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【クリスマス】イエスは、ボランティア熱心な生身の人間!?

《今も、世界中に、小さなイエスは
きっといる。メリークリスマス!》

遠藤周作『イエスの生涯』
(新潮文庫)は、
イエスの伝記としても、
キリスト教の史実的な解説としても
非常に面白い本です。

始まりでは、誰もイエスの顔を
はっきり知る人はいないと
遠藤は切り出します。

風土や地域を考えると、
今私たちが見慣れたイエス像より、
肌が浅黒く、ホリも西洋人より
中東っぽい特徴だったなら、
もっと違ってあいたかもしれない。

みんな、イエスを本当に知り、
理解してるだろうかと突き放された 感覚に…。

私たちが抱くイエス像は、
近代西洋画に影響されたものだと
明かし、偏ったイメージから
解放してくれる。

中身ではイエス時代の社会背景に
触れ、日雇い大工のイエスが、
今で言うボランティア活動家の
ように、
苦しむ人びとを訪れ、
寄り添うように生き、
次第に為政者や権力者に睨まれ、
ユダヤ教世界で徐々に孤立し、
ローマ帝国の身内問題に巻き込まれ、
十字架に至る過程が、
ノンフィクションのように
描かれています。

しかし、作者は遠藤周作だ。
ただのルポルタージュで終わらない。

自分が信仰してきたイエスとは何か?
信じ続ける価はあるか?

自分の信仰生活の根本を問うべく
調べ尽くし、格闘し尽くした、
遠藤さんの迫力は凄まじい。

イエスは「夜回り先生」のように
周辺地域を良くしようと、
「朝昼夜ぜんぶ夜回り先生」と
なって人々のために奔走していた
社会改良活動家だったと解き明かす。
奇跡を起こす神ではなかった。

聖書の奇跡的なエピソードも
史実的な検証がなされている。

発表当時は、日本のキリスト教の
いくつかの団体から遠藤さんは、
バッシングされたらしい。
神を人間扱いするな、と。

この本は、聖書の奇跡の数々を
マユツバ物と感じる宗教嫌いな
人にこそ読んで欲しい本かも
しれません。

今日も、また世界でも、
困る人もいれば
イエスのような活動家も
色んなところで、
色んな問題や人々と共に
生きているに違いない。

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