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#14-3 「The beginning of the week #3」

彼女のグラスに注ぐが、注ぎづらく氷がドバドバっと出てしまい少しこぼしてしまう。
慌ててナプキンで拭く(汗)。
自分グラスにも注ぐが、もったいないことにこぼす。
ほんと不器用なことが腹立たしい。彼女は冷静に携帯をひょいっと濡れないようにかわしていた。
「不器用でごめーん!」
「ゆーたさん酔ってないよね?(笑)」
と、心配される。それくらい不器用。

「「かんぱーい!おつかれさーん!」」(※「「」」は同時発声)

という事で改めてキックオフ。
彼女は2ラウンド目に突入する。
そして、店内にいるフレッシュマンたちはとめどなく騒いでいる。
 
「ところで接待だけど、どうやって抜け出してきたの?
2次会行くよって誘われたでしょ?」
「それはね、特に説明なく普通に『早坂帰りまーす!』って言ってきた。
監督もわかったって言ってくれたしね~」
「監督と?の接待で大丈夫だったの?」
「だいじょーぶ!いつもの人たちの付き合いだから!」
少し心配になった。
が、時間が戻るわけでもないし、俺との時間を優先してくれてることは素直にうれしかったのは『間違いない』俺の気持ち。
彼女のグラスが空くたびに俺は注いでいた。
っていうかやはり早いeeeeeペースで飲む。
俺もなるべく合わせて飲む。
がしかし、俺にしては長距離を100m走で走るくらいダメになるペースで飲んでいる。
だけど、飲むことで心が気持ちがオープンになるのがわかる。
いわゆる陽気になるという感じだ。すなわちそれは酔っ払い…
それと身体が火照ってくる。
壁に寄りかかり彼女を見つめる。
テーブルには1リットルのフラスコ容器と二人のグラスしかない。
それをあえて真ん中を開けるようにしてどけ手を出して彼女に促す。
彼女はからかって少し躊躇して遊んでいた。
ふてくされそうにして焦らそうとしたら、『さっ』と差し出してきた。
酔うと【S】気になるのが…たまらなくドキドキする。
って、
【M】なわけじゃない。
俺は、どちらでもいい。
相手が受動的なら能動的に。
能動的なら受動的にすることは苦ではない。
これも『いいひと』になってしまう所以なのかも…しれない。
フラスコ容器がものの10分ほどで空いてしまった。
今度は彼女が買ってくると言って同じものを買ってくる。
彼女が席を立っている間、彼女の後ろのスペースでフレッシュマンズが羽目を大きく外し始めた。
目の前のカウンターでは座り込んでグロッキーになっているフレッシュマンとフレッシュウーマンが。
酔いが回りつつあったが、その光景に少し『イラっ』としていた。
同期だけではなく先輩と思しき人も何人かいる。
その偉そうに先輩ぶっている先輩が気に食わなかった。
飲ませるだけ飲ませて放置すること自体が…いかんいかん、俺と彼女の楽しい時間が台無しになる。
彼女がフラスコ容器を持ってニコニコ笑顔で戻ってくる。
今度は彼女が丁寧に慣れた手つきで、いい塩梅に注いでくれる。
注がれるたび乾杯して飲みだす。

お店が2次会、3次会のフレッシュマンやらカップルやら仕事終わりのサラリーマンが止め処なく6階のHUBに入店してくる。さらに店内が賑わう。
「「ドン!」」
彼女の後ろで騒いでいたフレッシュマンの1人が彼女に当たった。

俺は席を立ち、5~6人で煽りながら飲んでいるフレッシュマンの集団に向かって行った。

「恵、席変わろう。」
「うん、でも、大丈夫だよ。」
「そういう問題じゃない。」
俺の席は入り口前で外気が入り寒い。
だけど、移動してもらった。
何かに巻き込まれて何かあってからでは遅い。
彼女が移動して場所を変わっている時。
フレッシュマンに向かって歩み寄って…淡々と

「申し訳ない、限度があると思いませんか。
もし周りに迷惑をかけるなら出て行ってもらえないかな。
それと上司か先輩呼んでもらえますか?」
フレッシュマンの割と酔っていない奴が俺に、
「すみません!ご迷惑をおかけして。戻りますので。」
そういう問題ではない。
部下の粗相は上司の粗相。
上司の粗相は会社の粗相。
「いや、先輩か上司を呼んでほしいとお願いしているん、だけど。」
語尾を強めに言った。
「もうしませんので。」
店員がお店がごった返しているなかそわそわしているのが見えた。
周りのどんびいていたお客も俺に賞賛の目で向けている。

