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2023年 映画ベスト10! <日本映画編>

あけましておめでとうございます。
2023年の映画ベスト10、<外国映画編>に続いて、<日本映画編>です。
こちらもかなり観た中からの厳選10作品となります。

では早速どうぞ。


10位 『首』

https://filmarks.com/movies/109365

北野武監督による待望の新作!
本能寺の変に向かう戦乱の世を秀吉、光秀など跡目を狙う面々がしのぎを削り合う。
中でも加瀬亮の信長がセクハラにパワハラという完全なるブラック企業の社長という感じで狂っててかなり良かったです。

秀吉については相当調べたらしく、曽呂利新左衛門など落語の始祖と言われるキャラがいい役どころになっていたりというのも芸人のたけしらしいキャラ設定だなと思います。

たけし流のギャグにバイオレンス。
そして首に振り回される男たちの滑稽さを描いた歴史ドラマです。


9位 『月』

https://filmarks.com/movies/110824

障害者施設の大量殺人事件を題材にした辺見庸原作の映画化、監督は石井裕也。なかなかの重いテーマをしっかりと見せるとても社会派な作品。
宮沢りえとオダギリジョーの夫婦役といえば「湯を沸かすほどの熱い愛」が思い浮かびますがこのコンビは良作になるのかも。
そして、磯村勇斗。何作出演しているのか分からないほどの活躍ぶりですが本作でも重要な役どころをしっかりとこなしていてさすがです。

石井裕也監督は「愛にイナヅマ」も同時期に公開。こちらは一転オリジナル脚本によるコメディな家族の話ですが、こちらは原作ものの社会派作品。
スターサンズ製作なだけに同じ監督でも全然アプローチが違っていて面白いです。


8位 『市子』

https://filmarks.com/movies/111308

恋人にプロポーズされた直後に失踪を遂げる市子。なぜ市子は逃げなければならなかったのか、そこに市子を探す刑事が現れ、市子という人物は存在しないと言う… それはいったいどう言うことなのか、ミステリー仕立ての先が見えない面白さと、背景にある社会の問題点を浮かび上がらせる社会派な作品に仕上がっています。

見どころはなんと言っても杉咲花の演技! もう彼女が素晴らしい。
彼女も「湯を沸かすほどの熱い愛」で子役ながら名演を披露していましたが、大人になってからの代表作が本作ではないでしょうか。
あまりに自然な関西弁を操りながら東京出身というのも驚き。


7位 『エゴイスト』

https://filmarks.com/movies/104176

もうボロ泣きするほど感動してしまった作品。
鈴木亮平と宮沢氷魚の純愛にグッとくるんですが、キャラクターづくりを丁寧にしてきたんだなっていうのが伝わる、特に鈴木亮平の絶妙なオネエ加減の演技はさすがでした。

ラブストーリーなんですがとってもピュアです。愛するっていうことは相手の家族も環境も全部受け入れられるっていうことを表現してくれている。
それでいて「エゴイスト」っていう意味も考えさせられるつくりとなっていて、じんわりと最後までいいです。


6位 『BLUE GIANT』

https://filmarks.com/movies/99735

こちらも大感動! 世界一のジャズマンになるために上京し仲間ができて少しずつ夢に近づいていく青春ストーリー。
ジャズのことが分からなくても全然OK。スポ根もののように徐々に成功していって、障害が立ちはだかって、挫折して、それを乗り越えて成長していくという分かりやすいつくりになっているので誰でも楽しめます。

そして音楽がいい。それもそのはず上原ひろみがピアノをやっていて一流の奏者による演奏なので音楽も聴いていて熱くなります。
キャラクターも情熱を持った主人公に、エリートコースできた天才肌、才能はないけど努力で喰らいつく、といった特徴もあって分かりやすい。玉田に泣かされてしまった。


5位 『怪物』

https://filmarks.com/movies/106550

監督:是枝裕和、脚本:坂元裕二、音楽:坂本龍一というすごいタッグ。
カンヌ映画祭でも脚本賞を受賞という堂々たる構えの作品ですが、作品もしっかりとよくできた内容です。

