映えないパフェを、なんどでも作ろう。
めちゃくちゃ、雨。
あいかわらず、外に出られず、子どもたちは家の中で行き場を求めてさまよっている。
__よし、パフェでも作ろか。
そう言うと、ふだん食い意地の張っていない長男も、きらんと目が輝いた。
もともと、パフェ作りは長男を「哀れ」におもって始めたことだ。
長男は、園から帰るのが早い。
園のおやつの時間には、もういない。
朝の会で「今日のおやつは、ミニパフェです」と先生が言って、みんなが沸いたときの、長男の取り残されようといったら。
いや、ぼくはそのパフェ食べれませんけど。
そのすがたを思うと、「パフェくらい家で作ろうぜ!」と言わずにはいられなかった。
過保護。考えすぎ。
わかっている。
これは、わたしが「したい」のだ。
仕事に復帰すれば、平日のおやつをいっしょに楽しむ時間は、ほとんどない。
だったら今くらい、特別なおやつタイムしたって、いいでしょう。ね。
こうして、雨音ひびく午後3時。
わたしと長男の、パフェ作りははじまった。
◇◇◇
パフェ作りと言っても、たいしたことはない。
材料は、市販のホイップクリーム、シリアル、ヨーグルト、果物、トッピング用のおやつ、チョコソース。
それだけだ。
それらを、ふだんは奥にしまってあるガラスのコップに入れていくだけ。
果物も、イチゴとかあればパフェっぽいんだけど、長男はバナナしか食べないので、必然的にバナナパフェ一択となる。
「なにいれる〜?」
材料をトレーに並べて、目の前に置いてやると、長男はうれしそうにガサゴソと漁った。
まずは、シリアル。
わしづかみにして、投げ入れる。
パラン、ポロンと、コップからはみ出たシリアルたちが、テーブルの下に落ちていく。
それを、次男が目ざとく拾う。
つぎ、ヨーグルト。
長男はヨーグルトが好きではないので、スプーンでささやかな量をすくって、投入。
ちなみに今回は、わたしの分も作ってくれるそうで、お任せする。
きちんと「かかは、ヨーグルト好き?」と聞いてくれるので頷くと、もりっとすくって、入れてくれた。
それぞれの好みに合わせられるのも、手作りおやつの嬉しいところ。
続いて、バナナ。
まな板と包丁を渡してやり、輪切りにするのを黙って見守る。
たどたどしい手つきを見て見ぬふりし、一口サイズをはるかに上回るバナナがいくつも完成。
ドボンドボン、とコップに落とす。
そこからは、クリームだ。
便利な市販のホイップクリームを、好きなようにしぼらせる。
この「しぼる」が、けっこうむずかしい。
加減ができずに偏ったり、うまく押せなくて空気だけがプスリと出たり。
「かか、自分のは自分でやって」と投げ渡され、「あ、諦めた」とおもうが、承諾し受け取る。
自分自身のパフェだけは、四苦八苦しながらクリームを注いでいた。
かわいらしい量のクリーム。
わたしは、その3倍しぼった。
さあさあ、ここからはお楽しみ。
トッピングタイムだ。
家にあったお菓子をかき集め、好きなものを選んでのせていく。
今回は、クラッカー、ミレービスケット、源氏パイ、ボーロ、ウエハースがならぶ。
長男は、クラッカーとミレービスケット。
わたしは、ウエハースをのせた。
さらに今回は特別に、カラフルなトッピングシュガーも発見したので、それも出してやる。
かわいい粒々の砂糖たちをまぶせば、一気にそれっぽくなって心がおどる。
最後にチョコソースをかけて、完成!
できあがったパフェが、こちら。
___と、ここで写真のはずだったが。
なんと、撮る前に食べてしまった。
残念ながら、記録なし。
書く人間として、そういうのはきちんと残さねばと、つねづね思っているんだけど。
実は、そういうのがあまり得意ではない。
旅先の料理とか、ぜんぜん撮らない。
はよ食べたい。
ということで、一体どんなパフェだったのか。
ご想像にお任せする。
ただ、ひとつ間違いないことがある。
それは、ぜんぜん「映えないパフェ」だったということだ。
オシャレさもない。
派手さもない。
コップの中はぐちょぐちょで、不恰好。
だけど、そのコップの中は、長男のあれやこれやが詰まっていた。
不均等に切られたバナナ。
絞るのに苦労したクリーム。
ウキウキとトッピングしたクラッカーは、大きすぎて、食べるとバラバラになった。
虫歯になるからと、少なめにかけたチョコソースは、スプーンでこそいでベロベロ舐めた。
食べるものは、見た目や盛り付けも大事なんだろうけど。
長男のパフェには、それ以上に大事なものが、コップの中にぎゅうぎゅうになっていて。
わたしはそれを、かわいいとおもった。
また作ろう。
長男と、そう約束した。
また何度でも、映えないパフェを作って。
雨の日を少しでもハッピーに、ってね。
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