小説「素ナイパー」第18話
真夜中のウオール街には、東京の新橋にいるようなサラリーマンの姿はない。
人の気配の感じられないビジネス街は摩天楼に吹き付けられ呼応する風の音のせいでまるで「オープンユアアイズ」の主人公が迷い込んだ誰一人として存在しない夢の中のような雰囲気を漂わせていた。
ウオールストリート沿いにあるニューヨーク銀行の目の前に止まったイエローキャブの中に直哉はいた。
しかし客として後部座席に座っているのではない。防犯ガラスの前の運転席にそれらしく新聞とコーヒーを片手に運転手として待機し