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#2 「Bad Yesterday → Good Today」

AM2:20

ルパン名作カリオストロの城を見ていた。
満腹状態の危険な状態で、着替えもせずネクタイを緩めてソファーに寝転んだ。

ルパンの「ふ〜〜じこちゃ〜ん!」
初代ルパン声優の山田康雄さんの声をBGMに果てない夢の中に…
いつのまにかダイブしていた。

死んだように寝ていた?のかはわからないが、
高度5,000mからのスカイダイブをする夢だった。
かなり鮮明過ぎて、現実かと思うくらいで焦っていた。

最近は夢なんて見ていなかった。
正確には不眠症。
そもそも仕事のプレッシャーで不眠気味だった。

飛行機が上昇仕切ったところで、
パラシュートをつけようとしていた。
そのタイミングてパラシュートを着用するのが正しいかはわからない。
多分現実問題としては違うだろう。
夢のストーリー的には事件に巻き込まれた感じなのだろうか?
だが、付けていなかったのは確かだった。

「ゴーーーーーーーーー」

ドアが開くと、風圧、気圧の轟音が外に吸い込まれてしまいそうな勢いで鳴っている
立っているのがやっとの状況。
後ろに人が立っているなんて感じなかった。(夢だから?)

パラシュートをつけ終わる前に、ふと振り返った。

瞬間!

後ろから押されてダイブした。
?誰だ?
と思う間も無く、
地球に吸い込まれて行くのがわかった…
ところで目が覚めた。

右手のタグホイヤーの時計を確認した。
5:12

ちょうど2回目くらい映画がループした3回目のクライマックスのシーンだった。
悪者男爵にクラリスが時計台から落とされ、それを助けようとルパンが躊躇せずダイブし、泳ぐようにクラリスの元に。そして、クラリスの頭を守るように湖に飛び込む瞬間だった。

と、そんなシーンを見ながら、
寝汗を確認し思った。
このダイブシーンが流れてたからかと(笑)

iPhoneのメールアプリに目をやると…
新着メールの数「58」。
赤地に白抜きの数字を見るとげんなりした。
内容の確認などせず、
『こんな深夜問わずに人の気も知らずよく働く』などと思っていると、銭形警部の名台詞のシーンだった。

銭形「ルパンめ まんまと盗みおって」

クラリス「いいえ あの方は 何も盗らなかったわ、私のために闘って 下さったんです」

銭形「いや 奴はとんでもないものを 盗んでいきました」

銭形「あなたの心です」
このやり取りが心地よく、いつのまにか二度寝についていた。

かけていた毛布がかかっておらず、腹の出た状態。
寒さを感じて瞼(まぶた)が勢いよく開いた。
右手のタグホイヤーを見ると、まだ、10:21。
例に習ってiPhoneを確認すると
新着メールの数は「82」に増えている。

また、げんなりする。
そして、着信「1」が。
登録されていない知らない市外局番号から「9:21」に着信があった。
よほど切羽詰まっているのだろう。
こんな朝早くから。
おおよそ昨日のレッドカーズからの連絡だろうと察しはついたが、すぐにかけ直す気にもなれず、ルパンの映画を見直し始めた。

少しして、ソファーから転げ落ちるようにフロアーにゴロン。
冷んやりするフロアーで目を覚まさせた。

シャワーを浴びに浴室に行く。
ふと久しぶりの休みをもらったことで、休みの日の過ごし方を考えてみた。
教え子で美容師のRyoに切ってもらわないと。とも思ったが、彼はカリスマ美容師…の1、2歩手前の優秀な美容師なので意外と多忙だ。
まずは、予約だな。
そもそも、
1月から髪を切っておらず、ツーブロックにしているサイドが不精に伸びていた。
見た目3枚目…いや、4枚5枚目の俺が、そんなズボラだから、モテないのだ。

一先ず、シャワーを浴びてさっぱりしてから考えよう。

熱湯に近いシャワーを頭から打たれ続け、身体が温まるのをひたすら待ちつつ、浴室を湯気まみれにして室温を上げる。
風邪やらインフルエンザが流行っている今日この頃。
高校時代のラグビー部の監督の教えが今でも生きている。
湯気を鼻から吸い、口から吐く。
そうすることで、鼻と喉を乾燥させないとのこと…と教わった気がする。
冬から春時期は自然と行っている。
そのおかげかわからないが体調を崩して、会社を休むことはなかった。
寝坊とズル休みは…仕事のウエイトが軽ければ…
心の中の悪魔に負けてベッドで横たわっていた。
それは、仕事の量が膨大だからまかり通った。

長湯は苦手だ。
パ、パッと全身を洗い、
浴室のドアを開けバスタオルを取り、
湯気が充満している浴室で全身を拭く。

腰にタオルを巻き、
温かい部屋に戻り、パンツを履き、ロングTシャツを着て、
ブラインドを開けた。
春の日差しが窓いっぱいに入り込んで来た。
しかし、木枯らしが窓を叩く。
それが嫌だ。
なんか怒られているような感じがするからだ。
いい大人が何を言ってるのかと。

そして、再び例に習いiPhoneを確認。
新着メールの数……
「98」
諦めてチェックすることにした。
自分に直接関係するメールは、45件ほどで、
残りは、共有で嫌味のように「CC」で入れてるメールばかり。
丁寧に1時間かけて、
1件1件に対してフツフツとしながら、返信していた。