そんなのはどうでもいい。

「わかりました。気分よくみんなが飲めるようにしてくれたらいいから。君たちのオナニーなんて興味は無いから。」
バツが悪そうに元の場所に戻って行った。
先輩らしき人に笑われていたのを見かけた。
責任の取れない飲み方を教えるやつが上司・先輩で可哀想だと思った。

振り返ると店員さんが、
「申し訳ございませんでした。」
「立場上言いづらいでしょう。自分たちだけ楽しいっていうのはあれなんで。」
『あれ』ってなんやー
「ありがとうございました。」


席に着くと、彼女がぼーっと俺の方を見ていた。
俺は酔いが若干冷めていたので、目の前にあったグラスを飲み干した。
『あっ』これ彼女のだ(汗)
「ごめん!恵の飲んじゃった!
あと、ぶつかったの大丈夫?早くに席替えしなくてごめんな。」
「…」
「?」
若干言葉を探している感じがした。
俺にできることはこれくらいだから。

「こんな人もいるんだって、見てた。」
「『こんな人』って?」
「危ないから席替えしてくれて、新人くんたちに注意しに行ってくれたり。」
「いやいや、恵に危ない想いさせたないし、楽しくないじゃん!俺が嫌な思いしてもいいけど恵は…」
「なーにー?」
次の言葉を言いかけたその時。先程のフレッシュマングループの二人が謝りに来た。
「先程はすみませんでした。」
俺も鬼ではない。
若かりしき頃はいろんな人に迷惑をかけた。と思う。恵にも当たったことに対して謝罪をしていた。
「大丈夫だから。ね!楽しく飲んでー」
と声をかけていた。
もう一人の奴と俺が話している時に、恵と話していた奴の会話がなんとなく嫌な感じがした。
彼女の表情を見ても『しつこい』感じのオーラを出していたように見えた。
「ごめん。俺と彼女、時間がないんだ。楽しませてくれないかな。」
と、キザな言葉が出る。
『これ、俺?俺なの???』

「すいませーん」と行ってまた、元の場所に戻って行った。
彼女は嬉しそうにグラスの中のモヒートを飲み干していた。
「「あっ、俺の(ゆーたの)グラス(笑)」」
シリンダーの中身がなくなったので最後の一杯といことで、俺が買いに立った。
彼女はなんか機嫌が良さそうだ。
例に習ってまた、俺が注ぐ。こぼす(汗)ホントほとほと不器用で学習能力が低い自分の不甲斐なさを呪う。
それを見る彼女はニコニコしていた。
年上なのに子供みたいに見えて笑えて楽しいのかな?と思っていた。

「さっき新人くんに口説かれてたでしょ?」
「えっ?口説かれてないよーだー!」
「何話してたの?さー?」
「気になる?」
気にならないほど人としての器が大きくないことを今日知った。
いや、【好きな人】が目の前で俺をそっちのけで他人が声かけてたらそりゃいい気分はしない。
「気にならないわけがない。だって絶対口説かれてると思ったから。
彼も俺が目の前にいるのにもかかわらず…だよ?女々しいね。ごめん。」
「ううん。新人君ね、ゆーたさんのこと【旦那さん】じゃなかったら口説いてもいいですかって、言ってきたの。
そこで、ゆーたさんが追っ払ってくれたから口説かれてないのー!」
「旦那って…」
「ゆーたさん。ありがとう。守ってくれて。」
「いや、なんていうかさ、楽しい時間を邪魔されたくないし、危険に感じたから。恵を守りたいって思っただけ。」
「そんなこと考えてくれてる人。初めてで。」
コップに注がれていたモヒートを一気に飲み干した。

