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【ポスト・パンク世代】有識者が選ぶ80年代ロックの名盤ベスト100

この名盤100選は、ミュージシャン、音楽評論家など識者43人が「80年代の名盤ベスト100」を選んだもので、1992年に宝島社の「Parade」誌が発表したものです。今回は上位30位まで。

解説は橘が書きました。
ここに挙げられたアルバムは全て持っているので、何度も聴きこんでいます。

🥇1位 PIL 「フラワーズ・オブ・ロマンス」


PIL - Flowers of Romance: このアルバムは、ポストパンクの代表的なバンドであるPILの3枚目のアルバムです。このアルバムは、前作のダブ・ミックスに続くもので、ジョン・ライドンがボーカルを務めています。このアルバムは、前作とは異なり、より実験的で、リズムやメロディーが複雑であることが特徴です。ベースのジャー・ウォブルが脱退したため、そのままベースレスでの録音となり、ジョンとギタリストのキース・レヴィンの二人体制での製作が行われました。歌詞はセックス・ピストルズ時代からの近代詩から現代詩に移行しており、ジョン・レノンと並ぶ、社会派ロック詩人ジョン・ライドンの研ぎ澄まされた感性が高く評価されています。PILの作品は本国イギリスや他国よりも日本でのセールスのほうが高く、これをジョンは「日本人は新しい音楽に対する受容力がある」と感謝していました。


🥈2位 ジョイ・ディヴィジョン「クローサー」


Joy Division - Closer: このアルバムは、イギリスのポストパンクバンドであるJoy Divisionの2枚目のアルバムです。バンドのリードボーカリストであるイアン・カーティスが亡くなった後にリリースされました。バンドの初期の作品と比較して、よりダークで、より実験的であることが特徴です。


🥉3位 パブリック・エナミー 「パブリック・エナミーⅡ」


Public Enemy - It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back: このアルバムは、アメリカのヒップホップグループであるPublic Enemyの2枚目のアルバムです。政治的なメッセージを持つ歌詞と、革新的なプロダクションで知られています。ヒップホップの歴史において、最も重要なアルバムの一つとされています。


4位 ザ・ジーザス&メリーチェイン 「サイコ・キャンディ」


The Jesus and Mary Chain - Psychocandy: このアルバムは、スコットランドのロックバンドであるThe Jesus and Mary Chainのデビューアルバムです。また、ポップミュージックとノイズロックを融合させたサウンドで知られています。このアルバムは、1980年代の音楽シーンにおいて、革新的なアルバムの一つとされています。甘美なフィード・バック・ノイズを確立、マイ・ブラディ・バレンタインなどへと継承されていきます。プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーがドラマーとして参加していたバンドです。


5位 ザ・ポップ・グループ 「フォー・ハウ・マッチ・ロンガー」


The Pop Group - For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder?: このアルバムは、イギリスのポストパンクバンドであるThe Pop Groupの2枚目のアルバムです。政治的なメッセージを持つ歌詞と、実験的なプロダクションで知られています。このアルバムは、ポストパンクの代表的なアルバムの一つとされています。

6位 ソニック・ユース「デイドリーム・ネイション」


Sonic Youth - Daydream Nation: このアルバムは、アメリカのオルタナティブロックバンドであるSonic Youthの5枚目のアルバムです。バンドの最も有名な作品の一つであり、実験的なプロダクションと、ノイズロックとポップミュージックを融合させたサウンドで知られています。彼らがゲフィン・レコードで成功し、サーストン・ムーアが、サブ・ポップで活動していたインディーズ時代のカート・コバーンの才能をレコード会社に伝え、同社がニルヴァーナを獲得したのは有名な話ですが、そう考えると、ソニック・ユースは新人バンド発掘に大きく貢献していたことが納得です。

7位 プリンス&レヴォリューション「パレード」


Prince and The Revolution - Parade: このアルバムは、アメリカのミュージシャンであるプリンスと、彼のバックバンドであるThe Revolutionの7枚目のアルバムです。映画『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』のサウンドトラックとしてリリースされました。プリンスのキャリアにおいて、最も成功したアルバムの一つとされています。

