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人と人との縁をふりかえる時間を過ごす


第二回「ひとり映画鑑賞会」を開催。

前回、記事に書いたとおり、隙間時間で案外映画を楽しめることに気づいたので、またもやアマプラで、気になる映画をいくつか観た。
今回は2作、どちらも初見だ。

・『フォレスト・ガンプ/一期一会』

ひとつめは、昔友人のひとりが勧めてくれた映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』である。


1995年。
いまから30年ちかく前の作品だ。
勧められたのも10年前。

トム・ハンクス主演。
アカデミー賞作品賞など数々の賞を受賞した有名映画だが、わたしは勧められたとき、まったく知らなかった。

前回観た『プラダを着た悪魔』や『マイ・インターン』のような、分かりやすく、ハッピーで、ときめくような映画ではない。

一回観ただけでは、受け止めきれないような、確かな重みがある。
でもなぜか、爽快感もある。

今回も「観てよかった」とおもえたのだけど、前の鑑賞会のときとはちがって、私はしばらくこの映画について、じっと考えることになった。

映画は、「フォレスト・ガンプ」という主人公の半生を追う。
彼は知的に優れてはいないが、まっすぐで愚直で、良くも悪くも裏表がない。恋も一途だ。

「一期一会」という副題がついているように、彼の人生は幾人かの人との出会いによって、何度も方向転換していく。
私のようなふつうの人間では、到底追いきれないような方向転換だ。

たとえば、アメフトの全米チームに所属したのち、ベトナム戦争へ赴き、卓球全米チームに所属し、エビ釣り漁船の船長となるといった経緯とか。


くわしいストーリーは、ウィキペディアにすべて書いてあるので、そちらにお任せして。

私が印象的だった登場人物はふたりだ。

ひとりは、「ダン中尉」。
ベトナム戦争で主人公の小隊を率いる隊長だった。
見るからに、かっこいいのだが、だからこそ、戦闘後、病床で足がないシーンは衝撃的だった。
戦地で仲間を置き去りに助かってしまい、しかも足がなくなって。
そんな彼を助けた本人であるフォレストは、彼の苦しみを理解できない。


ダン中尉は、物語終盤までずっと主人公フォレストと絡み続けるのだが、ようやく「生きててよかった」とダンがおもえたかのようなシーンは、とても晴れ晴れとした気持ちになれる。

観ていたわたしも、息が詰まっていたのをようやく吐き出すことができたかんじだった。



もうひとり印象的だったのは、「フォレストのお母さん」だ。
彼女は、名言をたくさん生み出している。

「人生はチョコレートの箱みたいなもの。食べてみるまで中身はわからない」や、「ほんとうに必要なお金なんてわずかでいい。残りは虚栄」など、どの言葉も、フォレストの決断に大きく影響する。

私が一番印象的だったのは、死ぬ間際のフォレストとの会話だ。
病床に伏した母が「死」について、「運命」についてフォレストに語りかけるのを、フォレストといっしょになって、真剣に聞いた。


映画を観たあと、わたしは自分の人生における「一期一会」について思いを馳せた。

両親やきょうだい、友人、先生、同僚など、わたしにもフォレストのように、人生を左右するくらい影響された「出会い」がいくつかある。

そういえば働き出した頃、仕事の先輩がわたしの人柄を褒めてくださったとき、「いい出会いがいっぱいあったおかげなんですよ〜」と何気なく返した。

すると先輩が、
「その出会いは、あなたが引き寄せたんだよ。あなたの人柄をいいなって思った人たちが、力を貸してくれたり、一緒にいてくれたりしてできた縁なんだよ」
と言ってくれた。

