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ノーサイド・ゲーム⑩最終回「ノーサイドの精神こそ今の時代に必要」

最終回ということで、超長いですが、お付き合いください(笑)あらすじは時間があったら読んでみてくださいね。

あらすじ

サイクロンズとの最終戦に向け練習をするアストロズの前に現れた謎の男、櫻井翔。その正体は、他クラブに新しく就任したGMだった。クラブを変革する為に、アストロズを参考にするよう言われ、リサーチに来たのだった。君嶋は、ラグビー協会が変わりつつあることを実感する。

ラグビー協会専務の木戸は、以前はリーグを盛り上げる情熱を持っていた。W杯招致にも尽力したが、政治の力がなければどうにもならない。そこで、富永大臣を会長に据えて従うしかなかった。しかし、改革を望むのは君嶋だけではなく、所属クラブのGM達も動き始めた。日本のラグビーの未来を守る為に、反旗を翻すのか。

君嶋は、脇坂常務と風間の関係を探っていた。左遷された滝川の元に行き、脇坂と風間が高校の同期だと言うことを掴んがことを伝える。
アストロズの未来を左右する取締役会の前、アストロズの面々は、君嶋に感謝の思いを伝える。どんな状況になっても、全力で戦って、サイクロンズに勝つ。だから、今度の取締役会、全力で戦って来てください。と背中を押される。君嶋は、「ラグビーと違って、私の戦いにはルールはない。私も命をかけて全力で戦う。」と覚悟を決めた。

取締役会当日、本社に向かい君嶋。頻りにスマホを気にする君嶋。会議が始まると、脇坂常務は、アストロズの予算を削減することを提案する。毎年14億円もかけて、総額450億円を投じ、リターンなし。ラグビー協会にお金を流しているようなもので、アストロズは必要ない、と述べ、次に君嶋が発言する。
アストロズは昨年から、優勝争いをするほどまでになり、地元密着の活動で、ファンクラブもでき、ジュニアチームもできたことで、トキワスタジアムは満員にできるようになり、1.5億円の利益も出した。2シーズン前とはもう違うと言うこと。アストロズは、数字の集まりではなく、人の集まりだと。コストだけで切り取れるものではないと言うが、脇坂は協会の問題を一点張りで、富永会長が変わらなければ、今後黒地に変わることはないと断言する。会長が変わることはないと踏んでいたからだ。君嶋はスマホを見るも、我慢は黒いまま。脇坂は、決を採るよう社長に迫る。

採決を取ろうとしたその時、君嶋の元に連絡が入る。予算取締会の裏で、富永会長に反旗を翻し、富永を解任することが決まったのだ。今度は14億というコストを強調する脇坂だが、社長は、企業は、営利目的だけでなく、社会貢献も必要だという。社会が楽しめる何かが必要だと。それをアストロズが担えたら、こんなに素晴らしいことはない。その発言に、脇坂の提案は取り下げられた。
コンプライアンス問題についていう次の議題に変わっても、席に座らない君嶋。脇坂が「さっさと出て行け!」と言うが、この議題は君嶋の提案だった。滝川元常務が進めていたカザマ商事買収に置いて、脇坂主導で滝川の計画を阻止したことで、脇坂は常務になったが、事故の偽装や買収案は、脇坂が風間に持ちかけたものだった。滝川と風間の仲を利用し、問題を抱える案件を進めさせ、滝川を陥れ、自らを立役者にし、常務になる為の「ジョーカーゲーム」だったのだ。
その繋がりや証言を集め、証人として現れたのは風間だった。それにより、脇坂のジョーカーゲームは失敗した。自分の出世だけの為に仕掛けたジョーカーゲームは、正々堂々のラグビー精神を持った君嶋によって打ち砕かれ、解雇となった。

君嶋家では、夫の労を労う妻。残るはアストロズの優勝のみ。ラグビーの良さを伝え、スタジアムに来てもらうように、席を用意するから来て欲しいと言うと、「却下!」といつものように言われるが、「もう自分で買っちゃったもん」とついに妻が動いた。念願だった家族全員での「レッツ!ラグビー!」が揃った。

