エリック・ロメール監督特集 「六つの教訓話」一挙紹介
ヌーヴェルヴァーグの中心人物であるエリック・ロメール監督、彼の初期キャリアに発表したシリーズ「六つの教訓話」の6作品が、短編作品と一緒に公開中です。
東京以外は、これから公開されるところが多いようです。
1950年代〜1960年代にフランスの映画業界で次々と新しい才能が開花した時代がありました。それを「ヌーヴェルヴァーグ(新しい波)」と読んだのですが、エリック・ロメールはその中でも先輩格の重要の存在です。
※ヌーヴェルヴァーグについては以前にnote書いてますので参考まで
そんなロメールの特集上映企画「六つの教訓話」の見どころを今回紹介していきたいと思います!
「六つの教訓話」
教訓シリーズとは、妻や婚約者がいながらも、自分の前に現れた別の女性の魅力や誘惑に心動かされて振り回されるが、結局ギリギリのところで元の女性のもとに戻るという男の恋愛模様を描いたシリーズです。
女性との距離感がとても近いフランス男なので、また日本とは全然違った恋愛観だったりして面白いです。
『モンソーのパン屋の女の子』(1962)
1962年 フランス 23分
監督・脚本・編集:エリック・ロメール
出演:バルべ・シュレデール、ミシェル・ジラルドン、クロディーヌ・スブリエ
第一作目に当たる短編。
街で見かけてひと目惚れしたした女の子を探し回るうちに毎日同じパン屋に通うことに。やがてそのパン屋の女の子と仲良くなりデートに誘う、だけどその当日にひと目惚れした彼女に出会ってしまう…
エリアは、パリ北西部のモンソー公園界隈。
いつも食べるサブレが美味しそう。
『シュザンヌの生き方』(1963)
1963年 フランス 55分
監督・脚本・編集:エリック・ロメール
出演:カトリーヌ・セー、フィリップ・ブゼン、クリスチャン・シャリエール
第二作に当たる中編。
ギヨームはカフェで知り合ったシュザンヌとベッドを共にし、やがてヒモのように彼女にたかりながらも彼女を小馬鹿にして他の女の子に手を出し始める…
ひどい男だしシュザンヌかわいそう。。 だけど最後はシュザンヌが報われます笑
エリアは、パリのカルチエ・ラタン界隈。
当時のカフェの雰囲気がとてもいい。
『コレクションする女』(1967)
1967年 フランス 87分
監督・脚本:エリック・ロメール
出演:パトリック・ボーショー、アイデ・ポリトフ、ダニエル・ポムルール
第三作に当たる長編でカラー作品。
婚約者のキャロルがロンドンへ旅立った後、アドリアンは友人の別荘でひと夏を過ごす。そこには夜毎に男を連れ込んでいる女の子アイデもおり、やがて彼女が気になり出したアドリアンはアプローチを始めるが…
アイデのバカンスのファッションが高級じゃないんだけど、配色とかとてもおしゃれでいいんです。
エリアは、南仏サン=トロペ近郊。
『モード家の一夜』(1969)
1969年 フランス 111分
監督・脚本:エリック・ロメール
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、フランソワーズ・ファビアン、マリ=クリスティーヌ・バロー
第四作に当たる長編。
自動車工場の技師ジャン=ルイは、街でいつも見かける金髪の女子学生が自分の妻になると確信する。その後友人に誘われて離婚したばかりの女性モードの家に行き、彼だけ泊まることになる…
こちらはモノクロ作品。大人の魅力のあるモードといい感じになるのに、まだ知り合いでもない金髪の彼女を追い求めるという。
でも今までのシリーズの浮気心満載の男よりは一途、笑。
エリアは、フランス中部の街、クレモン=フェラン。
『クレールの膝』(1970)
1970年 フランス 106分
監督・脚本:エリック・ロメール
出演:ジャン=クロード・ブリアリ、ベアトリス・ロマン、ロランス・ド・モナガン、オーロラ・コルニュ
第五作に当たる長編。
結婚を控えたジェロームは、別荘地で偶然出会った友人のオーロラを介してヴァルテル夫人とその娘のラウラとクレールと知り合う。
子供扱いしながらもクレールの膝に魅了されていく…
これはもう脚フェチのロメールらしい内容とポスター笑。
箱根のような山に湖という別荘地の美しい風景と富裕層のバカンス模様が楽しめます。
エリアは、オート=サヴォア県、アヌシー湖周辺。
『愛の昼下がり』(1972)
1972年 フランス 1972年
監督・脚本:エリック・ロメール
出演:ベルナール・ヴェルレ、ズズ、フランソワーズ・ヴェルレ、ダニエル・セカルディ
第六作に当たる長編。
会計士のフレデリックは、愛する妻が二人目の子供を身篭っている。
いつも自分がモテモテになる妄想をしているが、そんなある日、旧友のクロエが事務所を訪ねてくる。何度か訪ねてくるうちに、徐々に彼女の魅力に惹かれだしてしまう…
このシリーズの最終章。
そして、過去の女優が"モテモテ妄想シーン”で総出演するあたりが、シリーズ観てきたファンに対しての目配せがあって楽しい。
クロエの積極的な誘惑に乗りながらも耐えるというオロオロっぷりも可笑しい。
エリアは、パリ。
シリーズの感想
”別の女性の登場によって揺れ動きながらも、元の女性を選ぶ”というコンセプトのシリーズなんですけど、そもそも男の浮気心で別の女性が登場しているから教訓話といってもかなり皮肉たっぷりな感じです笑
結婚前だったり婚約者いるのに他の女性との距離がまあ近い。
この年代(1960〜70年代)の日本だったら考えられない恋愛観だと思うので、当時フランス映画をリアルタイムでみてた世代のインパクトは大きかったんだろうなと推察します。
でもそういうのも含めてフランスの恋愛観や風景やファッションまで楽しめるのがロメールの映画です。
特に会話劇なので言葉のやり取りを見ていても面白いです。
その他のシリーズ
ロメールは、その他でもテーマを設定して制作されたシリーズものがあります。
「喜劇と格言劇」シリーズ
『飛行士の妻』 La Femme de l'aviateur (1981年)
『美しき結婚』 Le Beau Mariage (1982年)
『海辺のポーリーヌ』 Pauline à la plage (1983年)
『満月の夜』 Les Nuits de la pleine lune (1984年)
『緑の光線』 Le Rayon vert (1986年)
『友だちの恋人』 L'Ami de mon amie (1987年)
「四季の物語」シリーズ
『春のソナタ』 Conte de printemps (1990年)
『冬物語』 Conte d'hiver (1992年)
『夏物語』 Conte d'été (1996年)
『恋の秋』 Conte d'automne (1998年)
▼エリック・ロメール監督作品一覧
インスタでも紹介
インスタでは割とタイムリーにいろいろな作品を紹介しています。
どちらかというとライトな感じで映画ネタをアップしてますので、気軽に映画ネタを見ていただけると思います。
最後に
今回は、特集上映が開催中のエリック・ロメール監督の「六つの教訓話」を紹介してみました。
東京ではBunkamuraル・シネマで開催中ですが、順次いろんなところで公開されていくと思いますので、鑑賞する参考になればいいなと思います。
特集上映では、一緒にロメールの短編作品も併映されています。(それは今回紹介してませんが)
フランス映画に興味ある方は、ロメールの作品はとても日常的でパリの雰囲気や風景やファッションが描かれますので好きになると思います。
最後までありがとうございます。