時間は、いつのまにか13時を過ぎていた。

そういえばと忘れていた。
着信の折り返しを。
知らない電話番号にかけるときは本当に緊張する。
営業声というのか、
ものすごく高い女性の営業声になる。

「トゥルルルルル…」
「ガチャ」
昨日同様ワンコールで取られたので、
油断してしまった(汗)
応対した女性の方が
「レッドカーズ、スポーツ推進室です。」
おっと、
「お世話になります。
昨日連絡させていただいたのですが、担当者の早坂様がご不在で、
今朝も着信がございましたのでもしかしたらと思い、連絡させていただきましたが…
多分早坂様かと思うのですが。
早坂様はいらっしゃいますか?」
「少々お待ちください。」
形式的なやりとりをしつつ、
スポーツチームのマネージャー(主務)は、
中堅の大人な男性を想像していた。
むしろ、50歳くらいの方を想像しながら、
待つこと15秒ほど。
「お待たせしました〜早坂ですー」
おっ、女性?女子?明らかに張りのある可愛らしい声にちょっとやる気が出てきた(笑)
「昨日ご連絡いただいてたみたいで、折り返したのですが…ご不在だったので…連絡を再度せず申し訳ありませんでした。
今朝方お電話いただきましたよね?」
「えっ?昨日連絡いただいてたんですか?
なんのメモもなかったから…それと今日事務所お休みの日でしたよね…」
知ってたのか。(意外と心の声が漏れている)笑
でも、それでも連絡をしたということは、よほどのことだろうと思った。
「本当にすみません!電話しといてそれに気づいてワン切りしちゃったんですー。本当にお休み中にすみません。」
「休みですが、なんだかんだで仕事してるので変わりませんよ。そんな改まらなくて大丈夫ですよー。ところで?」
その言葉の後、食い気味で…
「そうなんです!今週末の大会についてなの!」
だろうなとは確信を持ちつつ、ん?若干タメ口だったのに驚いた(笑)
実施要綱の冊子をあらかじめ用意していたが…
「私、7人制というか、競技そもそもがわからないんです…」
『おっと、そう来るかー。』
と思いつつ、今度は自分の頭の中にある経験史と、大学の時に受けたスポーツ史を頭の片隅から引っ張り出す作業をし始めた。
準備万端を装いながら、
「何についてわからないの?」
「7人制の大会について、そもそも…」
「じゃあ手元か、パソコンにマニュアル(実施要綱と競技に関する説明冊子のこと)ありますか?」
「はい!それは、主務からメールで共有してもらっているので!開くので少し待っててください!」
なんか、久しぶりな感じがした。女子?女性と仕事の話だが、頼られている感覚。

「もしもし?開きました。」
「じゃあ、大会のルールから説明するから3ページ目を…」
と、わからない彼女のために言葉を選んだり、彼女の得意分野の話に例えながら20分くらいレクチャーをした。

「主務の方に送った選手登録シートを1回、木曜日までに記入して、提出してほしいんだけど、何か聞いてる?」
「…いえ。」
「じゃあ、改めて早坂さんにもメールで送るからコーチ陣にプッシュしてほしいんだ。だから、会社で使ってるメールアドレスを教えて。」
「わかりました!では…」
と、教えてもらったものを目の前のパソコンのメール作成ソフトの「TO」の欄に打ち込み、
復唱して確認をとった。
仕事の会話だったが、素直にスポンジのように聞いて、わからないことを質問してくれる彼女とのやりとりがとても心地よかった。
「あー塚越さんみたいな人が、職場にいないんですよねー。」
「?」(どゆこと?)
「フロントサイド(チーム運営側)と現場側を理解してくれる人がいなくて…実は、私3日前に退院したばかりで、復帰して任されたのが7人制の大会なんです。」
と、周りにスタッフがいるのか小声に(笑)
「そーなんだねー拙い説明で分かりづらかったと思うけど、何でもわからないことは聞いてね。」
「塚越さん、なんか話しやすいから、また、たくさんご迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします!」
「ちなみに、早坂さん何歳なの?若いでしょ?」
「何歳くらいに感じます〜?」
少し考えたフリをして、
「23歳くらい?」
と答えた。
だけど、声とか雰囲気はそんな感じなのだが、大人びた感じというか、少し自分の世代に近い考えというか、自分に近い考えなので27.8くらいかと感じた。
「えーうれしいー!
実は26の年の25歳なんです!」
「しっかりしてるなーって思ったもんなー。じゃー俺は何歳に感じる?」
すごく間が開き…
「32歳!」
まー感じがフランクで、ライトな感じだからそう感じたんだろう。
「ありがとう。34歳の年の33歳と346日だよ(笑)」
「誕生日もうすぐなんですね!」
と、さりげなく伝えてみたりした。
「ところで、チームに俺みたいな大人いるでしょーよ?」
間髪入れずに、
「ぜんぜん…選手はみんな優しいんですけど、コーチも。でも、部署内はなんか冷たいというか他人行儀で…」
そういうものなのかと不思議に思った。
彼女が仕事場からの電話ということを忘れトータル40分ほど話が続いてしまい、
「ごめん!仕事中なのに長々と…」
「大丈夫です!すごく楽になりました。」
「今度ご飯でものみでも行こうよ。」
初見?初トーク?顔も見せ合っていないのに、
不届きと思いつつ、つい誘ってしまった。
社交辞令を言える程器用ではない人間なので、
自然に出てしまった言葉。前世はイタリア人という噂が…
「ぜひー!」
嬉しそうに言ってくれたのがとても幸せに感じた。
こんな感覚本当に久し振りだった。

また、話したいと思ったのは言うまでもない。

それが、彼女との出会いだった。

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