決勝の舞台は福島。震災復興をラグビーでも応援するのだった。

試合前のミーティング。君嶋は皆に声をかける。

「君たちに出会った頃、ラグビーなんて大っ嫌いだった。しかし君たちは、ラグビーの素晴らしさ、人生の素晴らしさを教えてくれた。君たちに出会えてよかった。アストロズに出会えてよかった。私は、ラグビーが大好きだ!!今日ここで、君たちと最初に出会った約束を果たそう。優勝だ!!」

これ以上ない鼓舞に、アストロズは一つになる。

浜畑は怪我でベンチスタート。勝負の鍵は、七尾が勇気を持ってトラウマを乗り越えたかどうか。スタンドでは、アストロズがここまで来たのは君嶋のおかげだ。凄い人だと言う声に、照れながら喜ぶ妻だった。

気合いみなぎるアストロズはいい立ち上がりを見せるが、サイクロンズは、元アストロズの里村の予想していなかった作戦により失点し、攻撃の幅が広がったサイクロンズにペースを握られる。そして、七尾のタックルでボールがこぼれる。今までではラックに入れなかった七尾は、勇気を持ってラックに入る。トラウマを克服したが、七尾は徹底的に狙われ、攻撃の芽を摘まれてしまう。クセ、攻撃パターンを見事に読まれ、アストロズの攻撃はことごとく止められる。

チームの精神柱である浜畑がベンチにいたことで、支えがなく、波に乗れずにいた。以前浜畑を引き抜こうとしたサイクロンズだったが、本当に欲しかったのは、里村ではなく浜畑だった。それくらい、メンタルがモノを言うスポーツだと語る。

前半、26−6とサイクロンズ大量リード折り返す時、スタンドからは応援歌を歌うファンたち。以前、キャプテンのテツが言っていたように、地域の為、ファンの為にやっていたことが、何倍にもなって自分たちに返ってきた。試合はまだ終わってはいない。

ハーフタイム、浜畑に声をかける柴門監督。怪我を押して出場する浜畑に、七尾は交代だと覚悟し、「お願いします、浜さん」と託すと、柴門は「何言ってる。お前も出るんだよ」とぶっつけ本番で、「ダブルスタンドオフ」という、柴門が描いていた作戦を決行する。

ピッチに向かい浜畑に、君嶋は「怪我は大丈夫なのか?」と声をかける。「正直よくはありません」と言う答えに、「今後の選手生命に関わるんじゃないのか?」と心配する。浜畑は

「今後?そんなもんありません。俺の選手生命は、今日で終わりです。GMには、心から感謝しています。アストロズがここまでこれたのも、あなたのおかげです。ありがとうございました。俺も、あなたに会えて良かった。」

と頭を下げ、ピッチに向かう。浜畑を呼び止め、君嶋は浜畑を抱きしめ、男泣きをする二人だった。

浜畑は、七尾を呼び止め言う。「この点数差では、皆負けるかもと思ってる。どうすればいいか。点差や。お前にはとんでもない武器があるやろ。」と、アドバイスする。七尾と浜畑のダブルスタンドオフによって、攻撃の幅が一気に増えた。そして、七尾のキックによってドロップゴールを決め、点差を縮める。2トライ差まで追いつき、七尾のキックを囮に、ついにトライを決める。その勇姿を、滝川もテレビで息を飲み見つめる。

七尾のキックの際、浜畑のパスが狙われ、タックルをされた時に怪我が悪化する。元チームメイトの里村がいち早く気づき倒れた浜畑を気に掛ける。点差は11点に広がったのを見ると、浜畑は立ち上がり、アストロズに「よし、行くぞ」と、その姿はまさに元日本代表キャプテンだった。その雄姿に涙を堪える君嶋。社長も、応援しているはずなのに、我々が応援されているように感じる。これは彼らの「ハカ」だ。「私は死ぬ。私は死ぬ。私は生きる。私は生きる。」と。ここで語られる社長の言葉が、作者のメッセージだろう。

