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もう推しの抽選式特典会には参加しないかもしれない

近いうちに女子高生である親戚に会うことになった。彼女はダンスを習っていて、もしダンスアンドボーカルが好きな友達でもいればと思い、推しの新曲CDを10枚買った。抽選の特典会に申し込んだら倍率がかなり高いはずなのに当たってしまった。
期待していなかったと言えば嘘になる。「あわよくば」くらいには思っていた。そして推しの対応には文句は全くない。ずっと目を見て話してくれるし、ずっと彼に聞きたかった共通の趣味の話もできた。彼はタイムキーパーのスタッフさんをよそに話し続けてくれて、彼なりのファンサービスなのかなと思った。参加してよかったと思う。

では、なぜもう参加しないと思ったか。

  1. 費用対効果が薄い
    CD10枚で12,000円。推しと話せる時間は30秒。なんで推しと喋るのにこんな額出さないといけないのだろう?と、話終わった後なんだか冷静になってしまった。これで彼らの取り分と仕事の負担を考えると、なんだか彼らにも釣り合わないなと感じてしまった。
    もちろんCDを「積む(大量購入)」ことをしないと彼らは永遠にこの負担から抜け出すことはできないわけだが、プロモーターとしてはファンに積ませた方が儲かるし、オリコンなどのランキングでは上位に行けるし、良いことしかない。やめる理由がないのだ。売れに売れまくって、イベントをやってる暇さえないという状況にならない限り彼らの「対面イベント」は続くのだろう。私はそれを見ているのがなんだかしんどくなったのだ。
    実はハイタッチ会にも参加したことがあるのだが、笑顔で来る人来る人に「ありがとー!」「ありがとー!」「うん、大好きだよー!」「ありがとー!」とやっているのだと思うと、ふとなんだか気の毒になってしまった。彼らに「オリコンで1位を取らせてあげたい」「推しに会って直接話したい」「推しを独占できる時間が欲しい」気持ちより「こんな泥仕事ばかりさせられているのを見てられない」という気持ちが勝ってしまったのだ。
    こんなことを言うのもおかしいかもしれないが「ペットって生活必需品でもないのにどうして人間の家に飼われるために生まれてこなければいけないんだろう」みたいな、「根本的にこれって正しいのか?」と疑問に思ってしまったのかもしれない。

  2. 芸能人慣れしているとあまり感動しない
    私は自分の親戚含め、多くの芸能人や、芸能関係者にお世話になってきた。音楽制作の裏話を聞くこともあったし、それこそレコード会社の方と食事をしたり、プロモーションの裏事情やプロモーターの実態、お金の話、色々聞いてきた。
    こんな私は、いくら推しでも「キラキラした芸能人」というよりは「芸能界で売れたいお兄ちゃん」に見えている。上記でも触れたが、どんな気持ちでやっているとか、何を考えているかとか、そういう「推しには聞くことができないこと」の方が気になって、イベントに全集中はできなかった。次の話にもつながるのだが、「うわー!本物だ!!」的な感動がなんだか薄くて、期待を超えてこなかった。まだデビューして5年も経っていないので、いわゆる「芸能人オーラ」が少なめなのも関係あるかもしれない。

  3. 推しを見たり、一緒にいても興奮しない
    私は精神障害で投薬治療を受けている。薬を飲み始めた頃、気分というか、頭の中がとても静かになったのを覚えている。一方で欲も比較的無くなったし、先生に「前ほど色々なことが楽しめてない気がするんです」と相談したことがある。先生によると「発達障害の方とか、『薬飲む前の方が楽しかった』っておっしゃる方多いんですよ。音楽を聞いても高揚感がないとかですよね。」
    帰って調べてみるとなんと、統合失調症と広汎性発達障害に用いる薬は、驚くなかれ、脳内のドーパミンの再取り込みを阻害するものだった。平たくいうとドーパミンは人を興奮させる脳内物質で、それがあまりに多いと幻覚が見えたり、精神に異常をきたす。「人を興奮させる」ということは「楽しくさせる」という側面も持っており、これを薬で無理矢理抑えているのだから、楽しく無くなって当然だった。ちなみに依存性薬物はこのドーパミンを出す作用で人を「楽しさのドーピング」から抜け出せなくする。
    というわけで「うおおお!!推しだ!!!やばい!!!」という感情は投薬治療によって抑えられていることになる。つまり、推しを見た時や接した時に感じられるはずの高揚感はもうどこかへ行ってしまった。減薬の段階までいかないとこの高揚感が戻ってくることはおそらく望み薄で、私は「お薬を減らすのはもっと後に考えましょう」と先生から言われているので、当分推しでテンションが爆上がりすることはないだろう。

  4. 話のネタを考えるのが負担
    今回は推しの趣味について前から聞きたかったことがあったのでそれを聞いて30秒を終えたが、これを何回も続けるとなるとこっちも話を振ってあげなければいけない。彼が嫌な思いをしたり、変に悩んだりするような質問を避けて、できれば楽しんでもらえるようなネタを考えていく。これ、私のようにクリエイティビティが低めな人間には若干ハードルが高いのだ。よっぽど聞きたいことがない限り、推しと話したいことが思いつかないのだ。共通の趣味の話なら小一時間は一緒に語れるとは思うが30秒は逆にキツい。Xでレポートを投稿してくれる人がたくさんいるが、よくもみんな思いつくなというリクエストばかりで、関心するばかりだ。私だったらリクエストなんて本当にできない。お見送り会で投げキッスしてもらえたくらいで十分だ。

減薬して調子が良ければ、そしてCDを積めるほどの財力になったらまた参加しても良いかもしれないとは思うが、まずは正社員を目指してファンクラブに入り、引き続きライブを楽しむことを優先したいと思った次第だ。

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