この言葉は、ずっと心に残っている。

映画「フォレスト・ガンプ」は、人と人との縁の大切さを感じさせてくれる作品だった。


・『グリーン・ブック』

次の作品は、これまた人と人との出会いつながりの物語。
『グリーン・ブック』は、以前から評判がいいと聞いていたので、観てみたかった映画のひとつだった。

あらすじを知らないので、アマプラの説明欄をチェックして、驚愕。

ヴィゴ・モーテンセン主演。

「・・・ヴィゴ!?あのヴィゴ・モーテンセン!?」

なんといってもわたしは、「ロード・オブ・ザ・リング」が大好き人間で、しかも一番の推しは、このヴィゴ・モーテンセンが演じた「アラゴルン」。

一気にテンションがぶちあがる。
観よう、今観よう!
早速、その日の夜に観ることに決めた。


1962年。
人種差別の色濃いアメリカ南部にて。
黒人天才ピアニスト・ドクター・シャーリーと、運転手として雇われた粗野なイタリア系白人のトニーが、「グリーン・ブック(黒人専用ガイドブック)』を片手にコンサートツアーを巡るなかでの物語。

なんと実話をもとにつくられているそうな。
孤独な天才シャーリーと、無学でお金のないトニーは、住む世界もなにもかもズレていて、最初は互いを理解できないのだが、徐々に二人の関係が変わっていく。

黒人の使ったコップをゴミ箱に捨てるようなトニーだったが、シャーリーの演奏を気に入って、徐々に距離を縮めていく。
シャーリーも、粗暴ですぐに手が出るトニーに呆れていたが、だんだん彼に心を開き、信頼し、打ち解けていく。

彼らのあいだには、確実に友情が芽生えていく。
そのようすが、愛おしく、心癒される。

と同時に、アメリカ南部を渡り歩くなかで、シャーリーを待ち受ける黒人差別に、トニーとともに愕然とする。

VIPだと招いておきながら、建物内のトイレやレストランを使わせなかったり、お店でスーツを試着しようにも「困ります」と言われたり。
不良には絡まれるし、警察も態度を一変するし、もう辛い。

シャーリーは、北部ではその才能が認められ、そこで一生暮らしていけるほどの地位も名誉も持っていた。
それでも、黒人差別の残る南部のツアーをしたのはどうしてか。
トニーも同じことを、演奏仲間に尋ねる。

そのとき、仲間の言った「才能ではなく、勇気が人の心を変える」といった言葉が印象的だった。


一番好きなシーンは、トニーが妻に手紙を書くのを添削する場面。拙いトニーの手紙も、シャーリーのおかげでロマンチックになる。

その最後の手紙を書くとき、トニーはシャーリーにも、疎遠の兄に手紙を書くよう促す。
「寂しいときは、先に手を打たなきゃ」と。

孤独で寂しい気持ちは、行動しなければなにも変わらない。
なんだか自分に言われてるみたいで、どきりとする。
でも、トニーの憎めないキャラで言われると、いやな気もしないから不思議だ。
シャーリーもこの言葉を受け止めたのか、映画の最後には、トニーの家のクリスマスパーティーに足を運ぶ。何より心が温まるシーンだ。

もっと詳しい映画内容や黒人差別のことなどは、わたしも不勉強なので、あまり突っ込んで書けないが。

旅を通じて、トニーとシャーリーの関係が変わっていくのを楽しむだけで、十分満足だった。
時に笑いもあり、感動もあり。
「いい映画みたなあ」という満足感に浸れる映画だった。


・映画で「人と人のつながり」をふりかえる

今回観た二作品は、どちらも人と人との「出会い」や「つながり」、「関係の変化」に焦点を当てていた。

私の生きている時代や環境とは、まるで異なる舞台での出来事。
でも、どの世界でも「人と人とのつながり」には価値があり、たとえ相容れない者同士でも、時間や環境でいくらでも良い方向に転じていく。

わたしも映画をとおして、自分の人生の「出会い」をふりかえることができた。
映画を観ると、まったく違う物語を味わったのに、自分の物語についても考えさせられる。
それが映画のおもしろいところかもしれない。



初見の映画を立て続けに観たので、大きなものを食べたかのような、食べ過ぎのような感覚だ。
次はいちど堪能したことのある作品を観て、一呼吸つきたい。
そう思って、過去観た作品をふりかえっている。

ひとり映画鑑賞会。
やはり、心が喜び、安らぎ、おだやかになるのを感じる。最高のひととき。

次は、どの映画をみようか。
そう考えるだけで、わくわくしてくる。
第3回目も、すぐ開催できそうだ。

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