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天風の剣

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右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 …
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2024年4月の記事一覧

【創作長編小説】天風の剣 第118話

【創作長編小説】天風の剣 第118話

第九章 海の王
― 第118話 強くなるんだ ―

「キアラン! 僕、新しい魔法を使えるようになったよ!」

 ルーイがキアランの両手を取り、顔を輝かせた。
 とはいえ、ルーイの笑顔には今までと比べ、暗い影のようなものが感じられた。
 オニキスの襲撃を受け、たくさんの人々が犠牲となり命を落とし、そしてたくさんの人々が負傷したところを目の当たりにし、深い悲しみと恐怖を心に抱えてしまったのだろうとキア

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【創作長編小説】天風の剣 第119話

【創作長編小説】天風の剣 第119話

第九章 海の王
― 第119話 ドーナツの向こうの青空 ―

 キーン――。

 愛馬バームスの手綱を握っていたアマリアは、強いめまいを感じていた。
 肌が泡立ち、まるで雷に打たれたような感覚が体中を走る。

「来る……!」

 背後から迫る、巨大な魔のエネルギー。
 アマリアは、それが父母や親族の仇であると感じ取っていた。

「四天王パールが……!」

 魔導師オリヴィアも、ダンも同様に気付いて

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【創作長編小説】天風の剣 第120話

【創作長編小説】天風の剣 第120話

第九章 海の王
― 第120話 最高の食事 ―

 美しい夢を見ていられればそれでいい、そう思っていた。
 海の底でずっと静かに眠り続けていたい、そう思っていた。
 しかし、様々な魂と出会ってしまった。様々なエネルギーを、心を知ってしまった。
 夢を見続けるための食事が、いつの間にか変わっていた。

 今、僕の心は熱く、喜びに震えている――。

 もっと刺激を、と思った。
 もっと新しい体験を、自

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【創作長編小説】天風の剣 第121話

【創作長編小説】天風の剣 第121話

第九章 海の王
― 第121話 あと何秒 ―

 どす黒い液体が四天王パールの足首から流れ落ち、ゆっくりと大地に染み込んでいく。
 足元から伸びる黒い影が、一層濃密な闇をまとう。
 四天王パールは、ふふっ、と軽く笑い声をたてた。そして、自分の足元に目をやりつつ、かすかに顔をしかめた。

「浅い傷でも、やっぱり急所は痛いなあ」

 ダンが、愛馬バディの背の上で魔法の杖を構える。集中し、強い魔法を唱え

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【創作長編小説】天風の剣 第122話

【創作長編小説】天風の剣 第122話

第九章 海の王
― 第122話 笑う首 ―

「キアラン!」

 ダン、ライネは、なにもない空中から突然現れたキアランを見て驚く。
 キアランは、愛馬フェリックスに乗り天風の剣を構え、四天王パールを見据えていた。

「へえ。君、空間から自在に姿を現すなんてことができるんだ」

 パールは感嘆の声――のように聞こえる――をあげた。

 こいつ……、楽しんでやがる……!

 ギリ、とキアランは歯を食い

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