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2023年 映画ベスト10! <外国映画編>

あけましておめでとうございます。
2023年もいろいろと映画をたくさん観ました。
ギリギリまで観て、年末にベスト10を外国映画、日本映画に分けてそれぞれ10作品ずつ絞り込みました。


10位 『TAR/ター』

https://filmarks.com/movies/100794

世界最高峰ベルリン・フィルの首席指揮者、リディア・ター。
権力者としての振る舞いにやがて綻びが見えはじめる…

このターを演じたケイト・ブランシェットがなんと言ってもすごい!
圧巻の演技力でアカデミー賞の主演女優賞最有力候補であったことも納得です。
徐々に問題が発覚し始めるサスペンス調の作りと、無敵の王者が追い詰められていくその表情の変化がすごいです。
映画としての完成度も高い傑作。


9位 『Pearl パール』

https://filmarks.com/movies/104579

ホラー作『X エックス』の前日譚、あのシリアルキラーのパールおばあさんは、どのような生い立ちだったのかが描かれる。
とはいえ、『X エックス』を観てなくても全然楽しめる作品です。

昔の名作『オズの魔法使い』の世界観を使って、田舎の田園風景をテクニカラーで映し出し、自転車に乗ったパールがかかしと戯れる。
そこから徐々にパールの本性が露わになる…
というパールを演じたミア・ゴスが圧巻です。キィ〜って我慢できなくなっちゃう怖さとかすごいし、特にラストシーンは映画史に残るインパクト。

この作品はパンフレットも昔の映画チラシ風なのかのこだわりがあってとてもいいです。


8位 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』

https://filmarks.com/movies/78019

人気シリーズの第三弾にして最終章。
宇宙のはぐれ者たちの海賊ガーディアンズが織りなすドラマが最高です。
今回の主役はアライグマのロケット。
何でアライグマなんだなんて考えたこともなかったけど、その彼の辛い生い立ちに迫ったのが本作。なかなか感動させてくれるし、個性的なキャラ達がやっぱり愛おしくていいんです。
そして音楽も相変わらずグッド!

監督のジェームズ・ガンは、いつでも陽の当たらないキャラにスポット当てる。この辺りはまた別でnote書いてもいいかもと思うくらい。


7位 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

https://filmarks.com/movies/100622

今年のアカデミー賞を席巻した「エブエブ」。前半はもうエブエブ祭り状態でした。
カンフーにメタバース、アジア系のおばさんが主人公という今までのハリウッド映画にはない荒唐無稽なシチュエーション。
ミシェル・ヨーは見事にアカデミー賞の主演女優賞に輝きました。

本作はいろいろとnoteにも書いてます。


6位 『熊は、いない』

https://filmarks.com/movies/104603

イラン国内では上映禁止というパナヒ監督の新作!
カフェの前で言い争いをしている男女のシーンから始まって、それが実はフレームの中の撮影シーンだったという入れ子構造になっているいうオープニングシーンだけで、この作品が凡庸でないことが分かる。
田舎の村に残る古い慣習やイラン国内の様々な制約、そこに果敢に挑戦し続けるパナヒ監督による不条理な寓話。
熊とは何なのか。
なかなか秀逸な作品。


5位 『CLOSE/クロース』

https://filmarks.com/movies/102736

親友同士の二人が、中学生になった途端に周囲から「親しすぎる」とからかいを受けるようになり、二人の距離感は徐々に変わっていってしまう。
すれ違ってしまう思春期の繊細な感情をとても鮮やかに美しく捉えた傑作。
二人の少年も良かったし、田舎のロケーションも良い。

学校や社会の枠組みの中で矯正され無くなっていってしまうものに優しくも厳しい眼差しで撮り上げたルーカス・ドン。これでまだ2作目というすごさ。
少年が花畑を駆け抜けるシーンがとても印象的。


