名画の謎 ギリシャ神話編 ③アポロン編&その他の神々編
本一冊の感想ブログを小分け?と思いますが、それほどの傑作と思える作品です!!神話の原点とも言われるギリシャ神話を題材とした名画を背景を含めて面白く説明してくれている「名画の謎」。この一冊で、絵画、歴史、神話、天文学、そして旅と楽しめる一石二鳥ならぬ一石五鳥の本です。
それにしても本一冊で感想長すぎるだろ!!とも思いますので、今回は気になる物語を抜粋として、最後としたいと思います。
アポロンの章
ゼウスの息子であり、オリュンポス十二神の一柱。詩歌や音楽などの芸能・芸術の神として名高いが、羊飼いの守護神にして光明の神でもあります。頑強な城壁を素手で軽々と打ち砕いて崩壊させたことから、ボクシングを創始した神としても知られております。
そして、このアポロンもゼウスの子供だけあり色恋の逸話が多い!!!
今回も、神話を基にされた絵画がいくつか出てきますのでご紹介したいと思います。
そうそう・・
前回ヴィーナスの章「ヴィーナスのあっけらかん」で紹介した絵画のネタ
「鍛冶の神ウルカヌス(ヘパイストス)」が妻であるヴィーナス(アフロディーテ)と愛人マルス(アレス)の浮気現場を公開した際には、他の神々が笑いを堪えていたにも関わらずアポロンの茶化しによって一同が大笑いしてしまったと言われております(笑)
笑いを取るとは、正に芸能の神!!エンターテイナーですね!!!
ちなみに
アメリカの有人宇宙飛行計画「アポロ計画」は神話のアポロンが計画名の由来です。
恋人を死なせて
ザ・ボーイズラブ(笑)アポロンとヒュアキントスの悲劇のシーンが描かれてます。
この物語がユリ科の多年草である「ヒアシンス」の由来となっているので、ギリシャ神話凄いと感心します。
光明の神から太陽神とも言われるアポロンと西風の神ゼフィロスが愛したヒュアキントス。
ヒュアキントスとアポロンが楽しそうに円盤投げをしている姿を見たゼフィロスは嫉妬し、風を吹かせてアポロンの投げた円盤がヒュアキントスに命中して亡くなる悲しい物語・・・
この時に流れ出た血から花が咲いたため「ヒアシンス」と名付けられたというシーン。
この1枚の絵画に、この物語が詰まっております。
中野京子さんに学びました。この赤いマフラーがはためいているのは・・・
「西風」
ゼフィロス!!!
出演していないのに名脇役となっているのがわかります。
この作品を描いたのはジャン・ブロック
この作品でだけ名を残したそうです。
もっと描けそうな人だと思いますが、いつの世も芸術は難しい世界なんだろうなぁ~としみじみ・・・
同じ題材で、もう一作品が紹介されております。
ジョヴァンニ・バティスタ・ティエポロ
イタリア・ロココ最大の画家だそうで比較して楽しく学ばせていただきました。
足元にヒアシンスが描かれているところがアクセントですね。
しかし、一つの物語でこうも捉え方、表現の仕方が違うとは驚きですね。
個人的にはここで紹介された一説の逸話に共感
ギリシャ神話や日本神話は通づるものがあると思っているので、その切口が中野京子さんの本に書いてあるのに嬉しく思った話でした。
親の心、子知らず
激しさが伝わってくる、躍動感のある絵画ですが、それもそのはずパニック中を描いた作品です。
この段落では2作品が紹介されておりますが、題名通り「親の心、子知らず」の作品です。
中野京子さん、よく見つけてきましたと感心(笑)
この作品は
「パエトンの墜落」
ピーテル・パウル・ルーベンス
パエトンはアポロンの子供。
パエトンは願う、アポロンが天翔ける馬車、あの火を吐く飛馬が引く馬車を一日借りたいと・・・
なぜお願いを聞いたのかアポロン・・・
案の定、飛馬を御することができず暴走。大地が焼けていき、エチオピア人の肌が黒くなり、焼け野原からサハラ砂漠ができるという大惨事
ゼウスが雷を投げつけて止める!!
このシーンが描かれているので、パニック真っただ中が伝わってきます。
この一枚でここまでの内容が伝わってくる表現力にベテラン感漂わせておりますが、この時の画家は28歳だそうです!!!
