【99.水曜映画れびゅ~】『ちひろさん』~難しいことを考えなくてもいい~
『ちひろさん』は、今年2月よりNetflixにて配信されている映画。
今泉力哉監督、有村架純主演の作品です。
あらすじ
不思議な魅力の"ちひろさん"
街の弁当屋で売り子をする元風俗嬢の女性ちひろ。
誰にでも分け隔てなく接し、気ままに生きるちひろさんには不思議な”人としてが魅力"があり、引き寄せられるように悩みを抱える人々が彼女のもとに集まる。
友達や家族との関係に、どこか息苦しさを覚える女子高生オカジ
シングルマザー家庭で育つクソガキのマコト
不登校のオタク女子べっちん
男に逃げられた元同僚のバジル
などなど…
そんな人々に何も疑いも持たず、ただただ純粋に人と人との繋がりを紡いでいく、ちひろさんの優しい物語。
心に沁みる言葉の数々
この作品の原作は、安田弘之の同名漫画。
それを『愛がなんだ』(2019)や『街の上で』(2021)、『窓辺にて』(2022)で知られる今泉力哉監督で映像化されたのが本作になります。
主演を務めた有村架純演じるちひろさんは、どんな角度から見ても魅了される、不思議な魅力を持った女性。
元風俗嬢という背景を隠すこともなく、自由気ままに心を誰にでも開く女性。そしてどこかエロスも感じさせるその佇まいに、観ている側もメロメロになってしまいました(笑)。
そしてそんな彼女から悩みを抱える人々にかけられる、優しい言葉の一つひとつが、私の心に温かく癒しを与えてくれました。
難しいことを考えず、変な偏見に囚われず、純粋に自分の感じたことを信じて生きてみるのもいいなって、ちひろさんの言葉から思ってみたりもしました。
自然と浮かんでくるもんだ
そんな本作で、一番私の心に沁みたセリフは、ちひろさんの言葉ではなく、リリー・フランキー演じるちひろが働いていた風俗店の元店長のこちらの言葉。
いつも楽しく気ままに生きているように見えて、ちひろにも傷つくことがありました。そんな時は部屋に籠り、夜になっても電気を点けず、じーっと横になっていました。
そんな時に掛かってきた店長からの、飲みへの誘いの電話。
ちひろは「今、沈んでいるから無理」と断ります。
それを受けて店長がちひろに掛けたのが、上の言葉。
誰だってしんどい時はある
誰の人生だって山もあれば谷もある
そんなしんどい時は、無理に自分を変えようとしなくてもいい。じっくり時間をかけて傷を癒していれば、いつかまた浮かんでくることができるんだよ。
そんな感じに、自分自身にも語りかけてくれているようなこの言葉に、優しく背中をさすられたような気がしました。
そんな温かい人の支えもあるから、ちひろさんも他の人を温かく包み込むことができる。
そんな温かい癒しを与えてくれた本作を通じて、私も『ちひろさん』に出てくる温かな人になってみたいなって思いました。
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次回の更新では、黒澤明の名作『生きる』(1952)をノーベル賞作家カズオ・イシグロの手で脚色して再映画化がした作品"LIVING"を紹介させていただきます。
お楽しみに!