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大地の果てを目指し鈍行列車で北へ向かった話【前編】

2021 年夏、相次ぐ緊急事態宣言によって外出の自粛が続きオリンピックも無観客での開催となっていた。そんな中、私は院試の勉強をもくもくと続けており旅行などとは無縁の生活を送っていた。

8月に院試は無事に終わり開放されることになるが、数ヶ月に及ぶ受験生活で体は限界を迎えており、今すぐ旅に出かけないと気が狂いそうな状態にあった。コロナ禍ではあるが試験直前の2ヶ月はほぼほぼ自室に引きこもっており、外部との接触はわずかだったため病原菌にはなり得ないだろう……という気持ちで家を飛び出した。

とはいえ人の多いところへ行くのは感染リスクがあるし、そもそも真夏なのでなるべく暑さをしのぎたい。で、「東北なら人も少ないし涼しいのではないか」という安直な考えにより、大地の果てを目指して北へ進むことにした。ちなみに「大地の果て」というのは CLANNAD という作品で使われていた表現で、青森県の竜飛岬を意味している。今回の旅の最終目的地も竜飛岬とした。

なお、感染対策には細心の注意を払いマスク着用・消毒を徹底するとともに、宿のチェックインなどでも言葉数を減らすよう心がけていた。

鈍行で GO

CLANNAD では当時開業していた八戸まで新幹線で行き、そこから特急白鳥に乗って青森へ向かうというルートだったが、せっかくなので鈍行を利用してのんびり行くことにした。というのも、東北というと太平洋フェリーで行った仙台チャリで輪行した郡山にしか訪れてないため、各県の都市に泊まってぶらぶら観光しながら向かいたいという思いがあった。

で、購入したのが「北海道&東日本パス」と呼ばれるフリーきっぷ。乗車できるのは普通列車のみという 18 きっぷと似たようなスペックで、発売時期もだいたい一緒。ただし 18 きっぷでは別途運賃がかかる青い森鉄道IGR 岩手銀河鉄道ほくほく線に乗車可能だ。JR 東海や JR 西などには乗れないのでご注意。

もう1つ 18 きっぷと異なる点として利用期間が挙げられる。18 きっぷはシーズン内に5回使えるが本きっぷは連続する7日間となる。1枚のきっぷを複数人で利用するといった使い方もできないためやや利便性が劣るが、値段は 18 きっぷよりも安いため連続して鈍行に乗りまくるならコチラのほうが有利だ。

18 きっぷと同じく課金すればグリーン車にも乗車可能なので、今回は JRE ポイントを活用して乗ってみた。私以外の乗客はおらずまさかの貸切状態。

コロナ禍では換気のために列車の窓を開けて走行していたため、一般車はガタンゴトンうるさかったがグリーン車は静かで大変快適な環境。まあ音鉄とかなら窓が開いている方が楽しめるのかもしれないけど。

ところで上の画像を見て「おや?」となった人がいるかもしれない。東京から北へ行くとなれば乗るのは東北本線となるが、この車両は常磐線である。というのも郡山までは鈍行で乗車済みであるため、今回は水戸まで常磐線で向かい、水戸から郡山を結ぶ水郡線を乗りつぶしてから東北本線を北上するというルートにしたのだ。

そんなわけで終点の水戸に到着。グリーン車はずっと貸し切り状態が続いていたが、1つ手前の赤塚から乗車してきてグリーン運賃を支払わずに1区間だけ乗っていた親子がいた。無賃乗車……。

水戸観光

水戸に到着したのがだいたい 11 時過ぎで、次に郡山まで行く列車は 13:15 発となる。地方都市同士を結ぶ路線ということもあり、全線走破する便は2時間の1本のペースである。そんなわけで、乗り換え待ちの2時間でお昼ご飯と観光を済ませることにした。

バックパックが重いので駅のロッカーに放り込もうとしたのだが、見つからずに外に出てしまったため背負いながら街歩き。水戸駅は The 地方のジャンクション駅といった感じ。

ところで水戸と言えば偕楽園が有名だろう。今回の旅程でもお昼を軽いものにして駅からバス移動すれば偕楽園を観光する時間も作れた……のだが、そもそも緊急事態宣言の影響で臨時休業中だった。残念無念。まあまた改めて観光に来ればよいだろう。