8位 アズテック・カメラ「ハイ・ランド・ハード・レイン」


Aztec Camera - High Land, Hard Rain: このアルバムは、スコットランドのポップ・グループで、パンクに触発されたロディ・フレイムが18歳で発表した作品であり、ネオアコの旗手とも称えられていました。ロディ・フレイムは、とりわけザ・クラッシュの影響を受けていて、歌詞にジョー・ストラマーが出てきたりもします。音楽性もさることながら、ロディの美少年ぶりに世界中の女性ファンは驚愕。その斬新さはかなりのものであり、日本のフリッパーズ・ギターなど多くの渋谷系ミュージシャンに影響を与えています。ロディは当時もてはやされていたヴァン・ヘイレンを毛嫌いしていて、皮肉たっぷりに彼らの大ヒット曲「ジャンプ」をカバーして、大いに話題となりました。のちにカート・コバーンがガンズを揶揄したように、アメリカ人特有のマッチョイズムを批判したことを意識して聴くと面白いかも知れません。

9位 ビッグ・ブラック「ソングス・アバウト・ファッキン」


Big Black - Songs About Fucking: このアルバムは、アメリカのインディーロックバンドであるBig Blackの2枚目のアルバムです。このアルバムは、ノイズロックとインダストリアルミュージックを融合させたサウンドで知られています。このアルバムは、1980年代の音楽シーンにおいて、革新的なアルバムの一つとされています。メンバーのスティーヴ・アルビニはのちにニルヴァーナのカート・コバーンに依頼されて「イン・ユーテロ」のプロデュースをしたことは広く知られています。ジャケットのイラストは「やる気まんまん」などの日本の官能漫画家、横山まさみち氏が手掛けました。アルビニは日本の漫画「レイプマン」にショックを受けて、その名前を取って活動しましたが、そのようなバンド名は英語圏でバッシングされてしまうのは至極当然であり、解散を余儀なくさせられます。

10位 ザ・クラッシュ 「サンディニスタ」


The Clash - Sandinista!: このアルバムは、イギリスのパンクロックバンドであるThe Clashの4枚目のアルバムです。このアルバムは、3枚組というボリュームで、レゲエ、ファンク、ヒップホップ、ジャズなど、多様な音楽ジャンルを取り入れたサウンドで知られています。同作品は、バンドの最も野心的な作品の一つとされています。「コンバット・ロック」はアメリカで成功しましたが、ここまでのクラッシュの音楽の方を支持しているファンが多い。カート・コバーンはこの当時、このアルバムを聴いて「クラッシュはダサい。ピストルズのほうがクラッシュより、何万倍も重要なパンクだった」と述懐しています。

10位 ザ・ストーン・ローゼズ「石と薔薇」


ストーン・ローゼズ - 石と薔薇: このアルバムは、イギリスのロックバンドであるストーン・ローゼズのデビューアルバムです。このアルバムは、1989年にリリースされ、バンドの最も有名な曲である「シー・バングス・ザ・ドラムス」を含む11曲が収録されています。このアルバムは、ポストパンク、ニューウェーブ、サイケデリックロック、ファンク、ダンスロックなど、多様な音楽ジャンルを融合させたサウンドで知られています。バズコックスに端を発した、おマンチェブームの立役者。ケミカル・ブラザース、オアシスなどと共にマンチェスタームーブメントを築いた彼ら。クラブ・ミュージックとしての功績は多大であった一方で、あまりに評価が高すぎてプレッシャーがかかり、次作の「セカンド・カミング」が不当評価されたのは残念なことです。イギリスのロックバンド、デビュー作で燃え尽きる、あるあるでしょうか。

12位 ディスチャージ「ヒア・ナッシング・シー・ナッシング・セイ・ナッシング」


ディスチャージ - ヒア・ナッシング・シー・ナッシング・セイ・ナッシング: このアルバムは、イギリスのハードコア・パンクバンドであるディスチャージのオリジナル・ファースト・アルバム(ミニアルバムは除く)です。バンドの初期の作品と比較して、よりヘヴィで、よりポリティカルなメッセージを持つことが特徴です。彼らのお家芸である、怒涛のごとく炸裂するD-BEATが確立されており、メタリカなど、のちのスラッシュ・メタルなどへ影響を与えています。ボーカルのキャルの怒号のように叫ぶ野太い声は日本のギズムやナパーム・デスらのデスメタル勢へと伝承されていきました。

彼らは全盛期にメンバーが傷害罪で逮捕されて、来日が急遽中止になりました。前座にはギズムが予定されており、横山SAKEVI氏は「おれはディスチャージのミーハーなんですごく楽しみにしていたんだが・・・」と残念無念。

かなり遅れての初来日での川崎クラブチッタのライブは、ビデオに収録されていて楽しめました。圧巻はキャルが観衆に対して「コンバンハー!」との発言で大爆笑。ジョン・ライドンは初来日でオーディエンスに「カンパーイ!」と叫んで笑いを取ったように、いかなるパンクの象徴と言えども、日本語使うと全てがコケる。いくら日本人だって「こんばんは」の英語や、Cheersくらいわかるでしょうに。。。

