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【夭折】芥川龍之介はやっぱり損をしている?

芥川龍之介は損をしている?

一人の作家をきちんと理解したいと
思った時は、やっぱり何冊か
中編か長編小説があると助かります。

ためしに、書店に行くと、
夏目漱石の棚には
「吾輩は猫である」
「坊っちゃん」
「坑夫」
「三四郎」
「それから」
「門」
「こころ」
「道草」
「明暗」など
10冊以上あるから、
漱石が伝えたかったことも
自ずとわかってくる気がする。

それは太宰治や谷崎潤一郎、
三島由紀夫、川端康成も
文庫で10冊、いえ15冊以上はあるから、
なんだかその世界観が分かる。

ところで、芥川龍之介の
新潮文庫は、薄い短編集が7冊。

芥川は短編の名手だったのかあ。
でも、それを全部読んでも、
なぜか人物像がいまいち、わからない。

芥川ファン、芥川マニアには
たいへん申し訳ないのですが、
こんなにミステリアスなのは、
芥川は相当のナルシストだから
ではないかしら?

太宰治は親しみやすい。
「私をわかってくれ〜」という
叫びが満ち溢れているからです。

その点、
シャイでナルシストで
ミステリアスな芥川からは、
「理解してよ〜」というような
単純な欲望は聞こえて来ない。
不思議な作家だ。

ところで、芥川龍之介が
こんなに有名で人気が高い作家に
なったのはなぜだろう?

それは、昭和10年に創設された
芥川賞の創設が原因でしょうね。

芥川龍之介は昭和2年に
この世から去りました。

友人だった作家兼
文藝春秋の創業者・菊地寛は、
芥川の名前を歴史に刻もうと
友人の名前を冠した文学賞を
たちあげたんでしょう。
ちなみに、
なぜ芥川の名前を選んだのでしょう?
芥川の風格の高さや天才性が
文学賞に有利に働くと考えたのか?
菊地寛が文学賞を作りだしたのは、
文藝春秋という会社には
大変な効果を与えていますね。

今風にいえば、菊地寛は、
ファシリテーターというか、
ベンチャー起業家だったんですね。

芥川が菊地寛の盟友でなければ、
一人のニヒルな短編作家として
名を留める作家の一人だったかも??

いや、それは違うかな。
だって、もう一つの文学賞に
名前を冠した直木三十五は、
正直、その作品は今は書店では
ほぼ見つからないという現実。
それくらいの作家ということか?

それに比べると、
やはり芥川は本質的に
優れた作家だからこそ、
もう100年近く経っても
ずっと読み続けられている訳で。

松本清張の「昭和史発掘」でも、
芥川の自殺は、当時、
一人の文学者の自殺では
おさまりきれないほど、
社会に衝撃を与えたという。

それにしても思うんです。
一作品くらいは、
太宰の「斜陽」「人間失格」位ある
中編小説を書いて欲しかったなあ。

あまりに多岐にわたる作風で
短編作品を書き続けた芥川でしたが、
生きた年月が短すぎるのか、
もう少し長生きして欲しかった。

夭折は伝説をよく生むし、
いつまでも青春くさくて
メリットは沢山あるようですが、
やはり、作風が繊細でも儚くても、
でも、でも、やっぱり、
たとえ作家であれ、芸術家であれ、
長生きして欲しかったな。

世間では自殺がまた話題ですが、
でも、人間はそもそも、
頭がいいとか、友人が多いとか、
仕事で成功するとか、
そんなことは二の次で、
長く生きることこそが、
一番大切なのかもしれませんね。

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