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【翻訳】翻訳界のパイオニア・藤本和子という人がいた!

翻訳本は、翻訳家のうで次第。
この訳者が訳したのなら、
安心して読めるなあ、と
信頼できる人がいますね。

日本の翻訳家で、
そういう人の元祖は、
村岡花子さんですね。
モンゴメリ『赤毛のアン』や
ディケンズ『クリスマス・キャロル』を
日本にいち早く紹介したのは
村岡花子でした。

そういえば、村上春樹も、
特にレイモンド・カーヴァーの
訳本は、カーヴァーの作家性を
隅々まで理解した人しかできない
努力のおかげで実に読みやすい。

ずっと日本にいて、
英語も読めない私みたいな人間には
村上春樹が訳して紹介して
くれなかったら、
レイモンドを知ることなく
狭い読書人生だったのですから、
春樹には大変感謝しています。

そんな安心して信頼できる
翻訳家は、何人かいますが、
岸本佐知子や柴田元幸さん
鴻巣友季子さん、中条省平は
そんな人々ですね。

この人たちが訳して、
日本に広めようとしてるなら、
100%読んで間違いなし、です。

そんな春樹や柴田さんに
深い影響を与えた翻訳家で、
藤本和子というパイオニアがいます。

リチャード・ブローティガン
『アメリカの鱒釣り』を
1975年、日本に紹介した女性、
というのが、当時も今も、
藤本和子さんのプロフィールの
タイトルであることは間違いない。

『アメリカの鱒釣り』(新潮文庫)は
ハマる人にはハマるし、
その魅力にハマらない人も
たくさんいる、
読むのに人を選ぶ作品です。

リチャードブローティガンは
ヒッピー的な思想だとも
いわれますが、
まあ、小説なんですから、
読者が好きなようによめばいい。
と、私は思います。

ジャック・ケルアック『路上』や
アレン・ギンズバーグらと共に
自由を何よりも大切にした作家たち。
ビートニクとか言ったりも。
 
その中でブローティガンは
詩人として、幾つもの作品を書いた。
詩歌や詩的小説は、
日本語にするのが只でさえ難しい。

藤本和子さんがすごいのは、
原文の英語にこめられてる叙情を
見事に日本語に訳した、
あるいは、原文以上に
叙情をこめたと言われていることです。

私が30年以上前に、
『アメリカの鱒釣り』で
頭をビンタされたような衝撃を受け、
しばらくブローティガンばかり
読んでいたのは、もしかしたら、
ブローティガンの凄さではなく、
藤本さんの日本語の上手さのため
だったかもしれません。

藤本さんは、1939年生まれだから、
今は80代ですか。

学生時代、
私は『アメリカの鱒釣り』を持参して
小笠原島に行くフェリーに乗り、
作家志望だという中年男性と
知り合い、仲良くなりました。
それで、作家になりたいなら、
リチャード・ブローティガンくらい
読んでおいたほうがという話になり、
彼にその本をプレゼントした
記憶があります。

土木現場で真っ暗に焼け、
目はキラキラと光る、ピュアで
繊細で素朴な人でした。

彼は作家になれたんだろうか。
たぶん、作家には…
やめましょうか、野暮な話は。

それにしても、
最近、また藤本和子さんが
翻訳した本が出ました。

ブラックアフリカン文学の
トップランナーで、
ノーベル賞も受けた
トニ・モリソンが書いた
黒人同士の恋愛小説 
『タール・ベイビー』。
(ハヤカワ文庫)

翻訳が藤本さんだと知り、
即効で買いました。

彼女は、アメリカ白人の
リチャードブローティガンみたいな、
ヒッピースピリッツの小説だけでなく、
トニ・モリソンみたいな
差別に立ち向かう社会派の
どっしりした分厚い文学だって、
取り組んでいたのかあ。

藤本和子さんには、
まだまだ、貴重な小説を
紹介していって欲しいな。

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