街を歩くとよく目立って見えるのが、地震の LIVE 中継でよく現れる例のタワー。幾何学的な外観をしているということもあって、数学の教科書に載っていた記憶がある。

近くにいってみるとこんな感じでけっこうでかい。塔の建っている水戸芸術館および塔の展望台はまたしても休業中だった。

ぶらぶらと歩いていると住宅街から急に自然豊かな谷が現れる。暑くて体が溶けそうだったため、自然の日陰がありがたい。

偕楽園の入口をスルーして千波湖のほとりに出たところで良い時間になってきたため、散策を切り上げて水戸駅へ戻る。

Google マップで調べると、湖に沿ってひたすら駅までまっすぐ進めば良いとのこと。所要時間は 28 分。

で、現在時刻は 12 時 51 分

。。。

……繰り返すが、所要時間は 28 分、次の郡山行きは 13 時 15 分発、現在時刻は 12 時 51 分。次の便を逃すとさらに2時間待ち……


。。

。。。


ε≡≡≡≡≡≡┏(:'o')┛うおおおおおおおおおおおお!!!!ダッシュダッシュダッシュ!!!!

という勢いで走り出したものの、実際にはバックパックの重さもあって速歩きに毛が生えた程度の速度しか出ていなかった。

呑気に写真撮っている場合か

想像よりもだいぶ距離があったが、発車5分前にようやく水戸駅の見える地点まで到着。ペデストリアンデッキを大爆走してラストスパートをかける。

改札を通り抜けたのは発車1分前。すでに発車メロディが鳴っている中、ホームへの階段を駆け下りる。

うおおおおお!!

┣¨┣¨┣¨≡≡≡ヘ(*`Д´)ノ┣¨┣¨┣¨ ♫~ まもなく発車します~>


≡┃ドア┃≡<プシュー  ヘ(: ^ω^)ノ <セーーーーーフ!!

というわけでギリギリのところで駆け込み乗車を成功させた。あと 10 秒くらい遅かったら置き去りにされていただろうし、公共の場でダッシュするという危険行為に及んでしまったのは反省している(というか実際に一部の床面が濡れてて滑りかけた)。無計画にぶらぶらするとしても、時間の管理には気を使おうと思い直す経験となった。

水郡線乗りつぶし

駆け込み乗車のせいで完全に写真を撮り忘れていたが、水郡線は非電化ということで気動車である E130系 が使用されている。この便は3両編成での運転だが、途中で切り離しを行うため郡山まで直通するのは先頭の1両のみとなる。

車内はそこそこの乗車率で、ほぼ全てのボックスシートに 1-2 人程度座っている状態だった。が、先頭車両の端まで行くと1つだけ丸々空いているボックス席があったため、なんとか快適な車窓を楽しむことができた。

水郡線の沿線は「まさに田舎!」といった感じののどかな風景が広がっている。流れる景色をのんびり眺めていると、こちらへ手を振ってくる沿線住民がちょくちょくいるのが印象に残った。観光列車ならまだしも、普通の列車に手を振るのは珍しい気がする。

山間部では久慈川に沿って進んでいく。

途中、大量のバス停が並べられている駅があった。一度にここまで多くのバス停を見ることは今後の人生であるのだろうか。

水郡線は全線を通じて単線となっているが、対向列車との行き違いのできる交換可能駅がやたら多い印象を受けた。体感 2-3 駅に1駅は交換可能駅だったが、もちろんその設備を利用して単線での高頻度運転……などといったことはやっていない。

茨城と福島の県境を超えると駅名も常陸〇〇から磐城〇〇へと変わる。山間部を抜けてからもしばらくうねうねした路線が続くが、各駅で少しずつ乗車があり1両編成の車内はしだいに混雑していった。で、終点1つ手前の安積永盛駅で東北本線と合流。ここでかなりの乗車があり、満員電車となる。

東北本線はさすが幹線ということで線路の状態は非常によく、地方鉄道らしい動きをしていた E130系 も最後の1区間はフルスロットル

そんなこんなで郡山駅に滑り込む。同一ホームでそのまま福島行きの列車に乗り継げるという親切設計だ。

東北本線を北上

ここからはようやく東北本線をまっすぐ北上する。車窓を眺めていると、上下線が大きく離れており高さも異なる区間がちょこちょこあるのが気になった。複線化の際により勾配が緩やかなルートで敷設したり、トンネルを用いてより短いルートにするなどといった工夫がされたのだろう。

