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【99.水曜映画れびゅ~】『ちひろさん』~難しいことを考えなくてもいい~

『ちひろさん』は、今年2月よりNetflixにて配信されている映画。

今泉力哉監督、有村架純主演の作品です。

あらすじ

ちひろは、風俗嬢の仕事を辞めて、今は海辺の小さな街にあるお弁当屋さんで働いている。元・風俗嬢であることを隠そうとせず、ひょうひょうと生きるちひろ。彼女は、自分のことを色目で見る若い男たちも、ホームレスのおじいさんも、子どもも動物も・・・誰に対しても分け隔てなく接する。
そんなちひろの元に吸い寄せられるかのように集まる人々。彼らは皆、それぞれに孤独を抱えている。厳格な家族に息苦しさを覚え、学校の友達とも隔たりを感じる女子高生・オカジ。シングルマザーの元で、母親の愛情に飢える小学生・マコト。父親との確執を抱え続け、過去の父子関係に苦悩する青年・谷口。ちひろは、そんな彼らとご飯を食べ、言葉をかけ、それぞれがそれぞれの孤独と向き合い前に進んで行けるよう、時に優しく、時に強く、背中を押していく。
そしてちひろ自身も、幼い頃の家族との関係から、孤独を抱えたまま生きている。母親の死、勤務していた風俗店の元店長・内海との再会、入院している弁当屋の店長の妻・多恵との交流・・・揺れ動く日々の中、この街での出会いを通して、ちひろもまた、自らの孤独と向き合い、少しずつ変わっていく。
これは、軽やかに、心のままに生きるちひろと、ちひろと出会う人々―彼らの孤独と癒しの小さな物語。

公式サイトより一部改編

不思議な魅力の"ちひろさん"

街の弁当屋で売り子をする元風俗嬢の女性ちひろ

誰にでも分け隔てなく接し、気ままに生きるちひろさん・・・・・には不思議な”人としてが魅力"があり、引き寄せられるように悩みを抱える人々が彼女のもとに集まる。

友達や家族との関係に、どこか息苦しさを覚える女子高生オカジ

シングルマザー家庭で育つクソガキのマコト

不登校のオタク女子べっちん

男に逃げられた元同僚のバジル

などなど…

そんな人々に何も疑いも持たず、ただただ純粋に人と人との繋がりを紡いでいく、ちひろさんの優しい物語。

心にみる言葉の数々

この作品の原作は、安田弘之の同名漫画。

それを『愛がなんだ』(2019)や『街の上で』(2021)『窓辺にて』(2022)で知られる今泉力哉監督で映像化されたのが本作になります。

主演を務めた有村架純演じるちひろさん・・・・・は、どんな角度から見ても魅了される、不思議な魅力を持った女性。

元風俗嬢という背景を隠すこともなく、自由気ままに心を誰にでも開く女性。そしてどこかエロスも感じさせるそのたたずまいに、観ている側もメロメロになってしまいました(笑)。

そしてそんな彼女から悩みを抱える人々にかけられる、優しい言葉の一つひとつが、私の心に温かく癒しを与えてくれました。

「(名前とか年齢とか関係なく)その人がどういう人かは、目を見ればわかるよ

「みんなで食べたほうがおいしいってよく言うけどさ、みんなで食べてもおいしくないものはあるし、1人で食べてもおいしいもんはおいしいよ

「ああ、この人は私と同じ星なんだって思った」

難しいことを考えず、変な偏見に囚われず、純粋に自分の感じたことを信じて生きてみるのもいいなって、ちひろさんの言葉から思ってみたりもしました。

自然と浮かんでくるもんだ

そんな本作で、一番私の心に沁みたセリフは、ちひろさんの言葉ではなく、リリー・フランキー演じるちひろが働いていた風俗店の元店長のこちらの言葉。

人の体は浮くようにできてっから。(中略)もがかなければ浮かぶんだよ。ジタバタするから沈むんだって

いつも楽しく気ままに生きているように見えて、ちひろにも傷つくことがありました。そんな時は部屋に籠り、夜になっても電気を点けず、じーっと横になっていました。

そんな時に掛かってきた店長からの、飲みへの誘いの電話。
ちひろは「今、沈んでいるから無理」と断ります。

それを受けて店長がちひろに掛けたのが、上の言葉。

誰だってしんどい時はある

誰の人生だって山もあれば谷もある

そんなしんどい時は、無理に自分を変えようとしなくてもいい。じっくり時間をかけて傷を癒していれば、いつかまた浮かんでくることができるんだよ。

そんな感じに、自分自身にも語りかけてくれているようなこの言葉に、優しく背中をさすられたような気がしました。

そんな温かい人の支えもあるから、ちひろさんも他の人を温かく包み込むことができる。

そんな温かい癒しを与えてくれた本作を通じて、私も『ちひろさん』に出てくる温かな人になってみたいなって思いました。


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次回の更新では、黒澤明の名作『生きる』(1952)をノーベル賞作家カズオ・イシグロの手で脚色して再映画化がした作品"LIVING"生きる LIVINGを紹介させていただきます。

お楽しみに!