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ジュウ・ショのサブカル美術マガジン

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美術についてサブカルチャー的な視点から紹介・解説。 学術書とか解説本みたいに小難しくなく、 極めてやさしく、おもしろく、深ーく書きまーす。
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#絵

メソポタミア美術とは? シュメール人・アッシリア人の表現力がすさまじい件

さて、大学の真剣な講義ってのは、意外と頭に残んないもんだ。専門的な内容はあんま話さずに、高田純次バリのテキトー加減でフラフラしゃべってたアゴヒゲMAXのおじいちゃん先生のほうが、意外と記憶に残っているのである。どうもこんにちは、キアヌ・リーブスです。ははは違うかぁ、ははは。 専門的な分野の話というのは、ちょっとユーモアがなけりゃ耳に入ってこないんだと思う。少なくとも集中力のない私はそうでした。 そんなテキトー加減で西洋美術史をお伝えしていく所存のこの連載。ぜひノートとペン

原始美術ってなに? オーリニャック、ラスコー、アルタミラなどの洞窟絵画と造形の特徴

と、まぁいきなり酔っ払ってみましたが、私は真剣に「西洋美術って難しく書かれすぎじゃねぇか」と思っとりますよ。なんかもう「大谷翔平ばりにワインドアップで振りかぶって書きました!」みたいなね。重い。もうどの書籍も官僚がしゃべっているような文章で、イラストたっぷりのかわいい本でも、ちょっと小難しく見えちゃいますよね。ちいかわの横で、岸田首相がしゃべってんですよね。 この連載ではもっとおしゃべりするような感覚で、でもしっかり内容がある感じでやっていきます。「大学の講義」というよりは

noteで西洋美術史をみんなで楽しく読み解く連載

こないだイロハニアートさんで連載していた西洋美術史の連載が無事に終了しました。全30記事。あらためて見返したら約1年もやってた。すげえ。 下の記事にまとめていますので「おじや用のレンゲ」がくるのを待ってる間にでも、読んでください。 いやこれ書くの、毎回マジで楽しかったんです。ほんま幸やった。エクセルシオールカフェで原稿書いてる間はふわふわしてたし、たぶん頭の周りをティンカーベル的なサムシングが飛び回ってました。 「エジプト文明でミイラ作ってた理由」とか「ルネサンスで写実

ポール・セザンヌとは|400年の美術の歴史を変えた作品を、生涯を振り返りながら解説

ポール・セザンヌはハンパない。ピカソやマティスから「近代絵画の父」と呼ばれた、めちゃくちゃ偉大な人間だ。スター揃いの後期印象派のなかでも、超デカめな革命を起こした人間である。 しかし「なぜ彼がお父さんなのか」ってのは、あんまり広まっていない。今見ても「え、なにこれ下手じゃない……? あれ、これ単純に下手じゃない……?」とか言われることもある。 そこで今回はセザンヌのスゴいところについてご紹介。彼の人生を追いながら「なぜ近代絵画の父なのか」を見ていきたい。 ポール・セザン

ミケランジェロ・ブオナローティとは|88年の生涯から作品・生き様を徹底解説

生前に伝記が書かれた初めての西洋芸術家、それが「ミケランジェロ・ブオナローティ」だ。超絶ストイックで筋肉オタクのおじさんである。たぶん今の時代に生まれてたら、イオンでササミとブロッコリー買い占めている。 生前に伝記が書かれるくらい、1500年代で活躍しており「神の如きミケランジェロ」といわれていた方だ。彼によって(美術的な意味での)ルネサンスが終わり、マニエリスム、バロック時代に突入していく。それくらいミケランジェロの作った作品はレベチだった。 誰しも名前は聞いたことある

Chim↑Pomの展覧会がマジでやばかった|「美術館」の概念をひっくり返す回顧展

2022年2、3月は六本木ヒルズ ミュージアムが激熱です。東京シティビューでは「楳図かずお大美術展」、森美術館では「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」が開催中。いやもう完全にヤバい。ハイカルチャー貴族が住むヒルズが、名古屋のヴィレヴァンみたいになってる。絶対に地上52階でやることじゃない。もう最高なんですよね。 もうこんなもん行くしかないでしょう。とはへたたいうことで、今回は後者の「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に行ってきたので、現地の様子をレポートします。

記事が出ました! バルビゾン派について書いています

イロハニアート様で記事が出ました。 なぜか西洋美術史って「スーツ着たおじさまがやたら難しく解説する」のが慣例だと思うんですが、私は「それは読者に優しくない」と思います。だからこの連載では極力簡単に楽しく書いている感じです。 もう20回目ですね。今回はロマン主義の後に出てきた「バルビゾン派」について紹介しています。100人くらいの画家が同じ森で描いてたっていう。もう皇居ラン状態の自然主義はなぜ起きたかってやつです。 スマートニュースでも読めますので、ぜひどうぞ!