息子の様子が変な事に気づいたシングルマザーが学校に事情を聞きにいくが、心無い対応にこの教師たちは怪物なんじゃないかと思う。だけど目線を変えると、同じシーンが全然別な内容に見てくる…
黒澤明の「羅生門」のように同じ出来事を人物の目線を変えて繰り返すことで真実が違って見える手法を用いた脚本が素晴らしい。
役者もそれぞれ良かったし、是枝作品なのにいつもと違って見えた。
怪物とは何なのか。観終わった後も考えてしまう。


4位 『チョコレートな人々』

https://filmarks.com/movies/106143

めちゃくちゃ感動したドキュメンタリー作品。
製作は、安定の東海テレビ。ここの劇場版ドキュメンタリー作品は毎年1月に公開されるんですが良作が多い。
愛知県のローカルテレビ局なので愛知ネタなんですが、今回は豊橋市にできた久遠チョコレートを長年追った作品。

この久遠チョコレートのすごいところが、従業員の大半が障害を持った方やLGBTQ、マイノリティで悩みを抱える方たちであること。どうやったら仕事がやりやすい環境になれるのかを考え、職場や仕事自体を彼らに合わせていく、そこで辿り着いたのがチョコレートという商材。
キャッチコピーにもなってますが「失敗しても何度でもやり直せる」というのがチョコは溶かせばまた作り直せるというビジネスと、従業員との関係性のコンセプトにマッチしていて、それが多様性を問うこの世の中にとても響く内容になっています。

東海テレビの作品は、基本的に配信やDVDにならないので劇場公開時にちゃんと観ておくのがおすすめです。


3位 『福田村事件』

https://filmarks.com/movies/105272

ちょうど100年前、関東大震災の時に日本各地で起こった朝鮮人虐殺事件、ところがこの福田村では朝鮮人に間違われた日本人が虐殺された。
タブーとされた歴史の闇を明らかにした衝撃作。

混乱時に巻き起こるデマや流言、SNSやネットのない時代でも構造的には今と変わらないその様子にゾクっとする。
昨日までの善良な市民が疑心暗鬼に駆られ殺戮を犯してしまう。歴史に学ぶところの大きさを感じさせてくれる力作。

役者もそれぞれ良かったです。
ドキュメンタリー作家の森達也による初の劇映画監督作品。


2位 キリエのうた

https://filmarks.com/movies/109417

オープニングの北海道の雪景色からもう岩井俊二ワールドへ!
ヒロインは、アイナ・ジ・エンド。彼女がストリートミュージシャンとして古今東西の名曲をいろいろと歌ってくれるのでそれだけでも見応えがあります。

ストリートで歌うキリエは、何者でどこから来たのか、過去がフラッシュバックされ過去と現在が徐々に交錯してゆく。キリエという名も実は違った…
その辺りは『市子』にも通じる展開。
現実なんだけどどこかファンタジーな世界、過去の岩井俊二作品とどこか通じるところがキャラクターからも感じることができる。そんな岩井俊二の世界が堪能できる。
映画としても素晴らしかった。


1位 『PERFECT DAYS』

https://filmarks.com/movies/109454

とにかく素晴らしかった!
といっても特に何も起こらない、トイレの清掃員である平山の質素な日常を切り取った作品。
何気ない平凡な日常にある小さな喜び、嫌なこともあるけれどそれを大らかに受け止められる強さ、誰もが見過ごす風景の中にちょっとした発見をする。

朝、缶コーヒーを飲んで、車でお気に入りの音楽を聴いて出勤し、仕事は真面目に、帰りに銭湯に寄って、行きつけの大衆居酒屋で一杯ひっかける。寝る前には古本屋で100円の文庫を読む。
そんな平山の清貧な姿が良くて、ヴェンダースが切り取った東京の映像が良くて、音楽が良くて、なんか自然と涙が流れてくる。

もうしみじみといい映画。
文句なしのナンバーワンでした。


最後に

外国映画に続いて日本映画のベスト10でした。
巨匠から新鋭監督まで、ドキュメンタリーにアニメといろいろ良かったです。
「PERFECT DAYS」については文句なしの1位。
「枯れ葉」もそうですが両方とも12月公開なので、本当に最後まで気が抜けない。
12月早々に今年のベストを発表するのも見かけますが、これを逃してしまうのはもったいなすぎる。(余計なお世話笑)

ということで本年もまたよろしくお願いします。


※外国映画編


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