小説「帝冠の恋」感想:ゾフィーの物語

『帝冠の恋』 須賀しのぶ 著 徳間文庫

ミュージカルエリザベート観劇後、SNSで流れてきたこちらの小説。
これを読むと物語の内容理解をより深くめることができるということで読んでみた。

ミュージカルではシシィ(=エリザベート)と折り合いが悪く、伝統としきたりを重んじる「悪役」として登場する義理の母ゾフィ。そのゾフィの若かりし頃の物語なのだが、この小説を読むとまた違った視点からゾフィという人物を見ることができる。

賢く、自由奔放な少女時代から描かれるこの物語は、最初読み始めた時、実はシシィの物語だと思っていた。それほど若かりし頃のゾフィはシシィと似ている。賢く、美しく、男勝りで社交界の華といわれた存在。決定的は違いはゾフィは公のため私を捨てたこと。一方シシィは「私の人生は私のもの」と言って自分の生き方を貫き、晩年は国を離れ旅に出てしまう。

息子のフランツがマザコンなのも、出生の秘密を知ると納得がいく。大切に育てられたのだろう。そんな息子の結婚相手として自分の意のままにできず、国のために私生活を犠牲にしないシシィと馬が合わないのは当然だ。

とにかく、あの劇中ではお堅く意地悪なゾフィーが若かりし頃は絶世の美女といわれ、あんな大恋愛をしているとは。
もともとはバイエルンの王族出身でありながら、嫁ぎ先のオーストリアという国のために使命感をもってあそこまで尽くしたのはミュージカルには描かれていない姿だ。むしろシシィが自由奔放すぎてわがままな悪役にさえ思えてくる。
もちろん史実をもとにしているとはいえ小説なので脚色はあると思うが、とにかく壮大で、これだけでミュージカルが1本できそうな、ドラマチックな物語であった。

ライヒシュタット侯爵は身長180センチ越えの繊細な青年ということで、ミュージカルでルドルフを演じていた甲斐翔真さんで再生されていました。
東宝さんあたりでミュージカル化どうでしょうか?

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