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#12 「距離」

ルパンが、オープニングの公営カジノ強盗を次元と成功させて、フィアットの車内にいっぱいの札束。
次元がルパンに札束のシャワーを浴びさせ「あちっあっちーよー!」と戯れている。
3回目ループの始まりだった。寝れずに昨夜のシーンが、二日酔いで頭がガンガンする中フラッシュバックする。

と言っても日曜日の早朝7時ごろだった。

夢見心地の体勢からソファーに座りなおし、
テーブルの上にあるまだまだ寒い部屋の中の天然冷蔵庫に置いてあった水を飲み干す。
水に味はないが二日酔いの水はドロっとというかヌルッとした感じがして、なおかつ味も感じない。

夢じゃないかとiPhoneのLINEを開く。

夢じゃない。

ひとまず、ソファーからいつものように転げ落ちるようにフロアーにゴロン。
ひんやりするフロアーで更に目を覚ます。
重い体をあげ浴室に行き、お風呂の電源をオンにして蛇口を開ける。
お湯になるまでの時間を利用して、替えのパンツやらズボンやらをクローゼットからピックアップする。

といっても部屋着を引っ張り出しただけだ。

珍しくお風呂に湯を張り、その間、頭のてっぺんから足の先まで洗う。
無精髭はそのままに。
顎と口髭は整える。

ちょうどいいタイミングで湯が張れた音楽が流れる。

3ヶ月ぶりの湯に浸かった。
iPhoneから流れるNACK5のラジオを最大音量にしながら「Sunday boys」を聴く。
どーでもいいたらればのリスナートークや恥ずかし失敗談など聴いていた。

久しぶりにのんびりした1日の始まりだった。

いつもと違う日曜。

天気も気分まで良いとくれば、あとは彼女が起きるのを待っているウキウキ感は言うまでもない。

風呂場で音楽をかけると響く。
それが俺は好きだ。長湯はしないがこんな日があっても罰は当たらんでしょ?

軽く30分は湯船に浸かっていた。
お湯は温くなっていたので、上がるときにシャワーを熱めにして浴び風呂場から上がる。
とはいうものの、部屋は天然冷蔵庫。
浴室の方が暖かいので浴室にバスタオルを持ち込み体を拭く。
実は体を拭くのが苦手だ。
体に水滴が残る中、ある程度拭けたところでさっとリビングに戻りパンツとロングTシャツを着てパーカーを羽織る。
そして、エアコンをつけておけばよかったと後悔しながら、贅沢にもエアコンを付けることに。

ルパンは、1回目のお姫様を盗むために屋根から塔へ飛び移る瞬間だった。
あの音楽と効果音がさすが宮﨑駿監督。

そして、ルパンのキャラだ。

日曜の朝といえば『所さんの目が点』は、ずーっと昔やってた番組。てはなく、『サンデーモーニング』にルパンから切り替えて、日曜日を演出。

[おはよー]
と、俺のいつものルーティン。
朝食は食べないが、せっかく早く起きたもんだから、目玉焼きに味噌汁なんか作りつつスポーツコーナーで張本さんが「かーつ!」を連呼して騒ぐのを横目にテーブルに『ごはん、目玉焼き、山芋の味噌汁』をセットしていた。

食事を摂っていると短いLINEの着信音が鳴る。
慌てて確認するがLINEニュース。

『なんだー』

という気持ちになる。
彼女からの連絡が待ち遠しい。
が、直ぐに短い着信音がなる。

[おはよー!ございます!]

