【短編小説】最高の出会い
十二月の後半、目に見える眩しさを放っている渋谷は街全体が幸せを噛み締めている。
年末に向けて残った仕事をせわしなく片付けて、「お先に失礼します」と何が失礼なのか入社時からよく分かっていない常套句を伝え、いつもより1時間ほど遅くオフィスを後にした。
ビルの自動ドアが開いた瞬間、冷たい風がほほに当たる。こんなことならマフラーを持ってくればよかった。
街の模様替えに反抗して、まだタンスから冬物を全部出し切っていないことに後悔した。
恋をしていない時の冬の街に、私はどうも馴染め