シェア
June
2021年5月26日 15:25
豪奢なオペラ座舞台の上でライトを浴びて輝いている、一人のダンサー。輝きの頂点で、少しずつ内包していたものが、兆してくる。複雑で繊細な、内に抱えているものが崩れていく。表面はとても順調で輝かしい。太陽の王のように、一点のくもりもない完璧さ。一つ一つが完璧で、破格で、前代未聞だった。才能豊かな問題児。彼が皆の前で踊れば踊るほど、歓声と狂喜、陶酔が、美しい星空のとばりのよ
2021年5月15日 01:54
己のことを小説に書き始めた彼のことを、周囲は彼の文学の敗北、挫折ととらえた。しかし、彼自身はそう思っていなかった。 文壇から高く評価され、短編の名手とさえ呼ばれた彼には、もう何も残っていないのを自分では知っていたから。 当時文壇の大御所であった大作家から、処女作が高く評価され、デビュー。華々しいデビュー。作家として知れわたった彼の名。 しかし、いつしか、寄木細工を作り上げるように精緻な