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【公害小説】有吉佐和子、石牟礼道子、カーソンと言えば?

公害文学、というジャンルが
あるかもしれません。

すぐに浮かぶのは、
石牟礼道子が水俣病を
世界に問うた「苦海浄土」。
水俣にもともと住んでいた
いち主婦だった石牟礼道子さんが
自分たちの、美しかった故郷を、
チッソ工場が蝕んでいく過程を、  
当事者の目で書いた傑作は、
いくつもの目で書かれていて、
ただ単にチッソ工場を
悪しざまに書いてる訳ではない、
そこがこの本が
1969年以来、ベストセラーに
なっている理由ではないか。
水俣病になった、
石牟礼さんには故郷の知人友人や
その子供さんたちを描く。
水俣病だから描くのではなく、
その人びとたちが愛しいから
書いていくんですね。

もうひとつ、公害文学といえば、
レイチェル・カーソンの
「沈黙の春」ですね。
その原点は
「センス・オブ・ワンダー」ですが、
農薬の害悪について、
アメリカで初めて訴えた本ですね。
最初は毎年見られた蝶たちが
どうも見られない、
奇妙な春に関する疑問から
レイチェルが警鐘を鳴らす本でした。

それから。
案外、今では忘れられてる
かもしれませんが、
昭和50年、西暦1975年に発売され、
当時の日本では大きな話題を
さらった本があります。
作家・有吉佐和子「複合汚染」です。

この本には、
実力作家、有吉佐和子にしても、
当たり前にこの題材を
朝日新聞連載できた訳では
なかったようです。

それを、有吉さんが説得して、
新聞社に頼み込み、
絶対おもしろい話にするから、
と、なんとか書かせてもらった
経緯があとがきに書いてあります。

公害に本来なら警鐘を鳴らすべき
朝日新聞でも、
昭和49年、1974年頃には
まだ腰が引けてたのが分かります。

それを有吉佐和子は
小説としてもおもしろく、
同時に、現実の自然破壊の深刻さを
訴える作品にし、
連載中から話題になりました。
また政府も企業もマスコミも
公害には及び腰だった時代に。

有吉さんは、
警鐘を鳴らすだけてはなく、
おもしろい読みものとして、
書けたところが凄い力技でした。

有吉佐和子は、後に
老人性痴呆症、認知症について、
「恍惚の人」という小説を書いて、 
まだ世間が、老人ボケについて
うっすら感じてたような問題を、
彼女は大きなテーマにしました。

有吉佐和子は、数歩先を歩く、
ジャーナリズム的な発想の作家でした。

でも、私には、
有吉佐和子は35年前、
私が中学生時代でしたが、
「笑っていいとも」で
テレフォンショッキングに来て、
本来なら15分のコーナーで
1時間まるまるしゃべり倒した
大傑物という印象が大きい(笑)。

終始、タモリやさんまを圧倒し、
コーナー終了の時間になっても、
「あんた、私を帰らせる気か」と
タモリを脅し(笑)、
自分のコーナーがなくなる心配で
チョロチョロ顔を出すさんまを、
一笑であしらっていた有吉さんが
今でもよく覚えてます(笑)。

あれくらい並外れたタフさで、
自分を貫き通すような強靭な
作家でなければ、
公害小説は書けないのでしょう。

ところで、ロシアの原発事故に
迫ったノンフィクション
「チェルノブイリの祈り」。
原発事故は公害なのかどうか
分かりませんが、
この本を書いたのは
アレクシェービチさんという
ノーベル賞作家ですが、
女性でしたね。

石牟礼道子、
レイチェルカーソン、
有吉佐和子、
アレクシェービチ、
みんな女性ですね。
公に向き合い、対峙することは
男にはできないのかもしれない。
(汗)。

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