ジョルジュ・スーラとは|点描画の創始者が駆け抜けた31年の人生をたっぷり紹介

「点描画」というジャンルをご存知だろうか。名前の通り、真っ白なキャンバスにピッピッピッピッて点状に絵の具を塗ることで描く絵画のことである。 名前だけで「ハンパじゃなく気が遠くなる作業」ということはわかるだろう。常人がやる表現じゃない。もし隣で血眼になって一心不乱に点描画やってる奴がいたら「おい大丈夫か。病んでんのか」つって、いったんコーンポタージュ飲ます。確実にメンタルを損ねているもの。こんなやつは。 そんな点描画を19世紀に開発したのが、ジョルジュ・スーラだ。スーラって

人間がヲタクになり推し活を終えるまでを4ステップで解読してみた

私は主にアート、マンガ、音楽、小説といった分野でライティングをしている。これらの創作物は、広義で「文化(カルチャー)」という枠でくくられる。 ただ、カルチャーは決してエンタメだけに特化した言葉じゃない。カップ焼きそばUFOのパッケージとか、無印良品のオーガニック食材とか、そういうものもひっくるめて文化だ。決して一過性のブームではない。何人かのヲタがソレを推して歴史を作ったもの。それが文化となる。 カルチャーについては以下の記事で紹介していますので、暇すぎてもう飲料の原材料

北方ルネサンス美術とは|ルネサンスとの違い、特色・特徴、画家と代表作で徹底解説

「サブカルチャー(sub-culture)」というと、マンガやアニメ、アイドル、プラモ、フィギュアなどなど、ちょっとオタクチックなものを連想する方も多い。 ただ本来はもっと広義だ。アメリカのヒッピー文化の過程で生まれた「サブカルチャー」という言葉が日本に輸入された際に、アニメやマンガがマイノリティだったがゆえにオタクとサブカルが混ざったんですな。 いつの時代もメインストリームがあり、その隣でひっそりと個性を放ちまくっているのが、サブカルチャーなのである。この辺りのお話は以

「頽廃芸術=革新性」という観点で当時のアーティストを褒め称えたい

ヒトラーといえば、そりゃもう血も涙もない独裁者だ。第一次世界大戦後、1920年ごろからドイツの政権を握り、1933年から1945年までナチスドイツを指揮した。 彼はユダヤ出身やスラブ出身といった、東洋系の人種の存在を根底から否定したのは有名だ。そのざっくりした理由は「ドイツ民族以外を排除したいから」というもの。「我がワイマール(北方)民族こそ至高」という考えがあり、そぐわないものはもう徹底して排除するんですね。ただ「なんで差別主義者になったのか」はあんまり分かってない。

ピエト・モンドリアンとは|抽象絵画を「赤・青・黄」で極めた本物の画家

さて、早速前の記事を紹介をするのも恐縮なんだが、以前、カンディンスキーという画家の話をたっぷりと書きました。 「もしかしたら本当の意味でのアートはカンディンスキーから始まったのかもしれない」という話です。抽象絵画は、今やほとんど見なくなってしまった絶滅危惧種の1つでしょう。それはもしかしたら分かりやすい作品が求められるからかもしれない。たしかに抽象絵画は「何を描きたいのか」が、めちゃ分かりにくい。これはもう言い切っていいと思う。 でもキャッチーさと引き換えに、観ている人の

「アングルvsドラクロワ」という西洋美術史最大のライバル関係について

西洋美術史は思想のぶつかり合いの歴史でもある。「アート」という答えのないテーマを各々が必死に追い求めるのだから、そりゃ意見がぶつかり放題、火花散り放題なんですね。 「すげぇの描けたから見てくれ!」と作品を発表すると、必ず誰かが反論を唱える。しかしその反論にも反論があり、反論の反論にも反論があり……ともう止まらない。 金子みすゞの「みんな違ってみんないい」みたいな多様性を認める人間はあまりおらず、各々が哲学という盾で身を守りながら、表現という剣でバチバチにやり合う。だからこ

エドヴァルド・ムンクとは|傷つくほどに名作を生む、「死と不安」の画家

「知ってる?『ムンクの叫び』じゃなくて、ムンクの『叫び』なんだよ〜」。これは誰もが人生で20回くらい言われるトリビアだ。 それほど「叫び」という作品は有名な1枚です。絶望的な顔をあんなに臨場感を持って描けるのは、楳図かずおかムンクくらいなんじゃないか。「叫び」が世界で広く認知されているため、美術好きでなくとも、ムンクという名前は知っている。インパクト抜群の作品だ。 しかし「叫び」ばかりが先行してしまって、ムンクという画家にスポットライトが当たっていない感は否めない。もはや