第52話 ドールの街には危険がいっぱい？

興味津々なサンタ・ネネ

「そう言えば、オレンジちゃんはドールの街まで戻ってたんだよね。そこってさ、どんな街なの？」

道化師どうけしのオレンジは、ネネから質問されて思わずハッとします。
そういえばそんなことを言って、バイクのサンダー・ボルトに街まで送ってもらっていたのでした。
実は真夜中のサーカス団の次の公演地候補がドールの街だというのは、咄嗟とっさについたウソでした。
そんな公演予定は、最初からありません。

しかし月のルーナに報告した「ドールの街に悪霊あくりょうがたくさん集まってきている」というのはホントの話です。
日が暮れる夕闇ゆうやみの時間から、日が昇る夜明けの時間まで、街中に悪霊あくりょうが大量に出没しているようでした。
現在ドールの街の市長から緊急事態宣言が出されていて、全市民に対して「夜間の外出禁止令」が発令されています。
夜の街中を彷徨さまよう悪霊あくりょう達に見つかり身体に触れられてしまうと、魂が引き抜かれて地獄への道連みちづれにされてしまうからです。

不気味な雰囲気が漂う夜のドールの街

街の教会から魔を祓はらう「聖水せいすい」の小瓶こびんが、全世帯に支給されています。
しかし残念ながらこの聖水せいすいには神の力は宿っておらず、ただの水だった為、悪霊祓あくりょうばらいの効果はありませんでした。
教会の司祭しさいが手順に沿い、神に祈りを捧ささげて作成していたのですが、聖水せいすいにはなっていなかったのです。
これは、人間側の信仰心しんこうしんの欠如けつじょから起こっている事象じしょうではありません。
人間に興味を持たなくなっている天上界てんじょうかいの神々が、人間の願いを全く聞き入れていないことが原因でした。

使い物にならない教会の聖水（ただの水）

現在人間界に存在する聖水せいすいは、ネネが持っているウルズの水筒すいとうから無限に湧わき出る「神聖水しんせいすい」だけでした。
そんなことも露知つゆしらず、ネネは今またもや水筒すいとうから神聖水しんせいすいをがぶ飲みしています。

「えっとね、そこそこ大きな街だよ。交易都市こうえきとしって言って商売が盛んで行商人ぎょうしょうにんの出入りも多いから、いろんなお店がいっぱいあるよ」
「もしかして、アイスクリーム売ってる？」
「あるよ。あとはネネちゃんが好きなマンガってやつも、本屋を探せばあるかもね。でもそんなにドールの街に、興味あるの？」

ネネの大好物はバニラアイスなのですが、天上界てんじょうかいには存在しない菓子だったので、かれこれ２００年近く食べていないのです。

マンガも大好きで、人間界にいた頃はあれこれ読みまくっていました。
当時夢中になって読んでいたのは、ダークヒーロー系の物語です。
特に「美少女戦士ダークムーン」や「BadManバッドマン」など、悪を持って悪を倒すマンガが大好きでした。

バニラアイスも、マンガもある街。
そんな情報を聞かされたネネのワクワクは、もう止まりません。

「興味あると言うか、次の目的地がそこだから」
「う～ん」
「どうしたの？」
「ネネちゃん、あそこって今、まずいことになってんだけど大丈夫？」
「何かまずいことでもあるの？」
「夜になるとね・・・悪霊あくりょうがいっぱい出てくるんだけど」
「ん～～～」
「どったの？」
「えっとさ」
「うん」

「悪霊あくりょうって何？」
「え・・・」

ネネは魔物や悪魔の事は知っていましたが、悪霊あくりょうは知りませんでした。
そもそも冥界めいかい、そして地獄界にしかいないはずの存在なので、彼女が知らなくて当然です。

「悪い人間が死んだ後に、身体から抜け出た魂が悪霊あくりょうになるんだけど、やっかいなことに悪霊あくりょうになってからも悪さを続けるんだよ」
「どういうことするの？」
「そうだなぁ、例えば一番ひどいのは、生きている人間の魂を奪って地獄への道連みちづれにしたりするね」
「こわっ」

道化師どうけしのオレンジは、ドールの街の住人は夜になると外に出ることが出来ず、皆が怯おびえて暮らしてることを説明しました。
ネネは最初はバニラアイスにつられて興奮していましたが、その話を聞いて少し難むずかしい表情に変わります。
何やら考えているようでした。

「悪霊退治あくりょうたいじか・・・私にもできるのかな」

ネネは正義感からなのでしょうか、そんなことをポツリと呟つぶやきます。

今度はなぜか道化師どうけしのオレンジも、悩なやましげな顔になりました。
呪いのキノコと戦ったネネなら、悪霊あくりょうも大丈夫だろうと勝手に思い込んでいたからです。
でも彼女は、悪霊あくりょうそのものを知らなかったという事実に驚きます。

ネネの師匠である死神は、悪霊あくりょうを狩る仕事をしている神でした。
なぜだか理由はわかりませんが、彼女にその事を教えていないようです。
急に心配になってきました。

オレンジはしばらく考え込んだのち、何かを決心したように頷うなづきます。

うん、きっとうまくいくはず

「ちょっと死神に相談してくるね」

ルーナにそう言い残すと、死神の元へ小走こばしりで駆かけ寄って行きました。

オレンジは、悪霊あくりょうを操あやつる者がサンタ・ブラックの幹部だった場合は都合が悪いので、悪霊退治あくりょうたいじに関しては参加しないと言っていました。
まさかとは思いますが、自分も参加するつもりなのでしょうか。
そうでないとしたら、今さら何を相談しに行くというのでしょう？

「あいつ、いつも突拍子とっぴょうしもないこと思いつくからな。今度はいったい何だ」

月のルーナはオレンジを見ながら、ため息をひとつ付きました。

つづく

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【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

オレンジが急に不安になった理由とは、悪霊あくりょうは群むれる習性しゅうせいがある為、対決する際にはネネと死神とルーナの連携が非常に重要になってくるからです

オレンジは、自分も参加した方がいいと判断しました
そしてとんでもない解決策を思いついたようです
しかしその策を実行するには、「ある奥義」を死神に伝授でんじゅしてもらう必要がありました

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます