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【131.水曜映画れびゅ~】『ほかげ』~反戦映画とは…~

『ほかげ』は、11月25日から順次全国公開されている作品。

『野火』(2014)で知られる塚本晋也が監督を務め、趣里や森山未來が出演しています。

あらすじ

女は、 半焼けになった小さな居酒屋で1人暮らしている。体を売ることを斡旋され、戦争の絶望から抗うこともできずにその日を過ごしていた。空襲で家族をなくした子供がいる。 闇市で食べ物を盗んで暮らしていたが、ある日盗みに入った居酒屋の女を目にしてそこに入り浸るようになり…。

公式サイトより一部抜粋

戦後の混乱のなか…

戦後の混乱のなか、少年は1人だった。そんな少年は、生きるために盗みを働き続けていた。

ある日、少年は居酒屋に盗みに入った。そこには、1人の女が寝ているだけであった。その女は売り・・をしていた。

また別の日に、その居酒屋に入る。大きな瓜を持ってきて、「これは金より価値があるだろ?」と女に言った。しかし女は、少年を突き返そうとする。その時、1人の兵士がやってくる。前日に女を買いに来て、結局手を出さなかった男だ。

女は男の顔を見ると、少年とともに家に入れる。その日から、少年は男とともに、毎晩女の居酒屋に足を運ぶようになる。

反戦映画とは…

私には、あまり好きになれない映画があります。『永遠の0』(2013)や『ラーゲリより愛を込めて』(2022)といった戦争映画です。

それは、別に戦争映画というジャンルはあまり好きではないわけではありません。そうではなく、上記の2作のような作風が好きにはれないのです。

つまりどういうことかと言うと、戦争という題材を感動のメロドラマ的に描かれていることが気に喰わないのです。

正直言って、戦争に悲しみが伴うのは当然のことです。人が死ぬのですから、悲しいに決まっています。でも「悲しい」「感動した」という感想で片付けてしまえるような涙活るいかつの道具となる作品は、戦争映画だとしても反戦映画ではないと思ってしまいます。

では反戦映画は、悲しみ以外にどんな感情を掻き立てる必要があるのでしょうか?

私は、"怒り"ではないかと思います。

「なんでこんな理不尽が許されるのか?」

「なぜ、殺し合わなければいけないのか?」

「なんて命が軽く使われているんだ!?」

そんな怒りが沸き上がり、映画を観終わった後に「戦争なんて絶対に許されることではない」と声を上げたくなるくらい反戦意識を植え付けさせる作品。それこそ、反戦映画なのではないかと思います。

そして本作は、まさに反戦映画でした。

戦後の混乱のなかで1人になった少年に、誰も手助けしようとしない。売り・・をすることで生きていく女に、誰も「そんなことやめろ」と言わない。戦争の影響で悪夢にうなされる男を、誰も止めようとしない…。

戦争に人生を狂わされた人間がまざまざと描かれ、そんな戦後の情景に怒りが沸々と沸き上がってきました。

趣里×森山未來×…

そんな本作では、キーパーソンが3人にいます。

1人目は、居酒屋の女を演じた趣里。現在、朝の連続テレビ小説『ブギウギ』でヒロインを演じている彼女ですが、本作では毎朝見る溌剌はつらつとした姿はありません。ただただ暗く、人生に絶望して戦後を生きる女の姿がそこにはありました。

2人目は、森山未來。演じたのは、戦争でトラウマを抱え、ある目的のために放浪する男。若手の頃から、一癖ある役を演じ続けた森山未來にしかできない強烈な演技は、圧巻でした。

そして最後の1人は、塚尾桜雅おうが。物語の中心となる少年を演じました。劇中でのセリフは多くないながら、何より印象だったのが"目"。真っ黒な瞳で見つめるのは、戦後という時代に苦しみ人々の姿でした。

・・・

今回の記事で色々と書きましたが、あくまで私個人の考えですので、どうかご容赦ください。ただ最も伝えたかったことは、今回紹介した『ほかげ』は素晴らしい作品であるいうことです。ぜひとも機会があれば、一度ご覧になってください


前回記事と、次回記事

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次回の更新では、今年のカンヌ国際映画祭で役所広司が男優賞を獲得した『PERFECT DAYS』を紹介させていただきます。

お楽しみに!


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