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メンテナンス業務とリスク管理

これまで、企業や組織が「環境(EMS)」や「社会的責任(CSR)」や「持続可能性(SDGs)」に配慮しつつ日常業務を続けていくことは簡単でないので、「マネジメントシステム」という「組織内のルール体系」を活用して、「両立しにくい大切な価値」を「なんとかかんとかうまくやっていく(両立させていく)」つまりマネジメントしていくという話をしてきました。

そのマネジメントシステムという組織内ルール体系の枠組み「PDCAサイクル」は、「計画通りに実施しているかどうかを検証し見直し改善を繰り返す」と淀みなく連続して読まなければならない、とも書きました。
このような表現を使ったのは、「(計画と実施は)つながっている(ロジカルである)」ということを強調するためでもあります(計画と実施を別々に扱っているケースをたくさん見てきたので…)。

「計画通りに実施する」という点を強調することで、「P」計画ステップと「D」実施ステップとの間の実践的な関係性が見えてきます(これが見えれば効果的な運用を始めるきっかけにできるので…)。

その「P」計画ステップの二本柱「メンテナンス」「イノベーション」の違いを中心に、環境マネジメントシステム(EMS)、CSR、SDGsの活用方法を提案してきました。
今回は、この「メンテナンス」に絞って、「計画通りに実施する」という関係性について具体的に書いていきます。

「メンテナンス」業務とは、ある企業にとっての「ドル箱の商品(あるいはサービス)」を、「顧客」という「その組織にとって最重要な利害関係者」が、すでに満足してくれいて、お金を出して買ってくれて、その性能や品質などを「信頼」してくれて、その「信頼を裏切らない」ような商品(サービス)を製造(実現)していくための、すべての業務を指します。

したがって、「工場の製造ラインで製品を完成させる業務」だけではなく、素材や半製品の仕様を決定し発注する業務、物品を運送する業務、営業・販売の業務、料金の決済業務なども含まれますね。
こうした製品に対して顧客が抱く「信頼」は、たとえば性能・品質の点で不
良品でないこと、安全であること、表示等に嘘や誤植がないこと、一定の製品寿命、タイムリーに入手・利用できることなどなので、確かに「責任を果たす」主役はもちろん製造部門ですが、調達や運送や販売の担当者も不可欠なサポーターなのですね。

これら「メンテナンス」業務は、「今すでにできていること、良い状態、100点満点」をキープすることがお仕事ですから、「正しい業務パフォーマンス(結果、成果)を毎日繰り返す」という地味なものですが、一見すると華々しい「イノベーション」業務に比べて決して劣りません。
一家を支える「ドル箱」であるばかりか、「単なる顧客(たとえば一回限りの顧客)」を「ファン」や「リピータ」への引き上げるのも、こうした「メンテナンス」業務の積み重ねによるもので、自社の財産ともいえる「身内同然の利害関係者」をキープ(確保)していくという大切な役割を担っているということでも、その重要性をご理解いただけると思います。

PDCAの「P」計画ステップの「メンテナンス」業務は、多くの顧客からの「信頼を裏切らない」ために「昨日やったとおりに今日もする」つまりリピータビリティ(再現性)の確保・維持を目指します。
前述のように、「不良品を出さないこと」、「納期を守ること」、「製品が安全に使用できること」など「P」計画ステップで想定したことを、「D」実施ステップでの業務実施ルールとして個別に策定して周知して遵守していくというルーティーンが生まれます。
このルーティーンを順守していけば、結果として顧客からの信頼を裏切らない「良い状態」が維持されます。

だから、悪いことが起きないように「心配をしまくる」という姿勢が大切です。楽観主義は禁物で、悲観主義者の方が向いています。
まずは、「心配な点」をたくさん洗い出します。
何も心配しないことは、何も準備しないことにつながってしまい、運を天に任せることになってしまいます。
何か一つでも異常な事態が発生すれば、たちまち「信頼を裏切る」ような結果につながってしまう恐れが生まれます。
たとえ「結果的に」であっても、「信頼される側」の企業・組織は「信頼を裏切った」その「責任を取る」必要が出てきますから、「信頼を裏切らない」ことを目指す姿勢が肝要で、それは「心配しまくる姿勢」に通じます。

そこで、心配することも「D」実施ステップで、予め準備しておきます。
たとえば不良品を作らないための「心配な点」を具体的にすべて洗い出して、その心配が不良品という悪い結果につながらないような工夫や対策を「予め」決めくのです。
「予め」不良品を「防ぐ」ということで、「予防」です。
そして、予防対策をいくつも準備していくと、本来の業務プロセスそのものを変えていくこともあるでしょう。
より強固で確実な仕事のやり方に改善されることは、これだけでもマネジメントシステムの成果といえるでしょう。

しかし、いくら予防対策をつくしても、万が一、まさに運悪く「信頼を裏切ってしまった」としたらどうするか。
もちろん、「責任を取る」ことになりますが、その「責任を取るためのプロセス」も、「D」実施ステップの一環として、「予め決めておく」こと、これがとても大切です。
日常的には何ごとも起こらないことが当たり前なので、誰もが慣れていないのです。
だからこそ、こうした非常事態、緊急事態というきっかけに対しても、「D」実施ステップで「決して狼狽(うろた)えない精神的な強靱(きょうじん)さ」を身につけておくべきなのです。
狼狽えると、ろくな事がありません。
人間は弱いので、慌ててしまって、つい嘘やいい加減なことを言ってしまうことがありますが、これは最悪です。
さらに、徒(いたずら)に時間を浪費することも御法度(ごはっと)です。
被害が拡大してしまう危険性があるからです。
被害を最小限にする努力を怠らないことはもちろん、2次被害を予防する配慮も不可欠ですよね。
こうしたことにスピーディーに対応するためにも、そうした事態・状況に陥ったときの手順(手はず)をルールとして予め定めて準備をしておけば、狼狽えずに安心して無駄に時間を浪費せず正しい対応ができます。
予め対応方法をルールとして定めておくことの大切さがわかります。
一般に、様々なトリガー(きっかけ)あって、次の事象たとえば不具合(機械装置の故障)や事故(爆発)や人災(火災)などを引き起こします。
その次に被害(害悪を被ること)が発生します。
モノによっては「トリガー⇒不具合等⇒被害(害悪)」がシームレス(つなぎ目なし)に発生してしまうこともありますが、シリーズで(順を追って)発生する場合には、それぞれの「次の事象」につながる前に止めるための工夫を事前装備させることが可能です。
もちろん、トリガーそのものを排除することができればそれに越したことはありません。
たとえば「有害物質による地下水や河川の汚染」という害悪の想定では、その有害物質を使用しないような業務プロセスに変更してしまえば、トリガーそのものが除去されますから、リスクそのものが解消されます。
しかし、地震や落雷や犯罪などはそれができません。
できないなら、発生確率の高低にかかわらず、「現に発生したことを想定」して、その後のプロセスの対応準備を進めます。

もう一つとても大切なことがあります。
それは「是正」のプロセスです。
「是正」は「単なる修正」ではありません。
よく聞く言葉でいえば「再発防止」です。
ソリューション(問題解決)ともいいます。
再発防止のために問題を根本的に解決するには、次の3ステップを使います。
①真の原因を発見する。
②原因を除去できる対策を発明する。
③発明した対策を実行する。
・・・このあたりは、また次回に。(*^_^*)

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