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超短編SF小説

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雑多なSuper Short Short小説置き場。ジャンルはSF(すこしふしぎ)。文字数は1,000字前後。サクッと読んでみてください。
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目覚まし時計

目覚まし時計

……ジリリリリリ!!!!!

けたたましいベルの音で叩き起される朝は、いくつになっても憂鬱だ。

出発時刻から逆算してかけた目覚まし時計は、寸分違わぬ時刻にオレの脳を爆音で揺さぶる。仕方なしに身体を起こし、枕元の音源に触れれば、ようやく耳をつんざくような音は静かになる。
目覚めきらぬ身体をベッドから引き剥がして、緩慢な動作で着替えを終え、そのまま洗顔と歯磨きの為にキッチンへ。狭い都会のワンルーム、

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七夕の夜に

七夕の夜に

「見えないね」

「仕方無いよ、梅雨だからね」

今年も、七夕に天の河を見ることは叶わなかった。今年は、君と見る最後のチャンスだったのに。わたしは、何度も口の中で「仕方無い」を繰り返す。君は今にも雨の降りそうな匂いの空気をめいっぱい吸い込んで、そして大きく吐き出す。

「帰る?も少し粘る?」

君だって無理だと思ってるだろうに、ニコニコ笑いながらわたしを振り返る。

……本当に今年で最後だというの

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