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【推薦作家】いま気になる女性作家は中島京子、梨木香歩、津村記久子。

女性作家で、
川上未映子さんは、
現代文学で明らかに
抜きんでた正統派天才、として
鬼才というべき存在は
多和田葉子さんでしょう。

女性作家、という括りなど
外してももちろんの
天才と鬼才だ。

一方、天才とか鬼才とか
そうした才能というより、
自らに宿る天賦をもとに
作品を表すのが、
西加奈子と村田沙耶香さん。

西さんは癌闘病の自分をも
作品化したほど、
天賦の物書きと呼べそう。

そうしたなか、
ここんところ数年、
毎回新作が気になっている
中堅の作家が3人います。

中島京子。
梨木香歩。
津村記久子。

どうも予測を超えた作品が
飛び出てくるんです。

この御三方、
ちょっと読者サイドに
すり寄ってこないんですよね。

原田ひ香さんや垣谷美雨さんは
主に主婦を主人公にしたり
定年離婚や貯金や育児をテーマに
家庭や夫婦が描かれるから、
読者も、どんなふうに期待をして
読めばいいのか分かりやすい。

ところが、
中島京子は毎回、
モチーフが大胆にかわる。
『やさしい猫』という
少し前の作品では、
不法滞在のバングラデシュ人と
その周囲の日本人たちが、
どうしたら幸せになれるのか、
難民移民の問題をめぐる
社会派でありつつ、
温かな人間ドラマでもあり、
しかもびっくりするのは
本の発刊時にはリアルで
不法滞在バングラデシュ人が
名古屋で死亡し、
連日ニュースになったこと。
連載してた時はまだ、
バングラデシュ人の問題が
顕在化していなかったこと。
日本はなかなか難民申請が
通りにくい国家であることを、
中島京子さんは
ニュースよりもずっと先に、
書こうとしていたんですね。

津村記久子さんは
『この世にたやすい仕事はない』など
昔から職場小説が多く、
テーマも生き辛さが多いのですが、
設定が、新鮮?斬新?な事が多い。
と思っていたら、
ここ数年は、職場小説ではなく、
骨太な人間ドラマの作家になった。
今年の本屋大賞で2位に
選ばれた『水車小屋のネネ』が
よかったです。
津村さんらしくないから
妙な気がしましたが。

そこへ行くと、
もともとは
『西の魔女が死んだ』など
優しい小説からキャリアを
始めていった梨木香歩さん。

梨木香歩さんは
最初は『家守綺譚』など
森羅万象をナイーブに切り取る
味わいの豊かさが売りでした。
それがここ数年近く、
硬派な人生論や
青春期にいる人たちへの
メッセージを込めた
武骨な作品が増えてきた。
『僕、そして僕たちはどう
生きるのか』など。

あれ?梨木香歩さんにいったい
何があったんだろうか?
とずっと謎に感じながら、
新作はどんな感じだろうと
毎回チェックしてしまう。

作家も人間だ。
読者への導線をサービス精神で 
きちんと敷いている作家もいれば、
作家が自分の心境でいちばん
書きたいものを書く人もいる。

上に挙げた3人は後者ですね。

読者が自分の本に
たどり着きやすくなるよう
導線や道順を知らせるタイプ。
(例えば角田光代さん?)
逆に、読者に自分からは
道順や導線を見せない作家。
(例えば水村美苗?) 

これからも、
中島京子、
梨木香歩、
津村記久子の
3人の作家がどんな道を
歩いていくのか?
注目していきたいですね。
どんな風に変わっていくのか、
気になるし、期待してるから。

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