それも衝撃を受けた説明で、印象深い一枚となりました。
ピーテル・パウル・ルーベンスとは
バロック期のフランドルの画家。祭壇画、肖像画、風景画、神話画や寓意画も含む歴史画など、様々なジャンルの絵画作品を残した。
また、七ヶ国語を話し、外交官としても活躍してスペイン王フェリペ4世とイングランド王チャールズ1世からナイト爵位を受けている人物。
『フランダースの犬』において、主人公のネロが見たがっていたアントウェルペン大聖堂の絵画である『キリスト昇架』と『キリスト降架』の作者はルーベンスで、ネロが祈りを捧げていたアントウェルペン大聖堂のマリアも、ルーベンスが描いた『聖母被昇天』だそうです。
そして、もう一枚
伝ピーテル・ブリューゲル
「イカロス墜落のある風景」
「イカロスの翼」のお話はご存知でしょうか?
父:天才発明家ダイダロス、その子イカロスが、閉じ込められた塔から翼を発明して脱出する。
父は子に
「イカロスよ。必ず中空を飛ぶのだぞ。
低すぎると海の水しぶきで羽が重くなる。
高く飛ぶと、太陽の熱でロウが溶けてしまう。
まぁ、私についてくれば安心だ」
と「太陽に近づかない」ように注意するが、飛ぶことで神に近づいたと感じたイカロスは、高く、もっと高くと太陽に近づき、羽をのロウが溶けてしまい墜落するお話。
しばしば「うまくいっても調子に乗るな」や「身の程をわきまえろ」との教訓で伝えられたり、「命を賭して高みを目指し続ける者」と表現される神話でもあります。
ブリューゲルは、イカロスにフォーカスするのではなく、全体を捉える描写に仕上げています。
近年では、本人作ではなく、工房作と言われているそうです。
スペイン・ハプスブルク家の体制批判を、神話画を使って表現したのでは?との見解に、芸術の奥深さを感じた作品でした。
ベルギー王立美術館蔵・・・ベルギー遠いな・・・見てみたいですが・・・
神々の章
ここでは、その他の神々にまつわる絵画が紹介されております。
その他の神々と言っても数は多いので、本で紹介されているものも一部です。
そして、今回僕が紹介するのは、その中の1作品のみ・・・
皆さんも芸術の旅を、ご自身で楽しんでみてください。
僕が紹介する最後の作品は
フランシスコ・デ・ゴヤ
「運命の女神たち」
ゴヤはスペイン最大の画家の1人と言われている人物。
「裸のマハ」、「着衣のマハ」の絵画が有名な画家ですが、今回の悪魔的に描かれている三女神は印象的でした。
マハ作品は美しい女性なのに・・・三女神は魔女ではないか?!
運命の三姉妹は、上から順に、アトロポス、ラケシス、クロト。
彼女たちが分業制で運命を決めるそうです。
クロトが命の糸を紡ぎ(生き方でしょうか)、ラケシスが糸の長さを測り(寿命でしょうか)、アトロポスが最後にハサミで糸を切る・・・死神?
なるほど・・・
悪魔的な印象を受けたのはあながち間違いではなかったようです。
僕は、日本で開催された「ゴヤ展」を見に行った時に実物を見た・・・気が・・・記憶が定かではないですが、ゴヤの「黒い絵」と呼ばれる作品たち(運命の女神たちもその一つ)は、何とも言えない作風と印象深かった記憶だけは鮮明に残っております(笑)
中野京子さんの「名画の謎」には、今回ご紹介した絵画、紹介できなかった絵画だけでなく、画家の話や作品のネタ等の背景などが詳細に書かれ、楽しく読める本となっております。
是非、芸術への一歩を踏み出すのにお試しください。
最後に
主に日本史の本が好きな僕ですが、思わず絵画の勉強として手にした一冊の本が運命的な出会いで絵画好きとさせていただいた本です。10年ほど前に読んだ本を読み返して感想文としております。10年分の思いがあるのか本一冊で長い感想文となりましたが、今回でいよいよギリシャ神話編が完結です(あとシリーズは3冊ありますけどね(笑))。この本は絵画だけでなく、歴史、神話、天文学、そして旅のお供と一石二鳥ならぬ一石五鳥となる本ですので、おすすめの一冊となります。
また、僕は日本史好きから、温泉旅行記と合わせたブログも書いております。お時間がありましたら、こちらもお読みいただければと思います。
今後も、自称:後藤又兵衛の末裔の後藤純を、よろしくお願いいたします。
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