なんか、彼女の元気いっぱいを浴びている気分になる。

[早くない?せっかくのオフなのに?ちゃんと寝れた?]
[ちゃんと寝れましたよー!今日もお仕事ですよね?なのに、昨日は遅くまで…すみません。]
心配なんてしなくていいのに、と思いつつ心配をしてくれているのは嬉しい以外の形容詞が出てこない。
[ご飯作って、パソコン開きながらテレビ見つつまりなからの連絡待ってたよーすみませんって、昨日はつまんなかった?俺はハッピーな気持ちになったのになーむしろ一緒にいられなくてごめんだよ。]
[全然!たのしかったです!]
[なら良いけどもー]
と、たわいのない会話をしていたら、少し時間が開いた。

その間に仕事のメールの返信や記者会見の提案資料を作成して待っていた。

[お風呂入ってきましたー!]
小一時間。
[綺麗さっぱりしてきた?]
[もちろんです!]
[そういえば、今日は友達とランチ?するんだよね?その準備してたのかな?]
彼女は、以外と忙しいようで仕事とプライベートはスケジューリングしている。
[そうなんです。けど、愛(友達)から連絡なくて…経理の仕事してて、決算とかですごい忙しいって。まだ、寝てると思います。]
[友達もたまの休みのんびりしないとね。まりなやさしいんね。では、お相手してもよろしいよ(笑)なんてな。]
[ぜひ!]

会話が弾む。
顔が見えないのが残念だけど彼女が楽しそうにしている表情が眼に浮かぶ。そして、俺も。良いおじさんがどんな顔をしてメールを打っているのか…考えただけで気持ち悪い。
けど、それくらい新鮮で癒されているのがわかる。
彼女が友達とカフェに行くまで、話をした。

17時を過ぎた頃、LINEの短い着信音が鳴る。

[愛とカフェしてきました!]
[おかえりー楽しくリフレッシュして来れた?]
[はい!でも、愛は大変そうで…]
彼女は、友達をとても大事にする。
昨日もRYOが店に来る前まで、友達やRYO、選手の話を写真を見せながら話をしてくれた。
その中でも中学のバスケ部と高校時代の親友は今でも交流があり、夜な夜な飲み明かしたりバスケをしているとか。
実は、俺もバスケを中学まで趣味程度で、部活とは別にクラブチームに入って夜な夜なやっていたこともあり話が弾んだ。
昨日も今日もある意味リフレッシュをして、良い意味で疲れたみたいで、彼女は夜早くに寝てしまっていた。
全く連絡が来なかったので、寝たのかなとは思っていたが空白な時間に違和感があった。彼女への依存が始まったのかもしれない。

[疲れて寝ちゃったかな?会いたくなった。ゆっくり休んでね!
あ、あと、敬語は控えるよーに!また、明日ね^_^おやすみ]
と送信して資料作りを始めた。

23時を過ぎて仕事もひと段落して、ボーッとしていた。
テレビをつけてもこの時間帯は面白くない。
最近観ていなかった伊坂幸太郎氏の「ゴールデンスランパー」のDVDを意味もなく見始める。
ミステリー?サスペンス?だが、とても面白い。キャストも豪華だ。
堺雅人主演、竹内結子、香川照之と様々な思惑が交差するドキドキが止まらない。
何度見ても引き込まれる。

不意にLINEの短い着信音が鳴る。

[寝てたーー!また、明日連絡させてくださーい!おやすみなさい]
夜遅くという配慮なのだろうが、待ちに待っていた彼女からのメッセージ。
[おはよー(笑)少し待ってたよ。連絡くれてありがとう。]
でかい熊さんが涙しながらの『ありがとう』スタンプが。
笑えたが彼女の感激がよく伝わる。可愛さは似てるかも。もうアホだ。
[っていうか寝れるん?]
というメッセージとかぶり気味に、
[会いたくなったっていうメッセージ、うれしかったー!完全に目が覚めましたー!]
俺も浮かれてるが、彼女も浮かれている(笑)とにかく一つ一つのやりとりが俺と彼女の心をつないでいる気がした。
身体的、物理的距離は近くなった。心の距離も少し、ほんの少し縮めた気がした。

to be next story...

(あとがき)
1話ごとの時系列の進みが遅かったり早かったりしますが、
ついて来ていただければと思います!
会えない時間がありますが…(考え中)笑

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