「見よ、この勇気ある者を。ここにいる男たちが、再び太陽を輝かせる。一歩上へ。さらにもう一歩上へ。輝く太陽の中へ。きっと、会社も、この国も、この先も、たくさんの困難が待ち受けている。だけど決して諦めるな。仲間と共に乗り越えよ。そう、背中を押してくれているようだ。日本中に響け!世界中に響け!」

命を賭して戦う男たち。一体になって応援する観客。佐々のスーパープレーから、パスを回して抜け出したキャプテンのテツ。里村のタックルを受けながらトライを決める。これで、ワントライ差。時間稼ぎに入るサイクロンズを、七尾がスタンドオフとして指示を出し止め、マイボールにする。そして、ホーンが鳴り響き、ラストプレイ。ボールは左サイドにいた浜畑に渡る。ライン際を駆け上がる中で、タックルをくらい、更に足を痛めてしまう。しかし、ボールを持って立ち上がり、鬼気迫る表情で足を引きずりながらトライを目指す。里村がタックルに向かい、踏ん張った脚を犠牲にしながら、七尾が来ることを信じ、ボールを投げる。ギリギリ追いついた七尾は、そのままトライ。ついにアストロズはサイクロンズを破り、念願の優勝を果たし、

「ノーサイド」

試合を終え、ベンチに戻る両チームは、お互いの健闘を讃え合う。歩けない浜畑は肩を担がれ歩いてくると、敵味方関係なく、拍手で迎えた。憎き三田監督も、負けを認め、柴門を讃える。戦う前は憎っくき敵で、命をかけて戦い、全力を尽くし、乱闘になることもありながら、試合を終えれば皆ラグビーを愛する仲間。それがノーサイドの精神だ。

家族の元に向かった君嶋は、初めて来てくれた妻に「どうだった!?」と聞くと、「そうねぇ・・・、最高!!」と言う言葉に、思わず抱きしめる。ついに、大泉洋が松たか子を抱きしめた瞬間だった。

その後、君嶋は本社に戻り、経営戦略室の室長になり、ラグビー部の部長になった。新しくGMになったのは、怪我で引退した浜畑だった。早速柴門と予算についてやり合い、「お前、君嶋みたいに頑固だなぁ!」と言われると、嬉しそうに「はい。その人のこと、尊敬してますんで。」と答える。もう一度第一話の浜畑を見てみたいものだ。
そこに、部長の君嶋が現れる。間違いなく家族の一員としての姿がそこにあった。そして、練習を見に来ていた滝川の姿に気付く。

「ラグビー部はこの会社に必要なものだろうか?更に言えばラグビーは、この国に必要なものだろうか?」

以前滝川に言われたことに、君嶋は答える。

「今世の中は、どんどん理不尽なことがまかり通る時代になっています。でもだからこそ、ラグビーというスポーツが必要なのではなんじゃないでしょうか?ノーサイドという精神は、日本でしか通用しない、日本ラグビーのお伽噺かもしれない。でも、今この世界だからこそ、必要なんだと私は思うんです。」

「そうだなぁ。もし日本が世界と互角に戦える強豪国になったら、きっとその尊い精神を世界に伝えることができるだろう。君嶋、それこそが、君の使命なのかもしれない。」

アストロズジュニアチームが練習をしている。

「彼らがこの国の、そしてラグビーの未来を作っていくんだ。」

この物語の締めくくりは、子供達の姿だった。


最終回感想

ついに終わりましたね。このコラムを書く為に、2回目を見ていますが、一度しか観ていない方は、ぜひもう一度観てください。多分、その方が泣けます(笑)TVerなら、まだ無料で観られるので、まだ観られるうちにどうでしょうか?