で、日が傾き始めたあたりで福島駅に到着。暗くなってしまうと車窓が楽しめないので1日目は福島で宿泊だ。この時間だと東京に比べてだいぶ涼しくて驚いた。というか夜になっても蒸し暑い東京が異常である。

福島観光

で、さっそく観光をしよう……と思ったのだが、特にめぼしい観光スポットがなかったためテキトーにぶらぶら歩いて終了。コロナ禍の影響もあってか、繁華街はガラガラで寂しい感じ。

ちなみに先程の写真ではかなり地方臭のただよう福島駅を載せてしまったが、新幹線口の方はけっこう近代的な見た目になっている。まあこの外観も地方らしいと言えば地方らしいけど

翌日

で、翌日。福島駅から再び東北本線を北上する。

とここで、なんと大雨の影響により運転を見合わせているとのこと。これはいきなり旅程大崩壊の危機!!

……と思いきや福島以北に関しては見合わせの影響は一切なく、仙台行きの便は定刻に出発した。ちなみに水郡線も止まっていたらしいので、もし出発が1日遅れていたら完全アウトだったなあ。危なかった。

福島の南側では大雨とのことだが、北側では全く問題なく晴れ模様。宮城県との県境は峠となっており、かなりの勾配を駆け上がっていった。車窓からの景色もいい感じ。

ちなみに、東北本線の急勾配地帯を避けるためのバイパスとして建設されたのが現在の阿武隈急行線である。こちらは阿武隈川沿いを走っており、峠の白石を超えてしばらくした槻木駅で合流する。さらに次の岩沼駅では常磐線も合流して仙台へ向かう。

福島~仙台の移動は高速バスが強いのか乗車率はかなり低く、4両編成は輸送力過剰では……という感じ。ただ、水郡線の時と同じく県境を抜けてからはちょこちょこ乗車があり、仙台直前ではほぼ満員電車になった。

ところで改めて仙台周辺の地図を見てみると、南北に連なる東北本線が大きく西へ迂回した部分に駅があることがわかる。

「ああ~、街の中心に駅作ろうと思ったけど反対されてなくなく町外れに作ったパターンか」と思うかもしれないが、実は逆らしい。元々町外れに駅を設置するつもりだったのが、誘致されて繁華街に近い現在の位置になったとのことだ。実際、駅の西側は繁華街と旧市街、東側は新市街となっている。

ちょっと寄り道

で、仙台から引き続き東北本線を北上……するのは味気ないため、今回は仙石線に乗車することにした。仙台でも乗り換えできるが、せっかくなので1駅歩いて始発のあおば通駅へ。

下車したのは松島海岸駅。お昼ご飯と松島観光を済ませつつ、東北本線の松島駅まで向かう旅程だ。

松島観光

個人的にはあまり観光地は好きでないのだが、初日がローカルなエリアをひたすらぶらぶらする日だったため気分転換にはちょうど良かった。

道などはだいぶ新しい印象を受けた。おそらく震災の影響で整備し直したのではないだろうか。

で、脳死トラベル開始。まずは瑞巌寺の洞窟遺跡群

松島五大堂

福浦島

福浦島には入場料 200 円で橋をわたってアクセスする。ちなみにこの橋も震災の影響で損壊したが、台湾の義援金で修復したとのこと。ありがたい。

ちなみに私は全くリサーチを入れていなかったため、この福浦島のことを松島と言うのかと思っていた。さすがに不勉強すぎる。

松島っぽい写真。

朝の大雨による運転見合わせが信じられないほどの真夏日だったが、島の中は日陰だらけだったため休憩も入れつつわりと快適に回ることができた。

そんなこんなであっという間に良い時間となってしまったため、松島の観光は消化不良であるものの駅へ向かうことに。なお、観光の中心地と東北本線の松島駅は微妙に距離があるため注意が必要だ。直射日光をゴリゴリ浴びながら歩くのは辛かった。当時はまだ若く日傘を差すという概念が存在しなかったのである。

そんなわけで東北本線を再び北上……といきたいところだが、ここまででだいぶ分量が増えてしまったため一旦切り上げたい。次回は盛岡、青森を経由して大地の果てにたどり着くところまで執筆する予定だ。

……といったところで今回はここまで。

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