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吉岡果音
2024年6月26日 15:11
第九章 海の王― 第130話 出口は、きっと自分で見つけられるはず ― キアランさん、シトリンちゃん――。 アマリアは、自分自身のことより、キアランやシトリンのことを案じていた。 あの瞬間、キアランを抱え、シトリンは間一髪、獅子の牙から逃れたように見えた。しかし、自分の夢の中に来てくれた彼らが、無事それぞれの自分の体に戻れたかどうか、気がかりだった。 ズン……。 腹の底に響くよ
2024年5月13日 22:25
第九章 海の王― 第124話 携行食 ―「花紺青っ!」 鈍い音がした。 パールの尾が、花紺青の操る板を直撃し、そこから続けざまに花紺青の後頭部にも激突していたようだった。 板もろとも花紺青、キアランは落下する。 花紺青――! 垣間見えた花紺青の表情は、うつろで――、意識を失っているようだった。 うっ! 強い風と共に、なにかが迫る。それは鱗に覆われた、パールの尾。
2024年5月20日 22:53
第九章 海の王― 第125話 悲しみの向こうの光 ― 吹き荒れた嵐が嘘のように、晴れ間が広がっていく。 花紺青は――。 パールの尾に弾かれ、意識を失ったまま落下してしまった花紺青。キアランは、彼が無事かどうか、一刻も早く知りたいと切に願った。カナフとシルガーに尋ねようと急いでキアランが口を開いた、まさにそのとき――。「キアラン、無事でよかったー! 心配したよー」 大きく手を振
2024年5月27日 22:48
第九章 海の王― 第126話 人形 ― 魔導師オリヴィアや、アマリア、魔法を操る者たちは、圧倒されるようなエネルギーの爆発を感じていた。 きっと、また高次の存在が……! 激しい風雨に全身を打たれつつ、アマリアは愕然とした。 またしても、四天王パールが高次の存在をその身に取り込み、変容が起きたのだと悟る。 あ……! 緑の光が……? アマリアは、それと同時に、自分に起きた変化
2024年6月4日 17:34
第九章 海の王― 第127話 怒りに突き動かされるのではなく ― なにか、胸騒ぎがする――。 ギャアギャアと、夕空に黒い鳥の声が響く。 キアランは、フェリックスの手綱を握りつつ、落ち着かない心持ちでいた。 キアランとシルガーと花紺青は、シルガーの作った空間を移動し、ダンとライネは陸路を進む。 白銀と黒羽は、ダンとライネについていくようだった。 と、いうのも白銀と黒羽が申し出ていた
2024年6月11日 22:18
第九章 海の王― 第128話 深い眠りに囚われて ― 薄暗い森に、音もなく降り積もる粉雪。 もうじき、森は眠りにつく。「シトリンッ」 フェリックスの背から降りるやいなや、キアランはシトリンのいる洞窟内へと急いで駆けこんだ。「いない……!」 キアランは、愕然とした。洞窟の中は、なんの気配もなく静まり返っていた。シトリンも翠も蒼井もいないようだった。 シトリンがいなければ、
2024年6月20日 23:25
第九章 海の王― 第129話 夢を支配するもの ― 白く凍った地平線が、暁色に染まっていく。 一晩中探しても、アマリアの気配すら掴めなかった。「アマリアおねーちゃん。起きなかった」 申し訳なさそうに、シトリンが告白した。長いまつ毛が、かすかに震えている。 キアランが長いため息をつき、口を開く前に、シトリンは急いでその先の言葉を続けた。「でもね、でもねっ。アマリアおねーちゃん、