【作家】通俗作家って、悪口ですか?
夏目漱石はどうして、
こんなに息長く読まれているのか?
というか、
立派な文豪と称えられているのか?
ひと昔は明らかに
森鴎外より格下だったから、
この逆転劇?がよくわからない。
太宰治や三島由紀夫の本には
夏目漱石は通俗小説に過ぎない、
などと書いてある。
そっかあ。
確かに、夏目漱石は
ほとんどが、
夫婦や恋人の三角関係が
物語のキモになっている。
『こころ』『彼岸過迄』『行人』
『それから』『門』『明暗』などは
みんな三角関係で苦しむ話だ。
通俗といえば、通俗。
見方を変えれば、
普遍的といえば普遍的。
私の敬愛するある漫画家は
逆に、三島由紀夫なんて
ただの通俗でしょ?とバッサリ
おっしゃったので、
びっくりしました。
確かに、三島由紀夫も
通俗といえば通俗小説か。
特に前半の頃の実験作品は
通俗な気配だ。
と、ここでそろそろ、
私もある疑問が湧いてくる。
「通俗」ってそんなに
悪いことなのかという疑問です。
通俗でいえば、
落語や歌舞伎も通俗ではないか?
通俗を「伝統」といいかえれば
通俗はある意味、大切なことが
わかる気がするんです。
一方で、
安楽死の問題に挑んだ
森鴎外『高瀬舟』や
性生活の告白
『ウィタ・セクスアリス』は
実験的というか、
通俗とは反対の作品ですよね。
その森鴎外の非通俗性が
今の時代には、
読むには、知性を問われ、
読む人を選ぶことになってしまう。
森鴎外が、夏目漱石ほど
幅広く読まれにくいのは
通俗的ではないからでしょうか。
ちなみに、
太宰治と三島由紀夫は
どっちが通俗的でしょう?
三島かな?
いや、太宰も芥川賞欲しさに
なりふり構わぬ騒ぎを
起こした辺りはかなり俗物ですよ。
でも、通俗性は
普遍性なんですよね。
だから、通俗的だといって
批判したことにはならない気も
ありますね。
ちなみに、
通俗とは一番正反対の作家って
誰だろうか?
それはやはり、
私小説でもなく、
三角関係でもなく、
不条理でシュールな
安部公房ではないかしら?
安部公房の作品には
どれも、通俗なロマンスなんか
書かれていませんね。
そういえば、
夏目漱石と同じ慶應3年1867年に
生まれた作家に
『五重塔』幸田露伴
『金色夜叉』尾崎紅葉らがいます。
この二人とも
通俗的な作風ではありますね。
なんだか、こうたどって来ると、
だんだん、
通俗的な作品イコール、
親しみやすいベストセラー、
という風にも思えてきました。
通俗は、悪くはない、
だから、漱石は今も
読み継がれているんでしょうね。
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