今度は黒人っぽいフレッシュマンがやってきた。
「どこかで見たことあります。ラグビーしてましたよね?」
と、俺に向かって声をかけてきた。『もういい加減二人の時間にしてくれー』と思いながらも、
「昔ラグビーしてたよ。ちょっと前はラグビーを教えてて、今は運営側をやってるけど、なんで見たことあるって思ったの?」
「あ!監督さん!ですよね?」
俺が最後に勤めていた学校のことを言われてハッとした。
「あのチームにいなかった?君?」
「いましたーー!」
と、話に花が咲いてしまった。彼は、俺と話すことが目的ではなく財布を落としてそれをテーブル毎に話をかけていたというわけだ。
彼女が、
「外で先輩とか同期の子が持ってるかもしれないから確認してきた方がいいよー」
と、心配しているのか苛立っているのかなんとなく察しはつくが彼は、へべれけ状態で地上に降りた。
「ゆーたさんは知り合い多すぎ!」
「いや、70億分の1の確率はそうそう当たらんよ。」
お互い最後の一杯を飲んで店を出ることに。
俺は、気分良く酔っていたが、ちゃんと彼女の手を握っていた。時刻は22:15。入店小一時間で、こんなにハプニングがあるなんて、流石欧風公衆酒場。
まだ、一緒にいたいと彼女が言う。
もちろん俺もそうだが、週の始まりだから、あと少し歩こうと思った。

新南口バスターミナルの前の景色が見えるベンチに体を寄せ合い座った。周りには人がいない。週の始まりということなのかどうか別にしても人がいない。
「今日は色々あったー(笑)」
「いや小一時間でしょ?あり過ぎ…」
「でも、ゆーたさんのこと知れたー」
「どんなところを知ったの?」
「じぇんとるーまん!ってこと!私をちゃんと女性としてみてくれてること!」
無性に愛おしくなり、頭を撫でキスをした。
不意を突かれた彼女は、受け入れ、少しの間唇を寄せていた。
こうなると彼女のリミットが外れる。
酔っていることと触れていたいということとキス魔の彼女は大胆になる。
一つ言えることは『好き』だということ。
高校、大学とろくに女性と付き合ってきたわけではないからその反動が今に来てるのではと?
名残惜しいが、新南改札口から埼京線ホームに向かう。
少しごった返す中ドア付近に身を置けた。
彼女の最寄りは『浦和』。
「池袋でおりるんでしょ?」
「浦和まで行きたいけど?」
「だめーー遅くなるから。」
発車した。
「別に変わらないよ。恵をちゃんと送りたい」
車内は仕事帰りの人たちとほろ酔い気分な人たちで割合を占めている。
スマホを見ていたり寝ていたり様々だ。
誰も他人に興味を示すことのない空間。
「明日は?」
「明日は朝練だー朝早いーよ」
など、スケジュール確認したりさっきの出来事を話していた。
少し電車が揺れた。
ギュッと体を抱きしめる。離れる。顔との距離は近い。
「キスしていい?」
と小声で聞く。
「電車の中ではダメーーー」
を御構い無しに唇を奪う。
「もーーー」
と、彼女は顔を赤らめて言う。
「牛さんがいるーー(笑)」
彼女は嬉しそうにしているが、周りの目も気になっていたのは言うまでもないが、俺は酔っていてなんのことかわからないのも言うまでもない。

しばらくして、池袋に着く。
彼女とまだいたい。俺が降りようともしないから、
「池袋だよーー」
と言う。
「赤羽まで、ならいい?」
「うーーーん。仕方ないなー(笑)」
いつのまにか彼女が上位になっている。でも、楽しければ良い。
池袋から赤羽は10分くらいで着いてしまう。
言葉はいらなかった。
手を繋いで顔を目を見ているだけで幸せだった。
恥ずかしそうに目をそらす彼女が可愛かった。

【間も無く〜赤羽ー赤羽ー…】

もう着いてしまった。
【プシュー】
「またね。気をつけてね。」
「赤羽までありがと。」
降りるお客に紛れて外に出る。ドア側で俺を見つめる目が切なそうだった。口パクで『ありがとう。電車来てるよ。』
俺も『大丈夫。ありがとう。おやすみ』と。

発車して彼女も俺も見えなくなるまで、見つめていた。

23:30

週の始まりがこんなにハッピーになるなんて知らなかった。

to be next story...

(あとがき)
【ゆーた】がカッコよく見えちゃいますねー
酔ってると正義感も出てきちゃうやつなんです!笑
カッコ悪い【ゆーた】もまた、たくさんありますので、
ファンになってください!
【恵】は可愛すぎですね。
下手に女性を描けない…自分の弱さですねー

写真は引き続きオーストラリアのホテルから海のものになります!

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