4位 『aftersun/アフターサン』

https://filmarks.com/movies/105613

夏休みのヴァカンスをリゾート地のホテルで過ごす父と娘。
その映像は昔撮ったホームビデオの思い出のシーンを切り貼りしたような、どこか断片的で記憶を辿っているかのよう。
そして徐々にわかってくる、どうやら夫婦は離婚していて久しぶりの父と娘ふたりの時間であること、その時間に限りがあること、父はどこか辛そうであること…

この説明が一切なく行間を読むしかないタイプの作品が何ともいい。
ともすると何もわからない。ぼーっと観てたら、あれ終わってる、となってしまいかねない今の時代リスクとも思える手法なんだけど、詩でも映像でも直接は言われない説明されないけど、その行間から伝わってくるもの、それを読み取ることで見えてくる楽しさってあるじゃないですか。
それを堪能できる逸品。
しかもシャーロット・ウェルズはこれで長編デビュー作。
次が楽しみ過ぎます。


3位 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

https://filmarks.com/movies/81605

巨匠マーティン・スコセッシによる重厚なサスペンス。
1900年代初頭、石油が出る土地の権利を持つネイティブインディアン達が次々と不可解な死を遂げる。街を牛耳るデニーロの元で働く甥のディカプリオは伯父の言う通りにネイティブアメリカンの娘と結婚するが…

アップルTV製作によるいかにも金のかかったセットや衣装で大いに歴史劇をやってるスコセッシ(御年81歳)がいい。
デニーロもちゃんと悪いし、ディカプリオが終始しているバツの悪いしかめっ面もいいんです。

闇に葬られたアメリカ史の暗部、黒歴史の映画化。


2位 『青いカフタンの仕立て屋』

https://filmarks.com/movies/105993

モロッコを舞台に美しい伝統的な民族衣装カフタンドレスの仕立て屋を営む中年夫婦の物語。もの優しい主人には人に言えない秘密があった。

もうこれが最高でした。
ジェンダーの問題をテーマにした作品なのですが、モロッコというのはイスラム教の国なのでとても厳しい。
それを過度な演出などせずにとても自然に美しく描くことのできるマリヤム・トゥザム監督。本作がまだ2作目だとは思えない洗練されたその手腕に脱帽でした。

監督の前作「モロッコ、彼女たちの朝」もシングルマザーがタブーなイスラム社会での女性を描いた作品。
次も楽しみな監督です。


1位 『枯れ葉』

https://filmarks.com/movies/109467

そして、堂々の1位はアキ・カウリスマキ監督による新作。
一度は監督の引退宣言をしたもののカムバック。「希望のかなた」ではシリアでの内戦、そこからくる移民問題など社会問題への怒りがありましたが、本作ではウクライナへのロシアの侵攻が背景のラジオから聞こえてくるものの、それらも踏まえて愛で包み込むような優しさに溢れた作品でした。

物語としてはスーパーで働く中年女性と、工事現場で働く中年男性によるラブストーリー。この社会の隅っこにいる市井の人々にスポットを当て、役者が全員無表情でセリフ棒読みのような朴訥とした喋り方のカウリスマキ流の演出で、出会ったもののすれ違う、そのやりとりが堪らない。

二人がデートで観に行った映画はカウリスマキの盟友でもあるジャームッシュの作品。
映画館から出てきた映画通らしいおじさん二人が、「ブレッソンのようだったな」「いやゴダールのようだった」みたいな感想を言い合うんですが、その映画は全然そんなんじゃない笑 そういうギャグも堪らないです。

背景に貼ってる映画ポスターもカウリスマキの映画の好みが分かる往年の名作だったり、愛犬の名前まで(あの監督の名前が笑)、映画愛に溢れていて、それで全てを包み込むような優しさをこの戦争と争いの絶えない不条理な世の中に投げかけてくれた作品。
とても素晴らしい映画でした。


最後に

やっぱり10本に絞るのはすごく大変。
あれもこれも漏れてしまったんですが、見逃した作品は余りないくらい割と多くの作品を観てこれたと思います。

日本映画編もまた発表します。
最後までありがとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


※日本映画編


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