全盛期のディスチャージ。白黒写真しか撮らせない徹底ぶり。
左からドラマーのテズ、ギターのボーンズ、ベースのレイニー、ボーカルのキャル。
全員がイケメン。パンクもやっぱり見た目なのね。。。。

ジョン・ライドンならキャラ的にギャグで済まされますが、クソまじめなキャルが「今晩は」って何よ。とかなりのファンはガックリ。Good evening. ないしは、カジュアルに、Hi. (Hey.) Hello.と自然に言えばよかったのに。キャルは日本人に礼儀正しく愛嬌を振りまいてしまい、その後グループを脱退してしまいました。これは、昭和のプロレスラーのラッシャー木村事件を彷彿とした出来事でした。


ラッシャー木村の「こんばんは」事件

新日本プロレスの10周年記念興行として行われた1981年9月23日の伝説の東京・田園コロシアム大会から40周年を迎えた。スタン・ハンセンVSアンドレ・ザ・ジャイアントの“スーパーヘビー肉弾戦”、初代タイガーマスクがエル・ソラールの肩を脱臼させた“事故試合”などが語り継がれているが、メインイベントはアントニオ猪木VSタイガー戸口のIWGPアジアゾーン予選。最大の“田コロ伝説”はこの試合前に起きた。

 両雄が入場してから、国際プロレスのラッシャー木村とアニマル浜口が、10・8蔵前国技館での全面対抗戦(メイン猪木VS木村)をアピールするため割って入った。だが、マイクを握った木村は「こんばんは」と律儀にあいさつし、失笑を買った。「10月8日の試合は、私たちは国際プロレスの名誉にかけても、必ず勝ってみせます」と続けたが、微妙な空気に…。

 すかさず浜口がマイクを奪って「10月8日は絶対、我々が勝ちますよ。おい、待っとけよ!」と対戦する剛竜馬に向かって叫んだ。猪木と戸口はガウンを着たまま渋い表情でやり過ごすしかなかった。これがプロレス界を超えた伝説になったのは、ビートたけしが「こんばんは、ラッシャー木村です」とギャグにしたからだった。

13位 ザ・スミス 「ザ・スミス」

ザ・スミスはそのビジュアルも独特だった。モリッシーとラフ・トレードのアートディレクターであったジョー・スリーがデザインしたアルバムやシングルには、彼ら自身の姿は一切登場せず、その代わり二色刷りで映画やポップスのスターが印刷されていた。カバーに起用されたのはモリッシーの興味の対象で、例えば古い映画やカルト映画のスター(ジャン・マレー、ジョー・ダレッサンドロ、テレンス・スタンプ、ジェームズ・ディーン)などだった。イギリスの60年代のアイドルの写真を使用したこともあった。Wikipediaより引用。


ザ・スミス - ザ・スミス: このアルバムは、イギリスのロックバンドであるザ・スミスのデビューアルバムです。1984年にリリースされ、バンドの最も有名な曲である「ハウ・スーン・イズ・ナウ」を含む11曲が収録されています。このアルバムは、モーリッシーの皮肉と自嘲。文学的歌詞、独特なボーカルスタイルと、ジョニー・マーのギタープレイで知られています。ドラマーのマイク・ジョイスは一時、PILに参加していました。

ザ・スミスはこのランキングに3作がランクイン。『ザ・スミス』全英2位。『ミート・イズ・マーダー(食肉は殺人)』全英1位。『ザ・クイーン・イズ・デッド(女王は死んだ』全英2位。と、票が割れたのがもったいない。スミスの作品に駄作なしと言われていますが、ラストアルバムの『ストレンジウェイズ、ヒア・ウイ・カム』全英12位。が私にとってのベストです。

13位 トーキング・ヘッズ「リメイン・イン・ライト


トーキング・ヘッズ - リメイン・イン・ライト: このアルバムは、アメリカのロックバンドであるトーキング・ヘッズの4枚目のアルバムです。このアルバムは、1980年にリリースされ、バンドの最も有名な曲である「ワンス・イン・ア・ライフタイム」を含む8曲が収録されています。このアルバムは、アフリカの音楽やファンク、ワールドミュージックなど、多様な音楽ジャンルを融合させたサウンドで知られています。

