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意味のない写真

フィルムの値段がどんどん高くなっている。

先日そんなことをカメラを持たない友人の家で話していた。友人の子供の写真を何枚か撮りその中の1枚がこの写真だった。

撮った写真を送ると子供の写真を気に入ってくれたようで喜んでいた。

ただこの写真を見て「フィルムで洗濯物を撮ったの?もったいない笑」と言われたので

「それがいいんだよ。この服は来年には着てないんだから」と一言だけ伝えると「なるほど。そういうことか」と友人は同じように一言だけ返事を返してきた。

赤の他人にこの1枚の写真だけを見せたならば同じようにただの洗濯物であり、なんだこの写真。と思うだろう。
でもこの1枚は友人の家族や子供にとっては1年後、5年後、10年後、30年後と時が経つにつれて意味が生まれこの写真を見る人の気持ちに寄り添っていく写真だと思っている。

なにもこの写真を撮っているときに30年後の友人や子供が見たら喜ぶだろうなんてことは微塵も考えていない。昼下がりのベランダに目をやると子供の洗濯物に良い光が差していて今この瞬間にしかない時間が流れているなあと思ったから素直にシャッターを切っただけ。

意味のある写真、意味のない写真というのは白黒はっきりできるわけもなく、見る人や時を刻むことによって写真が変わっていくのも写真の魅力の一つではないだろうか。

意味のない写真。

それでもいいじゃないか。




石橋純

東京を拠点に世界を飛び回り、様々な国や地域の自然に触れながら登山活動をする写真家。 山岳写真をはじめ東京・南青山にあるジャズクラブ BLUE NOTE TOKYO では国内外のトップアーティストを撮影し、雑誌やアルバムジャケットなどの撮影やコラム執筆など幅広い仕事を行っている。
またユネスコの無形文化遺産であるブラジルの伝統芸能「カポエイラ」を25年間学び、LAを本部に置くCapoeira Batuque Japão Batuque カポエイラバトゥーキではContra Mestre(副師範) の位を持つ。15年以上子供から大人までを教えながらTVやCM、アーティストのMVや広告などでカポエイラの監修や指導をしながら自身もパフォーマー兼モデルとして活動する。2022年に写真集「Life is Fleeting」を刊行。

Jun Ishibashi is a Tokyo-based photographer. He travels around the globe, engaging in mountaineering and other nature-related activities. His wide range of work includes writing columns and photographing mountains, fashion, album covers, and top artists worldwide̶including ones in Japan’s BLUE NOTE TOKYO, a famous jazz club in Tokyo. He also studied Capoeira for 24 years, a traditional Brazilian art form that is listed in UNESCO’s Intangible Cultural Heritage. As a certified Contra Mestre in the LA- based group Capoeira Batuque, he has been teaching people of all ages for over 15 years. Furthermore, he is a performer and model, supervising and teaching Capoeira on TV, such as in commercials, music videos, and advertisements for artists.

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