17才

いつまでも僕の青春【BaseBallBear】

BaseBallBearほど、”青春”という言葉が似合うバンドはないだろう。

風になびく白いシャツが綺麗
青い空がどことなく哀しい

昼休みに教室の窓から見えた青空、帰り道に見上げた青空、様々な青空を鮮明に思い出す。
青と白の眩しいコントラスト。
眩しいはずなのに、なぜだか「哀しい」気持ちにさせられるあの日々が頭を巡る。

いつの時代も、若者は迷いや悩みにさいなまれ、そこから抜け出すことを願う。そういうものだろう。

二度と無い季節が 通り過ぎていくよ
何も無い感覚 昇っていく階段

明日はどこだ

虚無感、焦燥感、孤独感。
この曲の最初は、そんな若者の苦悩が歌われている。
「何も無い」というフレーズが、胸に刺さる。

前髪で隠した 心をさぁ、開いて
君のことに気付いてる 人がきっといるから
ひとりじゃない感動 覚えたことはないか?
名前呼んで笑い合うことに意味なんていらない

明日会おうぜ

だが、曲の終わりに向かうにつれて、若者は自分を思いやってくれる誰かに励まされ、気持ちは少しずつ明るい方へ向かっていく。
最後には、何か吹っ切れたのか、晴れ晴れとした雰囲気で締めくくられる。

この曲を作ったVo./Gt.の小出は、高校時代友達がいない時期があったそうだ。
彼もまた、誰よりも苦悩からの脱却を願う若者のひとりだった。
そんな”当事者”だった彼が歌うからこそ、彼の描き出す青春はやさしく響くのだろう。

BaseBallBearの曲は、”青春”だ。
セピア色がかった小説のような世界観。だけど、印象的な部分を色彩鮮やかに描き出す。
“青春”というぐらいだから、キラキラはしているのだが、いたずらに眩しいわけではなく、きちんと切なさもはらんでいる。

黒い髪の君が誘い 覚えてしまったABC

こんなフレーズもありながら、彼らの曲は、ジュブナイルで青くて生々しくて甘酸っぱい衝動で溢れている。

そんな彼らの青春は、ライブに行くとより強く感じる。

BaseBallBear Tour 「LIVE IN LIVE 〜 I HAVE YOU 〜」
そのツアーの初日、10/13の大阪会場に参戦してきた。そこでの最後の曲が「17才」だった。
メンバーが1人脱退し、今の3人体制になってから、小出のギターは、かなり派手なフレーズをかき鳴らすようになっていた。
けれど、この曲は、原曲に忠実に、丁寧に演奏された。
彼らにとっても、アレンジせずに聴かせたくなる一曲なのではないだろうか。そんなことを思いながら聴きふけっていた。

高校3年間、僕はBaseBallBearを聴き続けた。
「ELECTRIC SUMMER」も「short hair」も「BREEEEZE GIRL」も「changes」も「ドラマチック」も、ほとんどの曲は、高校生活の思い出と結びつく。
だが、17才という曲は、あの頃の感情を特に強く呼び起こす気がする。
“高校生活”そのものをひとくくりにすると、17才という曲に集約される気がするのだ。

落ち着いた緑の照明の中で僕は、もう戻れないあの頃への羨望と、ちょっぴりの切なさと、不思議な心地よさに包まれていた。

BaseBallBearは、いつまでも僕の”青春”だ。


rockin'on.comのメディア「音楽文」にも掲載されました。


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