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【読書】イエスを等身大に描く&読むのは、冒涜ですか?

遠藤周作の代表作の1つに、 
生けるイエスを、
一人の血の通った人間として描いた
『イエスの生涯』があります。

実際のイエスはこんな人だったに
ちがいない、と思わせる
見事な伝記本です。

遠藤周作自身、きっと
イエスはどんな人だったのか、
つきとめておきたい、
肉薄したいという個人的な願いが
これを書かせたに違いありません。

これを読みたくなるのは、
毎回、生きる力が弱まって、
もっと自分にカツが欲しくて、
誰かから叱られたいような時です(笑)。

私が今ほんの些細なことで
腹を立てたり、混乱したりして、
手一杯になっている、、、
なのに、この本にあるイエスは
常に他人のために生きたんだ。
湖を歩いたり、
空中から食物を取り出す、
というのは、あくまで、
たとえ話であるけれど、
どんな時も他人を愛そうとして、
誤解され、苦しんだ。
それでも、愛することをやめずに
信念を貫いたんだ。
もうそれだけで十分な「奇跡」を
行なってた訳ですね。

私はクリスチャンではないですが、
この本に描かれた男について、
全面的に感動し、
手本としたいとさえ思います。

イエスを、手本に?
ふざけるな、おこがましいゾ、
神様なんだぞ、気安く言うな!
そう敬虔なクリスチャンには
叱られそうですね。

でも、この本は、まさに
イエスを、等身大に引き寄せて
くれるから、面白いんです。

そういえば、この本自体も、
出版された当時は、
堅いキリスト教団体からは、
イエスを一般人扱いし、
彼の奇跡を否定するなど、
この作者はけしからん、
と非難されたらしい。

私はこの本を読みながら、
読者として、イエスに共感し、
感情移入していきます。

まるでイエスになった目で
世の中を見ることができるような
気分にすらなります。
それが厚かましい所業だとは
十分、わかりながら。

けしからん奴だ!と
叱られそうですが。
なぜでしょうか?
この本はクセになります。
自分を信じる力が弱まると
この本を欲していきます。

これが宗教なのかしら?
これが信仰なのかしら?

だからと言って、
教会に行こうとか、
入信しようとはならないのですが、
この本を読むと、
これを書いた作者の心のうちを
強く深く感じます。
どうしてもこれを書かざるを
得なかった遠藤周作の
胸のうちをたずねたいと思うのです。

そうだ、これこそが、
第一級の本なのかもしれません。

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