『半沢直樹』や『下町ロケット』など、池井戸作品は大抵観ていますが、この作品は今までとは少し違う毛色がありました。一つは、大泉洋の存在です。彼のおかげで、コメディ部分はよりコメディになり、シリアスな部分もしっかり描かれました。そして、企業内のドロドロした話もありながら、ラグビーW杯を盛り上げる意味もあって、アストロズをメインにしたことが、より熱く、感情を揺さぶられるものがあったように思います。『下町ロケット』にも通じる部分としては、「未来に残す」というようなことがニュアンスとしてありますが、今までの作品にはない、強いメッセージ性があったのではないかと思います。どちらかというと、池井戸潤さんの思いを込めたんじゃないかなと感じました。

試合中の社長の言葉や、最後の君嶋と滝川の会話は、まさにそうだと思います。そして、最後に描かれたのは、会社でもアストロズでもなく、ジュニアチームの子供達というのが、現状のラグビーが抱える問題や、ラグビーに限らず、未来を担う子供達であるということを、描いたのではないでしょうか。

跡継ぎがいなければ、必ず道は絶たれます。それは何にでも言えることだと思いますが、スポーツの抱える多くの問題への改善策を、この作品は描いているとも感じました。

組織を変えるのは、外のから来た人間

ラグビー協会に関しては、序盤の頃から描かれており、新参者の君嶋は冷たくあしらわれていましたが、意外と組織の中で当たり前になっていることは、外から見たら異常だったりすることがあります。もちろん、良いものもありますが、外から見ないと、おかしいことに気付けなかったりするものです。君嶋のような、異常に気付き、変革をしようとするくらい情熱があればまだいいのですが、大抵の場合は、合わないから離れる、ということがほとんどです。

もし、組織を変えたいと思うなら、手っ取り早い方法は、外部の人間を入れるということです。自分では気付かない異常に気付くには、変化がなければ不可能です。組織で言えばわかりやすいですが、それは一個人でも同じです。自分を変えたいと思うなら、自分とは価値観が違う人の話を聞いたり、不得意なジャンルの本を読んでみたり、外からの刺激を受けることが早いでしょう。

ただ、それは手段であって、最初から外部に頼ろうとするのは大間違いなので、それありきで考えるのもまた違いますが、ある意味ラグビー協会にとっては、「神話の法則」が働き、君嶋という存在によって日常を破壊されたとも言えます。協会が主人公であれば、君嶋の姿はそう映るでしょう。

意固地に内輪だけで盛り上がるのではなく、外からの風を入れることで、新たな変化が起こるかもしれません。変化をするのが、生き延びる為の手段です。生き延びる為に変化していくか、意固地になって途絶えるか。それを考えるのも必要なのかもしれません。

ノーサイドの精神

最後に、君嶋と滝川が語り合いますが、「こんな時代だからこそ、ノーサイドの精神が必要」これが、池井戸さんが一番言いたかったことなんじゃないかなと思っています。いつの世も、犯罪はあるし、悪いことをする人はいます。今はネット時代で、誰もが撮影することができ、誰からも監視される世の中です。にも関わらず犯罪が減らないのは、それが抑圧になっているからかもしれません。明日は我が身ではないですが、あおり運転や虐待など、袋叩きにしていますが、いつ自分がそちら側に立つかはわかりません。そして、全てが「ノーサイド」になってちゃんちゃん♪になるかは難しいし、なってはいけないこともあるかもしれませんが、前提としてノーサイドの精神を持つことは、もしかしたら、人の憎しみを減らすことになるのではないでしょうか。

ラグビーとは言え、怪我をさせられたり、試合外でのトラブルがあったり、単純に試合をするだけではなかったりしますが、原点として「ノーサイドの精神」を持つということは、重要なことではないかと感じます。
ラグビーは「フェアの精神」に対し、君嶋は「私の戦いにルールはない」と対照的に言っていましたが、実際には、反則をしたり、卑怯なことは幾らでもあります。でも、だからと言って、こちらも反則をしていいとは限りません。アストロズの戦いは、そういう所を見せてくれたんじゃないかと思います。

ラグビーW杯

ラグビーの詳しいルールはわかりませんが、初めて日本で行われるラグビーW杯が始まります。命をかけて、世界の強豪に向かっていくことでしょう。どのような結果になるかはわかりませんが、日本代表の雄姿を目に焼き付けながら、応援していきましょうね!


コロナ禍の影響で、再放送も盛り上がりました。あの感動を何度でも味わえるように、ぜひ、Blu-ray、DVDをチェックしてみてくださいね!


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