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本の装丁をキラキラさせたがる編集者が「ホロPP」で特別カバーを作っちゃった話

あえて言いましょう。

キラキラは正義!

子供のころ夢中になったキラカード、永遠の輝きであるダイヤモンド、百年戦えるMSこと百式、今もなお価格が上がり続ける金・プラチナ……。
僕を魅了する物は、いつだってキラキラしていました。

古より王侯貴族が金銀財宝を追い求めていたように、キラキラする物に惹かれるのは人類の習性といえるでしょう。
キラキラする物は美しく、その輝きを見ているだけで心を奪われます。物質としての所有欲も沸き立ちます。

だったらさあ。
本もキラキラさせちゃえばいいじゃん?

はいそうなんです。
本もキラキラしちゃえばいいんですよ。そうすればもっと美しくなるし、物として持っておきたくなる。だからキラキラしちゃえばいいんですよ。
自称・キラキラ系編集者を名乗る私は、そう思ってキラキラ本計画に取り組んでまいりました。

親愛なるnote読者諸君はご存じと思いますが、私は本にやたらと箔を押したがる編集者で有名です。
さいきんは箔押しだけでは飽き足らず、アルミ蒸着でカバーも作りました。

(▼詳しくはこちらのnoteをどうぞ)

かように本をキラキラさせたがる私ですが、
このたび、新たなキラキラ本を爆誕させてしまいました。

山本幸久さんの『花屋さんが言うことには』です。

駅前のお花屋さんを舞台にした小説で、主人公の紀久子が個性豊かな同僚に囲まれながら夢を追うハートフルストーリー。満開のハッピーエンドが待ち受ける、多幸感ある物語です。

今年の3月に文庫が発売になり、その直後から絶好調。
全国各地でずーーっと売れ続け、あれよあれよという間に気づいたらなんと10刷(単行本累計8万部)のロングセラーとなりました。
ひとえに素晴らしい物語を書いてくれた山本さんと、応援してくれる書店員さんと、買って応援してくれた読者の皆様のおかげで、心から感謝しております。

10刷というのはなかなか頑張った数字で、たくさんの方々の協力がないと達成できない節目です。これはぜひお祝いしようではないかと営業と話し合い、こんな案が出ました。

「記念の特別カバーを作りますか?」

そりゃもうさ。
キラキラ系編集者としては、キラキラさせるしかないじゃないですか!

とまあそんな経緯で爆誕したのが、このカバーです。

はい、どーん!

キラキラバージョンカバー。正確には全面帯です

キラキラと小さな輝きを纏うカバー。よく見ると星屑のような細かい光だけでなく、星形の光も混じっています。
写真だと分かりにくいですが、陽光に当てると、角度によって虹色に輝きを変え、ぴかりぴかりと上品な輝きを放つのです。
もーほんっとにね、めっちゃ美しい!

これ、ホログラムPP加工を施したカバーなんです。

PP加工とは用紙の表面をフィルムでコーティングする加工の一種
本のカバーの表面ってツルツルしてビニールっぽかったりするじゃないですか。あれもPP加工なんですよ。
ちなみにザラザラして光が反射しないカバーもありますが、あれはマットPP加工で、ツルツルしているのがグロスPP加工ですね。

そのPP加工の一つがホログラムPP加工で、名前の通り、ホログラムのようなフィルムでコーティングしているので、写真のようにキラキラと輝くわけですね。

ホロPPにはいろいろあって、種類によってホログラムの柄が違います。
今回使ったのは、細かく光るパターンですが、渦を巻くものやガラスの欠片のようなものもあります。

編集担当した凪良ゆうさんの『わたしの美しい庭』という文庫もホロPP加工をしていて、こちらはガラスのようにピカピカ輝きます。

これもホロPP加工です。ガラスの欠片のような輝きが特徴

ちなみにホロPP感がうまく伝わるように露光量を調整してたら、いい感じの写真ができました。

天の川のように光ってる!

ホロPPとはカバー全体に行う加工なので、表紙だけでなく裏面にも加工がなされます。
だから裏面もピッカピカ!

そして今回は10刷お祝いカバーなので、特別にお花のデザインもあしらっています。
これめっちゃかわいくないですか……?

裏面には作中に出てくるお花のあしらい。かわいい

特別カバーのこだわりポイントをもう一つご紹介しておくと、カバー袖の部分。
三角マークの中にお花マークが入っていますよね。
これ、普段のポプラ文庫と違うマークなんです。

通常はポプラ文庫の公式ロゴであるポプラマーク(通称・ワラビマーク)が入っているのですが、今回は全面カバーですし特別感を出すために特製マークに変えてもらいました。
レアなマークということで、チョコボールの金のエンゼルのように受け取っていただければ幸いです。

左上のマークがお花

というわけで、ここまで自慢してきたキラキラのホロPPカバー、めちゃくちゃ素敵じゃないですか?  家の本棚に飾りたくありませんか?
ぜひ週末に本屋さんに行って、実物を見てみてください。きっとキラキラに魅せられて、お迎えしたくなるはず。

僕の持論としてよく言うのですが、本への興味の持ち方はどこが入口でもいいと思います。
「好きな人が読んでた本だから気になった」でいいし、「かしこそうに見えるから」でもいいし、「キラキラしててかわいいから気になる」でもいいんです。

本……とりわけ紙の本のよさは物質性にあって、「かわいい雑貨」として楽しむ本があっていいはずです。
そこに寄与する要素の一つが「輝き」だと思っているので、読書の入口を増やすために、箔押しやPP加工などのキラキラ加工をやり続けています(いや趣味だけどさ! 趣味だけじゃないんだよ! ほんとだよ!)

「キラキラしていて綺麗から家に持って帰りたい」という気持ちが、一つの購入動機になるように。そして本への入口を増やして、一人でも多くの本好きが増えるように。

今回の『花屋さんが言うことには』のホロPPカバーが少しでも貢献できればうれしいなと思っております。

キラキラ系編集者の、次のキラキラ本にご期待ください。

※ホロPPカバー版は、お店によって置いているところと置いていないところがあります。どうしても欲しい方は、事前に本屋さんにお問い合わせくださいませ。
また、アマゾンなどのネット書店はホロPP版が届くかわからないので、確実に入手したい方はリアル書店での購入をお勧めいたします。

ホロPPカバー2冊セット。どっちもお花だ!

★★★

<最近読んだ本>
くどうれいん『うたうおばけ
ときどき、なんでもないエッセイを読みたくなる。誰かのくすりと笑える日常や、ちょっとした悲しみごとに共感し、みんな色々ありながら生きてるんだなあ……と感じたくなる。 そんな時にぴったりな一冊。暮らしの息遣いがしんしんと伝わる。


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森潤也|文芸編集者
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