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【戦後作家の肖像⑦】村上春樹も勧める戦後作家、安岡章太郎。

noteを続けるなら、
やはり、一つ専門分野を
持っておくのがいい。
という訳で、
最近「戦後作家の肖像」という
シリーズをちょこちょこ始めました。

まだ、これがいい企画なのか、
あまりパッとしない企画なのか、
自分ではわからないのですが、
まだ、第6回め段階で
焦っても狼狽えても仕方がない。
とりあえず続けていきますかね(笑)。

戦後作家を一人ずつ
コラムのように紹介していく、
というのが、そのスタイルです。
これまでは、
吉行淳之介、島尾敏雄、
遠藤周作らを紹介してきました。 

そろそろ取り上げるべきは、
安岡章太郎か、
小島信夫か、
古井由吉か?あたりです。

特に安岡章太郎は
本当は真っ先に書くべきくらい、
戦後作家の「顔」なんです。
村上春樹も、戦後作家では
一番小説が上手い人だと、
『若い読者のための短編小説案内』
で書いています。 
村上春樹も推薦する作家です。

ただ、私がずっとどうも
モヤモヤしているのです。
上手いなと思う小説もあれば、
微妙な小説もあるんです。
彼は感覚的な作家で、
何かしら方法論を持っていない。
わざと持たないのだろうか。
アタリハズレがあるんです。

安岡章太郎は、
リリカルな言葉使いが得意。
硬い文章で書かれてきた
戦前までの日本文学界に
爽やかな風が吹き抜けるように、
戦後、大いに脚光を浴び、
人気も出たのです。

ただ、私はこう思うんです。
もはや文学者はみなリリカルな
言葉を流暢に書く昨今では、
安岡章太郎は、
どこを、どんな風に評価
すればいいのだろうか、と。

村上春樹も巧みだと称賛する
安岡章太郎のことが
どうも、現代から見て、
上手く評価できないのです。

でも、遠藤周作や吉行淳之介と並ぶ
戦後作家の顔として、
様々な作品を著し、
数々の文学賞も受賞しています。
私が、評価できない私こそが
どうかしているのでしょう。

戦後、文壇やら読書界やらで、
また後世に村上春樹からも
称賛されている偉大な作家でも、
記事を書く人は私だ。
私が心動かされたこともないのに
世評や文学史的な知識から
記事を書くのは、
間違いだと思うんです。

では、そんなにも、
安岡章太郎は評価できない
作家なのでしょうか?

安岡章太郎は、私小説作家です。
自分を中心とした、
半径5メートル以内を
見つめ、描いてきました。

そんな視点をしっかり
キープしてきた作家が
壮大なテーマを書く時
がぜん面白くなるんです。

半径5メートルしか映らない
身近な固定カメラで、
60数年もある昭和史を、
見つめ、書いたら、
当然ですが、これが面白い。

昭和史なんて、
日本全体を見渡す視点で
客観的に書いたとしても、
それは歴史の教科書みたいな、
味のないパンフレットに
しかならないですよね。

でも、
安岡章太郎が昭和を書いた
『僕の昭和史』は
スケールのギャップがあって
ユニークで面白いんです。

でも、もう一度書きますね。
村上春樹は、
日本の戦後作家では、
安岡章太郎を一番小説がうまい
作家だと書いているんです。

日本文学について
全体的に辛口な春樹が言うんです。
入りやすい作家ではあると
思うんですよ。

私だけがどうか
してるのかもしれません。

新潮文庫では、
『海辺の光景』『質屋の女房』。
岩波文庫では、
『安岡章太郎短編集』
講談社文芸文庫
『ガラスの靴』
『僕の昭和史』
中公文庫
『戦争小説集成』などなど、
今も本屋さんに並んでいます。

村上春樹いわく、
デビュー作の短編
『ガラスの靴』が入りやすい、
そうです。

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