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【24.水曜映画れびゅ~】『街の上で』~美しき「意味のないダイアローグ」~

『街の上で』は『アイネクライネナハトムジーク』(2019)や『his』(2020)の今泉力哉監督の最新作で、現在公開中です。

noteでいろんな方がオススメしていたので、気になって先日観てきました。

あらすじ

下北沢の古着屋で働いている荒川青。青は基本的にひとりで行動している。たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。口数が多くもなく、少なくもなく。ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。事足りてしまうから。そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することにするまでの流れと、出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。

(『街の上で』公式サイトより)

「意味のないダイアローグ」

意味のないダイアローグ:
物語の本筋とはあまり関係のない会話が劇中で繰り広げられること

「意味のないダイアローグ」は、クエンティン・タランティーノがよく用いている手法としても知られ、『レザボア・ドッグス』(1992)の「チップを払うかどうか」のやりとり『パルプ・フィクション』(1994)の「パリでクォーター・パウンダー・チーズバーガーを何ていうか」といった会話のシーンが有名ですね。

そんな「意味のないダイアローグ」ですが、本作『街の上で』ではそれが延々と繰り広げられます。

「漫画に出てくる背景が下北沢なのか新宿なのか」という会話や「ヴィム・ヴェンダースの作品の邦題が『アメリカの友達』じゃなくて『アメリカの友人』である」というような話が物語の随所に出てきて、それがまたどれも笑える内容でありながら、いかにもありそうなリアルな会話なので本当に面白かったです。

しかも一見関係ないように思えてジワジワっと後からその会話の余韻も感じるように物語が仕組まれていて、なんというか「参りました」って言いたくなるくらい素晴らしかったです。

こういうのを「美しい脚本」っていうのかな、と思いました。

定点固定の長回し

脚本に加えて、その会話にリアルさを演出しているのが「動かないカメラワーク」だと思いました。

本作では本当にカメラが動かず、基本的にワンシーンずっと同じ画角で出演者の会話を撮っています。そういったシーンではBGMも一切ないので、その会話がされている場面に第三者として自分が立ち会っていると錯覚するくらいリアルな雰囲気を感じました。

そのワンシーンワンシーンが結構な長さで「これどこで編集切っているんだろう」と見ながら思いました。

多分、全部長回しで一発撮りスタイルだったんだろうなと思います。

納得の面白さ

とりあえず、本当に面白かったですね。

行きつけのミニシアターの予告編でしきりと流れていたので気にはなっていたのですが、正直「なんかよくある恋愛ものかな」と思っちゃって足が遠のいていました。

結果的にnoteの記事に触発される形で、観に行って正解でした。

noteに感謝!

綺麗な女性の方々がいっぱい出てきますが、恋愛ものの映画って感じではなかったですし(笑)

4月に公開されてそろそろ劇場公開も終盤に差し掛かっていますので、まだご覧になってない方にはぜひ見に行っていただきたいです!


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

次回の記事では、西川美和監督作品『永い言い訳』(2016年)について語っています。