15位 デ・ラ・ソウル「3フィート・ハイ・アンド・ライジング」


デ・ラ・ソウル - 3フィート・ハイ・アンド・ライジング: このアルバムは、アメリカのヒップホップグループであるデ・ラ・ソウルのデビューアルバムです。このアルバムは、1989年にリリースされ、バンドの最も有名な曲である「メ・マイセルフ・アンド・アイ」を含む17曲が収録されています。このアルバムは、ジャズ、ファンク、ソウル、ロックなど、多様な音楽ジャンルを融合させたサウンドで知られています。

15位 ロキシー・ミュージック「アヴァロン」


ロキシー・ミュージック - アヴァロン: このアルバムは、イギリスのロックバンドであるロキシー・ミュージックの8枚目のアルバムです。このアルバムは、1982年にリリースされ、ブライアン・フェリーの持つ美意識が極限まで到達した名作となっています。

17位 ディス・ヒート「偽り・ディシート」


ディス・ヒート - ディシート: このアルバムは、イギリスのロックバンドであるディス・ヒートの2枚目のアルバムです。このアルバムは、実験的なプロダクションと、ポストパンク、ノイズロック、インダストリアルミュージックなど、多様な音楽ジャンルを融合させたサウンドで知られています。

17位 スタイル・カウンシル「カフェ・ブリュ」

ストライプのBDシャツに白のトレンチ。というブリティッシュファッション。
もともとポールはモッズ・スタイルで細身のスーツを好んでいましたが、やはり英国人。着こなしがナチュラル。
彼は、ブリトラ・ブームの仕掛け人として、日本でもファッション・アイコンとなりました。
バーバリーの権利を日本の三陽商会が買って、バーバリーブルーレーベル、同ブラック・レーベルが大人気を博しました。現在はクレスト・ブリッジになりましたが、依然としてブルー・ブラックレーベルはフリマ市場で高値取引されています。


スタイル・カウンシル - カフェ・ブリュ: このアルバムは、イギリスのパンクバンド、元ジャムのポール・ウェラーのスタイル・カウンシルの2枚目のアルバムです。ポストパンク、ソウル、ファンク、ジャズなど、多様な音楽ジャンルを取り入れたサウンドで知られています。ファッションがオシャレで、バブル世代のファンを大いに沸かせました。特に当時のOLや女子大生らバブル期、富裕層の支持層が強く、洗練されたサウンドも魅力的でした。ジャムの時の主義主張から一転してしまい、ポール・ウェラーの硬派なファンは困惑していましたね。

19位 ニュー・オーダー「サブスタンス」


ニュー・オーダー - サブスタンス: このアルバムは、イギリスのロックバンドであるニュー・オーダーのコンピレーションアルバムです。このアルバムは、バンドのシングル曲やB面曲、リミックス曲などを収録しています。このアルバムは、バンドのキャリアを代表する作品の一つとされています。イアンを失ったメンバーが世間に提示したダンス・ディスコミュージック。音楽は聴き心地がいいですが、なかなか辛辣な毒は不変であり、デジタルビートに包まれたパンクそのものです。メンバーに敬意を表します。

19位 ジャパン「ブリキの太鼓」


ジャパン - ブリキの太鼓: このアルバムは、イギリスのロックバンドであるジャパンの4枚目のアルバムです。このアルバムは、バンドの初期の作品と比較して、より実験的で、よりアンビエントなサウンドであることが特徴です。

ケバケバしいジャパンが音楽的にここまで成長したことには、目を見張るものがあります。デヴィッド・シルヴィアンは、D・ボウィーの継承者であり、耽美的な美と、内面の美学をここまで追求したのですね。デビュー時はクイーンと同様にミーハーな女性ファンしかいなかったのに、音楽性でロックを進化させた功績は多大であり、ジェンダーレスな世界観の構築に大きく寄与しています。『ライフ・イン・トーキョー』でも久しぶりに聴くか。


21位以下は

21位 エコー&ザ・バニーメン 「ヘヴン・アップ・ヒア」
22位 ダイナソーJr  「バグ」
22位 ガンズ・アンド・ローゼス 「アペタイト・フォー・ディストラクション」
22位 ザ・スミス 「ザ・クイーン・イズ・デッド」
25位 ルー・リード 「ニューヨーク」
26位 ソウルⅡソウル 「キープ・オン・ムービン」
26位 XTC  「ブラック・シー」
28位 ビッグ・ブラック 「アトマイザー」
28位 デヴイッド・ボウイー スケアリー・モンスターズ」
30位 ザ・スミス 「ミート・イズ・マーダー」
30位 ジュリアン・コープ 「セイント・ジュリアン」

以下はまたの機会にお知らせします。


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