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正月の惨劇

少し時期が外れたけど、数年前のお正月の話。

三が日に親戚の家に遊びに行き玄関を開けると女性の喘ぎ声が響いていた。
状況が分からなくて固まってると喘ぎ声と別におばさんの怒っている声が聞こえ、従妹が笑いながら2階から降りてきた。
『あ、いらっしゃい。おめでとー』
従妹の後におばさんも降りてきて、
『ホントにバカ!あけましておめでとう。ほら!笑ってないで直して!』
状況がさらに分からなくなった。従妹にどういう状況なのか訊くと、

『お母さんと買い物して帰ってきたら、2階から女の人の喘ぎ声がしてて、お父さんの部屋に行ったら、お父さん、PCでエロサイトを見てたら突然、音量がデカくなってPC動かなくなっちゃって画面に“ 金払え ”みたいなのが表示されて直せないって、パニくってんの』

笑いながら説明する従妹におばさんが“ いいから早く直して! ”と、従妹におじさんの部屋に行くよう促し、居間に通された。
最悪のタイミングで来たなと思ってると喘ぎ声が収まり、従妹が降りてきた後、数分しておじさんも降りてきて、
『あ…あけましておめでとう』
抜け殻みたいなおじさんから、人生で最も心のこもってない新年のあいさつをされた。
挨拶を返してお互いに無言でいると、怒りをあらわにしたままのおばさんがおせちと昼ご飯を出してくれた。
僕にとって、HOMEでもAWAYでもない中立のはずなのにAWAYを感じた。
おばさんは僕にお酒を勧めながら、

『お父さん、お酒飲みたいならご自分でどうぞ。飲めるならね』

語尾の“ 飲めるならね ”の口調が強く、おじさん、地獄だな。と同情してると、ずっと笑いっぱなしの従妹におばさんがまた怒った。
従妹の笑いが収まると、

『あー、面白かった。今だから良いけど中学生くらいでされてたら、絶対、口きかなかった』

大学生の娘にまで言われて完全AWAYのおじさんを見ているのも同じ空間にいるのも辛くて早く帰りたかったけど、おじさんの目が“ いてくれ ”と言っているように感じたので残った。
従妹とゲームしたり、おじとおば、両方から仕事のことを訊かれ話の流れから、おじさんがおばさんに話しかけたがガン無視されてた。

おばさんは、おじさんが家でも仕事をすると年末に高いPCに買い替えたのは、このためかとブチギレていた。

そのまま、晩御飯もご馳走になって帰る時、家を出てすぐおじさんから1万円を握らされた。お年玉じゃなく“ 口止め料 ”と判断し受け取った。
でも、おばさんが電話で親戚に話して口止め工作は無駄に終わった。

2か月後に法事でまた会うと、おばさんは正月の話をした。
おじさんは無言でいたが空気が読めない親戚が、
『そうは言うけど、いくつになっても男はそういうもんなんだよ。それが健全なんだよ。なあ、忠さん?』
親戚は、おじさんの名前を言いながら擁護しているつもりだろうけど収束したい話を延々“ それが男だ ”と、皆の前で熱弁されておじさんはずっと無言だった。

おじさんは勤め先で役職についてる親戚の中でも出世頭の一人で見習うべき大人だったのが“ エロおじさん・PCでやらかした人 ”扱いされるようになった。
一つのミスが積み重ねてきたもの全てを無にすると、おじさんから教わった。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