんにアポをとってインタビューをしています。これまでは業務委託としてディレクションとライティングをしてきましたが、2020年は自分でメディアを立ち上げるつもりです。

きくちさん以外にも、インタビュー後に注目されるようになった方々がいて、ミスiDで賞を取った「みしゃむーそさん」や崎山蒼志くんがTwitterのアイコンにしている「高橋岳人さん」、シュールアニメーションで人気を博す「谷口崇さん」などなどの記事を書いてきました。

先見の明なんて大層なものはなく、「この人おもろい。もっと世の中に知られてほしい」という想いで”これから”のクリエイターさんにアポをとってインタビューをしています。

クリエイターとして認められ、長くファンを獲得するためには「作者の魅力を訴求した記事」が必要です。作品に関するコンテンツから、作者に関するコンテンツにソフトランディングしてもらいたい

あと、個人的に人に関するインタビューのほうがおもしろい。ライターになってすぐの時期は、毎週のように著名人にインタビューをしていた時期があったんです。女優さんとか、ミュージシャンとか、芸人さんとか。今でもまぁ、大きな事務所のアイドルとかはたまに。でもテーマは基本的に映画や舞台、音源などのタイアップ案件なので、人生を掘り下げるようなインタビューはできなかった。タイアップ記事はリリース直後はよく読まれているのですが、長くは読まれないんですね。

私はインタビュイーの財産になるような記事を書きたい。クリエイターの作品や作風なんて変わるので、その一過性のコンテンツではなく、何があっても変わらない記憶に関する記事を書きたい。誰しもそこに魅力があるので、深掘りするほど話していて面白いんです。

この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?