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【大量読破】年間100冊読破は手放しで良い事か?昔は1作で一年は味がした!

私の祖母は映画『君の名は』を
たいそう好きでした。
といっても、新海誠監督の
アニメ映画ではありません。
1950年代にブームを巻き起こした
実写恋愛映画『君の名は』の方です。
シナリオは当時のヒットメーカー
脚本家、菊田一夫さん。

ただ、1950年代の
和歌山県の小さな町では、
家庭の主婦がすんなり映画を観に行ける
時代ではありませんでした。

まずは夫を、それから姑らに
許可を得なくてはなりません。
と、こう書くと、
酷い家庭だと思われるでしょう。
でも70年前の日本の地方の農村は
まだそんなレベルだったらしい。
悲しいですね。

それでも、
銭湯から人がいなくなるほど
大人気のラジオドラマの映画化、
主演は新人の岸恵子。

なんとかして観たい。
一緒に行きたい友人もいて、
話は二人の間で盛り上がる。

そこで夫や姑に
映画行ってもいいよと
言わせるため、
祖母は、娘(私の母)を連れていく
ことにしたんだそうです。
娘が見たいと行ってるから
映画館に行かせてやりたい、
でも7〜8才の娘を一人では
行かせられない、
だから、私も付き添いで行く、
という筋立てにしたらしい、(笑)。

7才の娘が悲恋映画を
見たいはずもないのですが、
この理由で行けたそうです。
娘(私の母)はちっとも観たく
なかったそうですが(笑)。

さて、凄いのはここからです。
一緒に見に行った友人が
毎週やってきては、
岸恵子のファッションが
どれが可愛かった、
相手役の森雅之はどうだったなど、
二人は観に行った映画について、
約一年はずっと夢中になって
しゃべっていたそうです。

一年に1本、多くて2本、
観られたら幸せ、
そんな時代?状況?のせいか、
または映画の隆盛期だからか?
観た映画の話をしては
一年近く盛り上がる農村の主婦。
よほど嬉しかったのでしょう。 
一年も「味」がしたんですね。
ちょっと今の映画観賞からは
想像がつきません。

この話を聞いて私は、
深く反省をしてしまいました。

毎日のように無数の、
新しい本や映画を観ては、
ちょっと感想を書いたら
また次へ次へと新しい本や映画に
うつっていく現代。

毎週話しても飽きない、
という観方とは余りに
かけ離れてしまってますね。

noteでも、
100冊200冊読みましたと、
数や種類やスピードや量を
誇るかのような読書方法が
趨勢ですが、
それは麻痺してしまってる
のかもしれません。

同じ本について、
一年間、ああだ、こうだ
ああでもない、こうでもない、
そうやって、味がしなくなるまで
噛み続ける態度も大切で
悪くないですね。

まあ、映画の生産量、
本の発行数が、今と70年前では
あまりに違うし、
ライフスタイルも全然違うし、
ヒトカラゲには比べられませんが。

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